199.東富士演習
東富士演習場に入り、自衛隊の車に乗り換え移動。移動した場所は演習場の外からはまったく見えない場所。そこにテントが設営されている。
だいぶ早く着いた俺たちだが、既に何人か集まっている。その集まりに近寄ると沙羅は貴子様を見つけアディールさんと一緒に挨拶しに行き、小太郎とマーブルを貢に行った。俺も挨拶に行こうかと思っていると、大村統合幕僚長が声をかけてくれた。
「会社のほうは順調のようだね。十六夜君」
「はい。欲しいものがあればいつでもご注文ください」
「ははは。その時は頼むよ」
大村統合幕僚長はちょっと苦笑い。
「十六夜、俺の鎧はどうなってんだ?」
「まだ出来てません。職人さんも作るのに苦労しているそうですよ。幽斎師匠」
「ちっ、早く暴れてぇ気分なのによ!」
老いてますます盛ん……黄忠か!?
幽斎師匠、あのゴリラ怪獣と戦って以来、
あの戦いが相当に悔しかったらしく、鍛え直しているそうだ。
「幽斎さん。もしかして、お弟子さんですか?」
「弟子は取らねぇって言ってんだろう! こいつはなぁ、言わば死の商人だ」
なんて人聞きの悪い言い方。僕は悪い商人じゃないよ?
「死の商人ですか。穏やかな話じゃないですね」
本当だ。なに言っちゃてるの幽斎師匠は。
「穏やかだぁ? 今日、これから見るものは、すべて
「そ、そこまでなんですか?」
「おめぇらが呼ばれてる意味を考えやがれ!」
そういえば、この人、誰?
「
「飯島直人だ。チーム
三十代くらいのイケメンプロレスラーって感じだ。人懐っこい笑顔でニカッと白い歯を見せている。
で、誰よ? チーム明星ってなに?
「も、もしかして、俺のこと知らない!?」
「こいつは
もしかして有名人か?
「彼は
大村統合幕僚長、ご説明ありがとうございます。
そうこうしていると。貢物が終わった沙羅が近くに来た。
「は、はじめまして、
沙羅さん……ミーハーか!?
というか、沙羅は飯島さんのことを知っていたのか。それに、幽斎師匠とは実は初めて会うのか? 逆に大村統合幕僚長には頭を下げただけだから面識はあるのだろう。
「おう。十六夜の知り合いなら今度うちに遊びにこい」
「是非!」
「へぇ、幽斎さんがそう言うなんて美人は得だねぇ。まあ、俺も美人さんのお願いは断れないけどね」
沙羅は顔を赤くしながらもなぜに持っているのか知らないがサイン色紙を出して渡すと、これまたなぜに持っているのか知らないがサインペンを出して飯島さんがサインを書く。
サインペン持ち歩いているんかい!?
「あらこんな所に綺麗なお嬢さんがいるなんて、関係者なのかしら?」
「げっ!? 氷結の魔女」
声をかけてきた眼鏡クール系美女を見てイケメンプロレスラー……もとい、直人さんが嫌な顔になっている。
にしても氷結の魔女ねぇ。氷系のアビリティーかスキルを持っているのだろうか?
「お久しぶりです。河上先生。現役復帰なさったとお聞きしましたが、どんな心境の変化ですか?」
「現役復帰なんてしねぇよ。ちょっとばっかし、差しで倒さなきゃならねぇ相手ができただけだ。霧島」
「氷結の魔女。霧島優奈さん!
二度目……ミーハーか!?
サイン色紙を差し出して頭を下げる沙羅。色紙、何枚持ってきているんだ?
「彼女はチームオブシディアンのサブリーダーでね。これも残念ながら自衛隊でなく民間ギルドなんだ。個人でも優秀でね、トップランカーに入る優秀な
大村統合幕僚長、度々のご説明ありがとうございます。
「大村さんにそう言ってもらえるなんて光栄です。ちょっと貸して」
そう言いながら、直人さんの持つサインペンを奪ってサインを書く霧島さん。現役
「はいどうぞ。私を知っているってことは貴方も
「はい! ありがとうございます」
「私の妹よ」
「そう……どこかで見た顔だと思ったわ」
こちらに移動して来た紗耶香さんと霧島さんはお知り合いみたいだな。
「それにしても、河上先生がタイマン勝負したいという相手が気になるわ」
「けっ。本気出した俺でも勝てねぇ相手だ。お前らのPTでなんとか一体相手にできるかって奴だ。勝てるかは別としてな。単独で挑んだら間違いなく押死ぬぜ」
「「そ、そこまでですか?」」
そこまでです。
間違いない。
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