215.印瞳術効果

「聖臣、わらわはそなたが憐れで、涙がちょちょ切れそうよ。この月読の子孫がこのような貧相なものしか持っておらぬとは」


「ムーンスラッシュ良い物ですよね? カットラスと興亜一心刀は怪異モンスターから奪ったものなので、拾い物と同じですね」


怪異モンスター如きから物を奪うとは賊に成り下がったか、聖臣よ!」


 賊って……違うから。ん? いや、違わないのか?


 違う違う、これは戦利品なのだ。ドロップアイテムなのだ。間違っても俺は賊じゃないぞ!


 そこのところを月読様にちゃんと説明。


怪異モンスターが稀にものを落とすことは知っておったが、確実に落とす方法があったとは初めて聞くことよ。聖臣、おぬしなかなかに悪よのう」


 いえいえ、お代官様には敵いませんって違うから!


 それはさておき、天目一箇神あめのまひとつのかみの力を使ってみたい。


「どうすれば使えますか?」


天目一箇神あめのまひとつのかみの力を意識し、力を宿した目に理力を流せば自ずとわかるであろう」


 駄目になっても惜しくない興亜一心刀を持って、耐久値の回復を思い描き左目に理力を流す。そうすると、興亜一心刀に最大耐久値と現状の耐久値の数値が見え、現状の耐久値が回復していく。一分もかからず回復したので、目に流す理力を切る。


 耐久値の回復した興亜一心刀を残月で見ると、


 興亜一心刀 品質 良 斬撃特性+40 刺突特性+35 耐久250/250


 耐久値が完全回復している。素晴らしい。見た目もどこにも異常がない。


 ほかの武器も回復してみてわかったことがある。品質の良い物は耐久値を回復するのにより多くの理力が必要ということだ。まあ、仕方がないな。リスクなしで回復できるのだから、このくらいは些細なことだ。


 それでも使った理力は全体の三分の一くらい、コスパもいい。


「凄い力ですね」


「神の力ゆえ当然よ」


 次は天之尾羽張神あめのおはばりのかみの力を使ってみる。といっても、対象がいないので使うとどうなるかだけ見てみる。


 興亜一心刀に天之尾羽張神あめのおはばりのかみの力を使ってみる。先ほどとは反対の右目に理力を流し興亜一心刀を見ると、どの特攻属性か付けるか選ぶようだ。


 選べる特攻属性は二つまで。天十握剣あめのとつかのつるぎというだけあって、火、水、風、土、光、闇、龍、人、獣、物質の十種類から選べるようだ。


 とりあえず、火を興亜一心刀に付けてみる。興亜一心刀が赤く光りだす。


「その光は神力の光ゆえ、神の力を持つ者以外には見えぬ」


 特攻属性を付けるとそれに対応した光を発するらしい。後日、確かめたところ、火(赤)、水(青)、風(緑)、土(黄)、光(白)、闇(黒)、龍(銀)、人(紫)、獣(橙)、物質(金)だった。


 俺と同じように印瞳術で目に神の力を宿す者にはこの光が見るそうだ。ほかにも神の加護を受けた者にも見えるらしい。神といっても未熟な亜神、魔神、異神、破壊神、悪神、邪神など必ずしも人に恩恵を与える神ばかりではないので注意が必要なのだそうだ。


 光の色を見れば特攻属性がバレバレだからな。


 効果時間は十五分でクールタイムはなし。理力がある分何度でも使用可能なのだが、この力武器に神力を付ける力なので多少目に負荷がかかる。


 力を使うとチクリと目の奥に痛みがはしる。連続で使い続けると一時的に視力が下がるそうだ。後遺症はないそうだが使いすぎには注意が必要になる。


 特攻属性について月読様が説明してくれる。たとえば、火の特攻属性とは火に対しての特攻であるので、付いている力は対極の水や氷属性のことではないということ。


 効果を発揮しないということを忘れてはいけないらしい。


 火の特攻属性を使えば火を消す力が強まるが、それ以外にはダメージ与える量が減る。


 ここに火を纏った狼がいたとする。その火を纏った狼に火の特攻属性で攻撃すると、火を消すことはできても狼本体には本来の武器での攻撃よりダメージ量が減る。


 なので、そういう時はの特攻属性を付ける必要があるわけだ。


 戦況に応じて冷静な判断が必要になってくる。


 ちなみにどのくらのダメージ差が出るか聞くと、特攻属性で通常の三倍、非特攻属性で通常の三分の一になるそうだ。二つの特攻属性が上手く重なれば更に倍になる。まさしく、一撃必殺になるな。


 そうこうしていると、もうお昼の時間。沙羅とうさぎ師匠が戻って来たが、沙羅がだいぶお疲れモード。


「うさちゃんは鬼だよぉ……」


 ずっと世話になってたし、沙羅には休んでいてもらって俺が昼食を作ろう。


 じゃあ、体を清めてきますか。





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