211.印瞳術とは
沙羅が野菜を切っている間に、うさぎ師匠には平麺のパスタを作ってもらう。
ナポリタンはいいとして、カルボナーラは日本風と本場風の二つを作る。
うさぎ師匠がパスタを作っている間に材料を用意。本場のカルボナーラって生クリームを使わないんだよね。パスタも平麺じゃなくてマカロニのでかいやつでリガトーニってのを使う。
チーズもパルメザンチーズじゃなくて、羊の乳のペコリーノ・ロマーノを使うけど、さすがに大漁にあるチーズの中からペコリーノ・ロマーノを探すのは至難の業。それらしきものをチョイスした。
問題はパンチェッタ。生ベーコンといわれる物だけど、さすがに無かったので普通のベーコンで代用。
胡椒は黒胡椒の粒タイプが必要なので前回買ってきた物を使用。
最後に超目玉、白トリフ。日本にもあるとは聞いていたけど奉納されていたとは……。日本でも栽培されているのか?
カルボナーラは出来立てじゃないと美味しくないので、最初にナポリタンを作る、沙羅が切ったピーマン、タマネギ、ベーコンを炒め、ニンニク少々を入れパスタを投入しケチャップをドバドバと入れ塩胡椒で味を調えれば出来上がり。
平麺を作り終ったうさぎ師匠に海鮮丼をリクエストしておく。沙羅は月読様と同じメニューでいいらしい。なので、俺がカルボナーラを作っている間にコンソメスープを作ってくれるようお願いした。
ここからは時間との勝負。チーズを細かく刻みボールに入れて卵黄と混ぜておく。ベーコン、ニンニクをオリーブオイルで炒め、茹でたリガトーニと一緒にさっきのボールに入れかき混ぜる。ここで、少しだけゆで汁をいれるのがコツ。ゆで汁を入れることでチーズが溶け絡みやすくなる。
あとは盛り付けて粉チーズ、黒胡椒、白トリフをたっぷりとかけ出来上がり。
日本風カルボナーラも同時進行。ベーコン、ニンニクをオリーブオイルで炒め物に、平麺パスタ、生クリーム、牛乳、黒胡椒、塩を加えて混ぜる。はい、出来上がり。
冷めないうちに持っていって食べてもらう。俺の海鮮丼も準備OKだ。
「うむ。美味よのう」
ご満足、いただけて恐悦至極。
「凄い。本物のカルボナーラだ。白トリフいい香りだね」
「わらわはこちらのほうが好みよ」
沙羅は本場風のカルボナーラが好みで、月読様は日本風カルボナーラが好みのようだ。
ちなみに俺は日本風カルボナーラのほうが好き。それと、白トリフを食べてみたけど味がよくわからん。沙羅がいい香りと言っているがそれもよくわからん。敢えて例えていうなら、生のアーモンドって感じ? まあ、生のアーモンドの香りなんてものも嗅いだことはないけどね。
沙羅も月読様も白トリフをご堪能。その白トリフの良さがわからない俺。ついでに、松茸も同じで何が美味いのかわからない俺。
これもリッチプアーギャップなのだろうか?
うさぎ師匠が気にするなとばかりに肩を叩き、海鮮丼を渡してくる。毎度、色鮮やかな豪華海鮮丼。白トリフや松茸の味がわからなくったて、俺はこれで満足だよ。
「アキくんの海鮮丼、凄く豪華だね」
「夕ご飯でうさぎ師匠にリクエストすればいいよ。和食ならなんでもござれだから」
「うさちゃん、よろしくね!」
うさぎ師匠がこちらに力こぶを作ってみせる。任せろって感じ?
一服の後、話をしようかと思えば月読様もうさぎ師匠もだら~んと寝そべる。お昼寝タイムだね。
「お、昼寝なの!?」
お昼寝です。お休み~。
お腹をつんつんされ起こされる。お昼寝タイム終了だ。沙羅もうさぎ師匠につんつんされ起こされ、寝惚けまなこのままどこかへ連れて行かれる。
「沙羅はうさぎと修行よ」
ということで、俺はさっきの続きと思ったら、先に月読様から印瞳術について説明がなされる。
やはり、印瞳術は修験道から忍びに伝わっていったものなのだそうだ。だが、修験道では鎌倉時代初期頃に廃れ、忍びのほうは江戸初期に廃れたそうだ。
廃れた理由は修験道のほうは当時武士が台頭し、多くの
逆に修験道から枝分かれしていき、独自の集団を作っていった忍びに印瞳術が残り伝承されていく。それが、江戸時代に入り、戦がなくなっていくと、忍びも衰退していき印瞳術も廃れていく。
それに拍車をかけたのが、印瞳術を覚える時に目に苦痛を伴うことから、使うと失明するというデマが流れ更に衰退していく。今では目に印瞳術を刻む術が失伝しているという。
そして、印瞳術を目に刻むということの説明、実際に目に刻むのではなく、神の力の一部を目に宿すことらしい。
本来であれば、その神の神社や神の御座所またはご神体のある場所に赴き、その神から力を分けてもらうものだが、そこは月読様ネームバリューは伊達ではない。この場で俺の目に神の力を宿してくれるという。
さすが、三貴神と呼ばれる月読様。
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