206.青田買い
向こうの世界の人はマギを持てない欠点があるけど、こちらの世界の人より地力は上。そのうえ、町や村の外が危険でもあり、レイダーギルドという組織が一般的なこともあり、こちらの世界より戦える人が多くいる。
そんな人たちなら、ゲート近くの間引きなんてお茶の子さいさいだろう。なんなら、奥のほうまで探索してもらっても構わない。マップもできるし、新しい資源も見つかるかもしれない。
ついでに新人も鍛えてもらえれば、二度美味しい!
それに、過疎地なら騒音を気にしなくていいので、宿舎と鍛冶場を造ってドワーフ族の職人を呼んで、オーダーメイドの武器防具工房を作ってもいいな。
向こうで買い付けるのではなく、こちらで作るのだから規制は掛からないかも? 抜け道になりそうだ。
おぉー、なんか夢が広がる! 限界集落の更に外だから、多少の無理は問題ないだろう。
ねっ、貴子様?
「な、何かしら、十六夜くんから邪悪なオーラを感じるわ……」
「
まだ、始まってもいないし、卒業まで一年以上あるが聞いておくに越したことはない。できるなら青田買いをしたいところだ。
「卒業間近に普通に就職説明会みたいなものを開く予定でいるわ」
「事前勧誘は可能でしょうか?」
俺には残月がある。優秀な人材を見分けることができる。これを利用しない手はない。
「青田買いするつもり? 駄目ね。ほかのギルドが許さないわ」
だよなぁ。残月だとその人の能力は見れても、能力者かどうかまではわからない。能力者しか見えない文字ってどうやっているんだろう? 青田買いが駄目なら、在野の能力者向けに、会社のビルに看板を掲げたいな。
「つぶれそうなギルドを買い取れ。それが手っ取り早いぞ。十六夜」
「人材ごと手に入っていいかもしれないわね。そんなギルドがあればだけど」
幽斎師匠も霧島さんの意見もごもっとも。
だそうです。貴子様。
「はぁ……。十六夜くんには借りがあるから探しておくわ」
貸しは作っておくものだな。
あとは天水祖父たちに相談だな。元自衛隊の
では、実験の再開だ。
アディールさんの魔術がこちらで使えるかの実験になる。アディールさんさんが持ってきた道具を用意されたテーブルに並べ説明を始める。
「魔術とは儀式的、抽象的な行為または言霊の力を用いて事象の変化をさせる技です。基本的に誰でも使えるようになるのもですね」
「それはスキルが必要ないということかしら?」
霧島さんがもっともな質問をしたが、マーブルからは魔術スキルが必要と聞いているんだよね。
「魔術スキルが必要になりますが、このスキルの習得方法が確立されていますので、魔術ギルドなどで学べば誰でも習得できるスキルです」
「才能に左右されないと?」
「されません。決まった工程を間違いなく行えば、百人が百人同じ事象の変化を行なえます」
よくラノベとかで無詠唱とかイメージで威力が変わるとかあるけど、それが一切ないという。科学の実験と同じってことだ。
アディールさんが準備を始める。地面に魔法陣の描かれた布を敷き、その上に瓶から出した粉や赤い石などを置く。魔法使いのおじいさんが持つようなごっつい杖を持って詠唱を始める。
「始原の炎の魔人、竜の炎の息吹、顕現せよ。炎弾」
そう唱えるとアディールさんの持つ杖から拳大の炎が現れ、的に飛んで行き爆発。
「今のは沙羅さんが先ほど魔導書で行った炎弾を魔術で再現したものです」
と言った後、アディールさんから更なる説明が入る。厳密にいうと火属性の魔法スキルの炎弾が大元で、それを魔術として再現したのがアディールさんが行ったもの。更にそれを魔導書が代わりに行ったのが沙羅の炎弾になる。
「今の一連の行程を見る限り、戦闘中には使えそうにないが?」
直人さんの意見にみなさん頷く。
「今のは見習いにわかりやすく工程を見せるためのものです。私は本職ではありませんので出来ませんが、魔術士と呼ばれる方々は独自のやり方があり、発動ももっと早いです」
それは流派などで違い秘匿される技術で、さすがに魔術ギルドでも教えてくれない。なので、基本とスキルの習得後は自分で研鑽を積むか、どこかの流派の師について学ぶらしい。
本職になると今の行程を十五秒程度で行える魔術士もいるそうだ。そのくらいの時間ならソロは無理でも、パーティーでなら十分に戦力になりそうだな。
でもアディールさん曰く、魔術はいろいろな道具が必要になり、お金が掛かるそうだ。プラス、収納スキルが必須。魔術を使う道具を持ち歩かなければならないからしょうがない。
前に魔術士でもがたいのいい人や体力のある人がいると、マーブルが言っていたのは収納スキルを持たない魔術士だからなのかな?
あの苦行に耐えきれなかったのだろう……。
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