183.検証案件
それにしても印瞳術についての資料を読んでいるが、一文字すら瞳についてのことが書かれていない。
これって印術でいいんじゃね?
ふと思う。もしかしてこれこそ奥義? 師匠から弟子に直接伝えられる奥義なのかも?
この時代にその奥義を伝えられている人っているのか? うちの光明真会も修験道の流れを汲んでいたはず、だからこうして印瞳術の資料が残っている。なら奥義を会得している人もいるかも? 今度、
でも、忍術なんかは創作物や民間伝承として伝わっているってことは、昔の人って
忍者が忍術を使っていたというのも眉唾ではなく、本当のことならどうやて印瞳術を使っていたのだろう?
まてよ。アビリティーは
うさぎ師匠が理力を使って力を増幅したのを見ている。効率は悪いが武器に理力を乗せると威力が増すとも聞いている。もしかして、これは
理力を自在に操れればこちらの世界でも使える? ということは魔導も使えるのか?
そういえば、沙羅は貴子様の前で魔導書を出したりしまったりしていた。沙羅は間違いなく使える!?
だがもしかしたら、これって常識だったりして?
まあいい、これは要検証だ。貴子様や天水祖父の力を借りて実験をする必要もあるかも。異世界人がこちらの世界で魔導を使えるとなると、異世界人の脅威はさらに増すことになる。これは大問題だ。
ただ、スキルとしての魔法はどうなんだ? マーブルは普通に使っている。転移も
アビリティーは使えないけど、スキルは使えるのか? なんか、わけがわからなくなってきた。これも確認しておいたほうがいい案件だな。
それにしても、理力かぁ。今の俺は理力を曖昧にしか認識できていない。これはちゃんと訓練して理力を自由に操れるようにならないといけないのかも。今度、月読様の所に行ったらその辺の修行もつけてもらう必要があるかもな。
そうこうしていると沙羅が迎えに来る時間が迫ってきている。さっとシャワーを浴びて、新品のスーツに着替えていると沙羅が来たようだ。
「ネクタイ曲がっているよ」
そう言って、近寄って直してくれる。いつもの甘い香りではなく、ほのかに香る清楚な和風の香水を付けているようだ。なんか大人っぽい香り。ちょっとドキッとした。
「いい香りの香水だね」
「いいでしょう? この間、調香師さんと一緒に作ったんだ」
セルフデザインによるオーダーメイドのワンオフもの……。
さすがお嬢様……。
ちなみに俺はいつもの市販品のシトラス系のコロンだ。千円札三枚でお釣りがくる。だけど俺は近くのドラックストアで月一でもらえる、メンズ化粧品三割引きクーポンを使って買うので千円札二枚で済む。
貧乏人の鑑だろう~。
虚しい……。
沙羅と車に乗り込みアディールさんと挨拶を交わす。なにか緊張しているような?
「さすがに王族の方と食事を共にするのは初めてですので」
たしかに王族なのかもしれないけど、テレビで見るようないつもニコニコしているような皇族の方とはちょっと違う。どちらかというと優秀なキャリアウーマンって感じだ。性格もキツメだし……。
車は中央区に入った。隅田川沿いの大きな料亭の前で車が止まる。外装は近代的だが案内され中に入ると一変。ノスタルジックな映画に出てくるような、まさに高級料亭。
お座敷には既に貴子様が待っていた。いつものスーツ姿ではなくシックな着物姿だ。
「ようこそお出でくださいました。アディール殿」
仲居さんに促され席に着く。取りあえず正座かな。アディールさんも正座で座る。天水家で一通りの作法は学んでいる。ついでに俺も学ばせてもらった。
「アディール殿。どうぞ、足を崩してください。十六夜くんはそのままで」
「なんでやねん!」
沙羅とアディールさんがクスクスと笑う。緊張をほぐすための貴子様のジョークだとは気づいていたので、もちろんちゃんとツッコんだ。これはボケた貴子様に対する礼儀だ
「冗談はさておき、楽にしてちょうだい」
「それでは失礼いたします」
アディールさんは真面目だな。
「コタちゃんとマーブルちゃんがいないのは寂しいけど、楽しんでくださいね」
本音がダダ漏れだよ。
そして、ビールで乾杯。アディールさんはなんでもいける口で、天水家ではエルフ酒と同じ日本酒を好んで飲んでいる。ワインも好きって言ってたな。
今日は珍しく沙羅もビールを飲んでいる。本人曰くあまりお酒は好きではないなどど言っているが、実は笊で笑い上戸らしい。天水姉談。
意外な一面だな。
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