218.氣と気

 気配察知をすっ飛ばして空間把握を身につけた沙羅は、気配察知の訓練を取りやめ氣について深く学ぶことになった。


 俺は昨日と同じ兎追跡ゲームだ。使うなと言われたが氣を感知するよう意識を向けると、近くに月読様がいないことから周りの氣がわかる。


 氣と気は違うと教えられたけどその違いがよくわからない。気配を絶つことはできても、氣を断つことができる人はよほどの達人だと言っていた。なら、氣を感じればいいんじゃね?


「聖臣。今、気配察知は必要ないと思ったであろう?」


 どこからともなく現れた月読様に心の内を読まれる。妖怪さとりか!?


「氣とは生きとし生けるもの万物すべてが持つもの。近くの氣であればよいが、離れれば離れるほど惑わされやすいのよ」


 凄く抽象的なので説明ぷり~ず!


 月読様曰く。要は周りに氣が多ければ多いほど、重なって混じって感じるとのこと。十人が並んで立っているのを氣で感じようとすると、同じような氣を持つ者が重なって一つの氣としてしか感じ取れない場合があるみたい。


 森の中にいたらまず探せないそうだ。そりゃそうだ。森の中なんて木が生い茂り、虫や動物などがたくさんいる。そのすべての氣を感じてしまっては人一人の氣を探すなんて無理だよな。


 よほど特殊な氣じゃないと、ほかの氣と混ざって感じと取れなくなる。どんな多くの氣の中からでも一つの氣を探すことができる人なんて、それこそ達人、いや神くらいなものらしい。


 なので、個別の気配を感じ取れるようになることが必要。気配は氣と違って体のサイズに比例するし、基本知能を持つものが気配を持つので木に気配は無い。稀に木でも知能を持つものがいるみたいだけど。神木とか樹齢が長い木なんかがそうらしい。


 まあ、こちらも気配を絶てる人がいるから万能じゃないけどね。ちなみに俺、気配遮断スキル持ってますよ。


「わかったかえ。修練あるのみよ」


 兎追跡ゲームに戻ろう……。


 お昼は焼きそば、目玉焼きをトッピングしました。塩とソースの二種類。塩焼きそばは豪華海鮮風にしてみた。でも、普通に作ったソース焼きそばのほうが美味しく感じた。俺の舌は庶民規格なんだろうな。


 お昼寝の後、沙羅は午前中と同じでうさぎ師匠と氣の修行。俺はまた別メニュー。


「聖臣、そなたの眷属を呼ぶがよい」


 眷属ってはにわくんか? まあ、言われたとおり召喚。


「はにゃ~! はにゃ?」


 はにわくん、勢いよく登場したが自分のいる場所に戸惑いの表情?


「うむ。だいぶよい面構えになっておる」


「はにゃ~!」


 そうなのか? 俺にはいつものひょうきんな顔にしか見えないが。それで、はにわくんを呼んで何をするきかな?


「聖臣。全力でその眷属と戦うがよい」


「はぁ~?」


「はにゃ~?」


 変な声が出てしまった。はにわくんと戦えと? それも全力で?


「そなた、全力で戦ったことがないであろう。いつもどこか、一歩引いて戦っておる。全力を出すのが怖いかえ?」


 全力かぁ。たしかに自分にリミッターを掛けている。特にこの氣を風師匠から継承してからだな。全力で戦ったのって、沙羅を助けるために悪鬼と戦った時かな。


「そなたの持つ氣は人としては強大。それが己でわかるゆえ、力を抑える癖がついたのかもしれぬ。しかし、自分の本来の力を知らねば、それ以上は強くなれぬ」


 月読様の言うとおりで自分の限界を知らなければ、それ以上先に進めないんだろうな。それをはにわくんで試せということか。はにわくんなら壊れても召喚し直せば元どおりだしな。


 試してみたいな、俺の全力。


「やりましょう」


「はにゃ~」


「はにわも全力でやるがよい。この場での怪我ならどうとでもなるゆえ」


 というか、怪我で済むのか? はにわくんの攻撃を頭に受けた怪異モンスターは汚い花火を打ち上げているが……。


 はにわくんと対峙する。二メートルを超え、似合わない海賊船長の三角帽を被ったはにわくん、味方なら頼もしいの一言だが、こうしてあいまみえると威圧感が半端ないな。


 特に二メートルあるクロムモリブデン鋼の六角棒、これはヤバい。俺が持つカットラスがおもちゃのようだ。性能も雲泥の差があるし。


 さて、どうしようか。全力といってもただ猪突猛進に戦うのは馬鹿だ。せっかくなのでいろいろ試したい。


 じゃあ、やるとしますか。


 なめプはなしだ。最初から全力で行く。体の奥の紫色の球体から氣が溢れ出してくる。


 両手に壊れてもいいカットラスを持つ。二刀流だ。まずは全力の氣と、少し成長して四分使えるようになった宵月で攻撃力、月城で防御力を上げる。


 これが今の俺の全力。


 いざ、尋常に勝負!








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