178.インド術?

 そしてもう一つ、はにわくんたちに弱体化攻撃がよく効くのだ。異常状態無効の代償だろうか? 俺が(微)で済んでいるのにはにわくんたちは(低)から(中)の状態になる。


 (低)ならまだなんとか怪異モンスターに対応できるけど、(中)になると素人でも躱せるスピードまで落ちる。これが(高)とかになったら、スローモーション状態になるんじゃないか?


 そういうことで、自ずと戦い方が決まってくる。エンハンサーらしきスケルトンが現れたら、俺が弓で攻撃し弱体化攻撃をさせないようにする。


 しかし、エンハンサーとメイジの区別はつかない。格好がまったく同じ。近接系のスケルトンとは武器を持っているので区別がつく。なので、それらしきスケルトンが来たらどっちであろうと構わずるしかない。


 ただ、スケルトンに弓は利き難い。偃月も駆使して下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる戦法であたるしかない。


 思わぬ天敵の出現だ。


 落すアイテムも毎度の石骨と稀に石化液。武器を奪っても錆びたシリーズ。まったく旨味がない。さっさと次の階に行きたいが、無駄に広く下に続く道が見つからない。トホホ……だ。


 今日のところは撤収。鉱石をリヤカーに積んで喫茶店ギルドに戻る。



 小太郎がミルクを飲んでいる横で、マスターギルド長に聞いてみる。


「手をこうやってですね、こう向けると動きが遅くなるんですよ」


「そいつは印瞳術だな」


 喫茶店ギルドでアールグレイティーを飲みながら、マスターギルド長と話していると横から話に割り込んできた人がいる、


 あら、錬さんお久しぶりです?


「インド術?」


「印瞳術だ! それにしても、十六夜ももうそんな所まで行ってるのか、男子三日会わざれば刮目して見よだな」


 錬さん曰く、手で印を結び術をかけたい対象を見て、認識することで発動する術。怪異モンスター特有ではなく、探究者シーカーでも覚えている人がいる。修験道系の術なのだそうだ。


 両手で印を結ぶので武器を持った状態では使えない術なので、覚える人は少ない。基本、理力が使えれば誰でも発動する術らしい。


 面白そうだ。覚えたいな。


「うちのPCの保管庫に取り込んだデータがありますから、覚えたいのならダウンロードしますよ?」


「お願いします!」


 マスターギルド長にCデバイスを渡してお願いする。


「そういえば、最近錬さんを見かけませんでしたが、ご旅行にでも行ってたんですか?」


「そうそう、南国の島にバカンスに……行ってねぇよ!」


 錬さんて関西人なのか? 見事なボケツッコミだ。


「レギオンの仕事で南の島に行ってた。高坂も一緒だ」


 南の島には行ってたんだ。それも花音さんと……。


「おまっ!? その目はなんだよ? 遊びじゃねぇからな! 仕事だからな!」


 まあ、そういうことにしておきましょう。


「で、どんな仕事だったんですか?」


「詳しくは言えんが、ゲート探しだな」


 戦前の忘れ去られたゲート探しらしい。資料が失われていたり、過疎化が進んで誰も管理していないゲートを探して、管理し直す仕事なのだそうだ。


「そんなにあるものなんですか?」


「あるな。この国は島国だ。多くの島があり、戦後無人島になった島がごまんとある。島だけじゃねぇ。山奥なんて過疎化が進んでる。うちのギルドでさえ山奥に三つもゲートを抱えてるんだぜ」


 その一つに行きましたね。今、俺は遠い目をしていることだろう。


「今のゲート設備は頑丈だから、そうそう怪異モンスターは出てこられねぇが、昔の設備は朽ちてることが多い。そこから怪異モンスターが出て来てみろ。洒落にならねぇぞ」


 現代設備でも、定期的に間引きしないと溢れ出ると言われているのに、昔の設備は漆喰や木製なので誰も手入れしていないから朽ちて役に立たなくなっているのは当たり前。そこから怪異モンスターが出て来たら大騒ぎだな。


「頑張ってください」


「他人事だな」


 そりゃあ、他人事だよ、入って間もない俺にどうしろと?


「そこは、世辞でも手伝いましょうか? って言うところだろうがよ!」


「俺は学生ですよ? そんな暇あるわけないですよ!」


 マスターギルド長が戻って来てCデバイスを返してくれた。中にデータを落としてくれたようだ。


「そうですよ。学生の本分は学業です。おろそかにしてはいけません!」


「お、おう。そうだな悪かった……」


「それに来年から探究者シーカーの専門校が始まります。来年以降は少しは探究者シーカーも増えることでしょう。負担も少しは緩和しますよ。錬」


「学校って言っても、入る人間がいるのか?」


 それは俺も疑問だ。現状、異界アンダーワールドのことは世間に公表されていない状況で、本当に人が集まるのだろうか?


「私のところに入ってきている情報では、既に二百人以上が募集に応募しているそうですよ。このギルドにも講師の派遣依頼が来てるくらいです。期待できるのではないでしょうか?」


「マジかよ……」


 マジなんだろうね。


 この喫茶店ギルドにもそのうち新人が入るかな?









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