216.氣の調整
沙羅が疲れているのでサッパリしたものがいいな。それでいて、月読様を満足させられるもの。
君に決めた! 冷やし中華~!
冷やし中華はばあちゃんちの仙台が発祥の地と言われている。実際にその発祥のお店で冷やし中華を食べたことがある。懐かしい思い出だ。
その冷やし中華はさっぱりな基本の醤油ベースのたれと、濃いめのごまだれの二種類を作ろう。
きゅうりと錦糸卵はうさぎ師匠にお任せ。焼豚も作っていないのでハムでいいや。うさぎ師匠が材料を切っている横で俺はすりこぎでゴマをゴリゴリ。みりんを少量加えながらペースト状にしていく。
基本の冷やし中華のたれは醤油、酢、みりん、水、ごま油、しょうが汁、レモン汁を混ぜて出来上がり。それにさっきのごまペーストを混ぜたのがごまだれだ。
きゅうり、錦糸卵、ハム、茹でたむき海老、紅ショウガといった具合で色鮮やか。食欲もそそる。
「冷やし中華。始~めましたぁぁぁ~!」
「な、なにっ!?」
「何を言っておる? 聖臣。 気でも触れたかえ?」
このネタ知らない沙羅と月読様……悲しいなぁ。
「美味い!」
具と麺をぐちゃぐちゃに混ぜて食べる月読様と対照的に、具を混ぜないで上品に食べる沙羅。ちなみに、俺は混ぜて食べる派。
「温かいら~めんも美味なれど、この冷たい麺も美味だけでなく風流よのう~」
ぐちゃぐちゃに混ぜて食べている月読様がそれを言う?
「なにか文句でもあるのかえ? 聖臣」
「いえ、まったく。お気に召していただき、恐悦至極」
「うむ。して、この冷やし中華なるもののかっぷら~めんはあるのかえ?」
冷やし中華のカップラーメン? 乾燥袋麺っで麺とたれっていうのは見たことがあるけど、カップラーメンはどうなんだろう? それらしいカップラーメンは見たことがあるけど、こういう冷やし中華とは全然違うものだったような?。
「メーカーに要望してみたらいいのでは?」
「うむ~。めーるでもよいかえ?」
メールできるんかい!?
「お客様窓口にでも送ってください……」
「冷やし中華のかっぷら~めん、楽しみよのう~」
技術的には無理じゃないだろうから、あとはどれだけの需要があるかだな。
お昼寝の後の修行はまた沙羅とは別メニューとなった。
「聖臣の持つ氣は特殊ゆえ、少しばかり調整しようと思うてのう」
月読様が言うには俺の持つ氣は大きいが、多くの氣を無理やり一つにしているせいで、体に無理がかかっているそうだ。
「人の技とはいえ、ここまでやるとは人も侮れぬ」
俺の持つ氣は逍遥派の先人の努力の結晶。しかし、ジミーの祖父に聞いたが、本来は体の中に二つ以上の異なる氣お入れると体を壊すらしい。
今の俺の持つ氣はその異なる氣を逍遥派の技で無理やり一つにしているので、月読様の力で完全に一つになじませるそうだ。
座った俺の後ろに月読様が座り、俺の背中に両手を添える。
「体に痛みがあるが我慢するがよい」
えっ、まじ!? そういうのは事前に言ったほしかった……。
体の奥が熱くなる。焼けるようなというか溶けるような熱さだ。とても苦しい。苦しいがまだ我慢できる苦しさだ。
「うむ。こんなものであろう。聖臣、自分の氣を感じてみよ」
自分の中の氣を探し感じると、今までとはまったく違うことに気づく
今までは大きな濁った湖だったものが、澄んだ紫色の小さい球体になっている。湖から小さい球体になったけど、力の奔流が凝縮された感じだ。湧き出そうとしている力を押さえ込んでいるって感じかな。
「反発し無駄に流れていた氣を一つにし、扱い易く更に成長し易くしたゆえ感謝するがよい」
以前のままだと先人のたちの氣が反発し合っていたせいで、今後俺が鍛えた分の氣が反映され難かったらしい。今回それを完全に俺の氣として一つにしたので、俺の鍛えた分も増加していく。更に氣が充実することになる。
「では、次の施術に移る。メス!」
えっ、次の施術ってなに!? それに、まだ、それ続いているんですか!
「ぐっ!?」
急に体の中に何かが入り込み、押し拡げようとする力が加わる。体が引き裂かれるような感覚、どこかで同じ痛みを味わった記憶がぁ……。
……知ってる天井だ。沙羅の心配そうな顔も見える。
そして思い出した、あの痛み。幽斎師匠に氣を覚えるために、体の氣道を拡げられた時の痛みだ。
「大丈夫? ご飯食べれる?」
「食べる」
体が痛い。そして重い……。それでも、腹は減る。
夕飯は天丼でした。野菜天に魚介天、ついでに山菜天まで付いた。月読様はハンバーグを食べている。それもチーズインエッグバーグにポテサラ載せの豪華バージョン。
沙羅もなかなかやる。
「聖臣、体の調子はどうかえ?」
「自分の体じゃないみたいです」
「聖臣の体を最適化したゆえ、仕方あるまい。うさぎ、今日は徹底的に聖臣の体を整えよ」
うさぎ師匠がサムズアップ。
「げぇ……」
「ご愁傷様。アキくん」
「沙羅よ。そなたは明日ゆえ覚悟しておくがよい」
「ふぁっ!?」
ご愁傷様です。沙羅さん。
そしてその夜、俺は余りの痛みに体から魂が抜け、幽体離脱を経験した……。
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