194.顔合わせ
「
と貴子様は言っているが、その専門校の上層部は異世界のことを知っているのだろうか?
「異世界のことを言っていいんですか?」
「アキくん、今更ね。専門校は国が管理しているのよ。すべてではないけど上層部は異世界のことを共有しているわ。来週の実験にも多くの関係者が来るから問題ないわよ」
理力の実験のことだな。
来週の日曜開催で場所は静岡県の東富士演習場。本州最大の演習場らしい。さすがに一般の人の目が届かない場所で行われる。土曜日の午後に前乗りしての御殿場市で一泊だ。
当日はアディールさんの精霊魔法、沙羅の魔導、俺の印瞳術、自衛隊の持つ炎の魔剣の検証実験予定だ。たしかに人を呼ぶって言っていたな。
ついでに魔術のデモンストレーションもしたいが、たしかマーブルが魔術を使えたはず。いや駄目だな。ケット・シー公開はまだ時期早々だ。マーブルがケット・シーのデフォルトと思われるのはケット・シー族にとって痛手になりかねない。
「アディールさんは魔術は使えないのですか?」
「初歩までは習いましたが、精霊魔法のほうが使い勝手が良かったのでそれ以上は習っていません」
「初歩でいいので来週実演してくれませんか?」
「構いませんが道具を向こうに取りに行かなければなりませんが?」
「じゃあ、来週までに取りに行きましょう」
土曜日に取りに行けばいい。ついでにポーション類を買ってきて、こちらで効果がどうなるかの実験もしたい。
「貴子様。実験動物を用意してくれませんか?」
「実験動物なんて何をする気? 変なことをすれば動物愛護団体から抗議が来るわよ」
「ネズミやカエルで構いません。ポーション実験もしてみたいので」
「ポーションは研究室に送っているのだけど……。まあいいわ。私も実際に見てみたいから準備させるわ」
その後も細々としたことを話し合い八時に解散となった。
時間も時間なので食事に誘われたけど、月読様への奉納が今日はまだだ、あまり遅れると苦情の紙が送られてくるので泣く泣く断った。途中のコンビニで降ろしてもらい、お弁当と奉納用のお菓子を買い下宿先に戻った。
自社ビルのリフォームが終わればこの下宿ともお別れになるだろう。亡くなった祖母の友人ということもあり、大変良くしてもらい、居心地の良い下宿だった。
小太郎がいなくなると加奈ちゃんが寂しがるだろうな。
「にゃ~」
今日は月彩 Tr.Coの社員さんたちと顔合わせの日。午前中に月読様の奉納を済ませておく。
顔合わせは月彩 Tr.Coのビルで立食形式の昼食会になる。
場所は
それ以外のフロアーは完成してる。一階部分は搬入口と駐車場
二階が倉庫。三階と四階が事務室。五階が役員室と会議室になる。
月彩 Tr.Coのビルに着いてカードと静脈認証で中に入りエレベーターで五階の会議室に向かう。
もうみんな集まっているようだ。
専務取締役の天水叔父、弁護士さん、税理士さん、会計士さん。月彩 Tr.Coの社員十二名。天水祖父に天水父、アディールさん、紗耶香さんとショウさん、もちろん、沙羅。ついでに猫姿のマーブル。
そして、サプライズゲストにジンが来ている。実際はこのために呼んだわけではない。昨年末に撮影したMVが出来たので持っていくと連絡がきたので、せっかくなので今日この場に呼んでいた。
ジンは日本でも明城武の名で俳優をしている有名人。花を添えるにはもってこいの人物だ。天水家やショウさんとは既知の仲。和んだ雰囲気で話しているのに対して、うちの女性社員さんは黄色い声を上げている。ミーハーか!?
全員がそろったところで天水叔父……もとい、専務取締役から最初の挨拶から始まった。
「今日ここに、月彩 Tr.Coの門出を祝う最初の挨拶を承った専務取締役天水です。みなさんもご承知のとおり、わが社は異世界と貿易を行なう前人未踏の領域を開拓するという崇高な業務になり……」
二十分経過……。
「……というわけで、若き社長を皆で支え鋭意邁進していこうではありませんか! お話ししたいことは尽きませんが、社長の挨拶もありますので短いスピーチではありましたが挨拶とさせていただきます」
なげぇーよ!
みんな何もしてないのにお疲れモードだよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます