189.第二回会合
国というより外務省財務省分室チームとの話し合いを土曜日に控え、アディールさんと天水祖父、天水父、天水大叔父そして弁護士さんを交えて話の詰を行なっていた。
月彩 Tr.Coのビルも決まり、今急ピッチで改装が行われている。
ビルの場所は
会社自体は会社の申請やいろいろな許可書取得も終わっている状態。国との話し合いを待つだけだ。
人材もほぼそろっていて今はレンタルオフィスで会社立ち上げの準備や、今までの取り引き状況をデータ化してもらっている。
次回からは税金など諸経費も計算しないといけなくなるので、マーブル商会の経理を担うアディールさんとの打ち合わせも兼ねている。
実際には国との話し合いの後の日曜日に、顔合わせと打ち合わせを行う予定になっている。
そして、国との話し合いの第二回当日。場所はもちろん宮内庁特別異威対策室の会議室。今回は朝から話し合いが持たれる。前回、夜中まで時間がかかったからだ。
会議室には外務省財務省分室のメンバーすべてがそろっている。大きなモニターもいくつも用意され、机にはPCが並んでいる。
俺たちは沙羅と弁護士さんがPCを用意している。仕事用のPCを買わないと駄目だな。
時間になり全員が揃い話し合いが始まる。貴子様は後ろの席で秘書さんとマーブルと小太郎を愛でることに忙しそう。
まずは分室のTLの二人がアディールさんと挨拶。名刺交換までしている。ちなみにアディールさんと俺の名刺も作っている。今回は俺の名刺は出番なしのようだ。
最初は簡単にこの世界の
もちろん、アディールさんには事前に説明はしている。まあ、形式美なんだろう。
そこから、前回のレジメとアジェンダの説明があり、やっと本題に入る。
前回、俺が答えられなかった部分などだ。
アディールさんからこの世界との物価の差や商業ギルドなどのギルド関係の話がされる。
例えば、各ギルドは国から干渉されない独立した組織だとかだ。これには官僚である分室チームの全員が驚いている。ちなみに俺もだ。
「ではその物価の差の根拠をお聞かせ願いたい」
「私はこちらの世界に来て、こちらの言葉で言えば二週間ほど滞在しています。実際に街に出て市場調査もしています。PCも少しですが使えるようになりましたので、それも活用しています」
「日本語がご理解できるのですか?」
「平仮名程度であれば問題ありません」
会場にどよめきがはしる。そうなのだ、アディールさんこの二週間で平仮名をマスターしているのだ。沙羅の作っている辞書の力も大きい。マーブルはまだ全然なのにな。
なぜ今物価について聞いてくるのか? それは、為替レートのためだろう。
物価は断然向こうの世界のほうが安い。だが安いからといって、それが交易のレートに直結するかといえばそうはならない。というより、物価がわかりやすい目安になるからといって、そうはさせるつもりはない。
まあ、需要と供給だね。日本の製品を向こうに持って行って売るとする。物価の割合で原価を決めると、どんな大量生産されている品でも原価割れしてしまう。そこに製品の質がいいなどの付加価値が付き、それを欲しがる人がどれほどいるかで値段が変わる。
どんないいものでも、買う人がいなければ売れないのだ。
向こうの世界の普通の武器防具をこちらの世界に持って来て売ると需要が多すぎて供給が間に合わなくなる。したがって、値段は高止まりとなり物も手に入らない状況になる。喉から手が出るほど欲しがるに違いない。
政府側としてはそうなることがわかっているので、物価によって交易のレートというか為替レートを決めたいのだ。マウントを取って安く買い叩きたいというのが見え見えだ。
今のところ政府側には魂石の売却する外貨しかない。魂石が買い叩かれている以上、使える外貨は少ないと見える。欲しくてもお金が無ければ買うことができない。
だから、俺たちに任せればいいのに、どうしても主導権を握りたいらしい。
「失礼だが、国交も何もない状況で為替レートの話を進めようとするのは先走りではないかな」
天水大叔父の突っ込みが入る。
「そのようなつもりはありませんが、ある程度の指標となるレートを決めませんと取引に支障がでます」
「ならば、アディール殿の通貨に金貨があるのだ、金レートを使えば双方に不公平はでまい。今後、各国とも足並みをそろえる時も不満が出難いのではないか」
たしかに金はどちらの世界でも価値あるものとなっている。それでいいんじゃないの?
「そもそも、政府側は誰と取り引きするつもりなのか? 本日の話し合いはアディール殿を交えて、我々月彩 Tr.Coとの取り引きについての話し合いのはず。国交云々の話をしたいのであれば別の場でお願いしたい」
「「……」」
いいぞ、天水大叔父。
話が戻りマーブル商会の話になった。
「我々の商会は新興の商会ですが転移スキル持ちを六人抱えた優良商会です。その転移スキルを持った者たちは収納スキルも持っています。これほどの人材を持つのは大商会といえど多くはありません」
そりゃそうだ。ケット・シーは種族固有で転移スキルのマーキングを持ているし、収納スキルの自由空間は苦行だが覚えようと思えば誰でも覚えられる。
もちろん、このことは秘密だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます