176.奉納と神器

 沙羅軍団VSゴブリンリーダーが激突。


「なんにゃ? あきっちは行かないのかにゃ?」


「必要ないでしょう」


 今の沙羅は前と違って氣を使えるはず、そうでなくても竜牙兵二体は過剰戦力だ。


 俺は小太郎をモフりながらはにわくんミニを観察。はにわくんほど力はなく、動きも直線的。突撃ぃ! って感じだな。はにわくんが将で、はにわくんミニは歩兵だな。


 数が揃えば面白いかもな。理力は月読様持ちだから大軍団での戦闘も夢ではないかも。そこまで眷属が増えるか知らんけど。


 はにわくんははにわくんミニをレッドキャップのけん制に使っている。相手の攻撃は弓なので、はにわくんミニにはほぼダメージにならない。いい作戦だ。


 残りのボスたちも沙羅たちの相手になっていない。間もなく決着がつきそうだ。最後まで残ったボスもみんなに周りを囲まれタコ殴り。見ていて可哀そう。進化することなく倒された。


 しかし、あれは何だったんだろう?


 残念ながら宝箱は出なかった。一回きりなのか、何か条件があるのか、数をこなさないとわからないな。


 沙羅は久しぶりの実戦でストレス発散でき、いい笑顔になっている。それじゃあ、帰りますか。


 保管部屋に戻り、リヤカーに鉱石を積み込んで喫茶店ギルドに帰り沙羅の家に戻る。


 途中のスーパーに寄ってお菓子類を買っていく。夜に今日の分も含めてアイスを送っているが、説明はしたけどもう一度奉納したほうがわかりやすだろう。


 マーブルの神罰取り消しのためにも。


「お菓子にゃ~、お菓子にゃ~。嬉しいにゃ~」


「これはマーブルのじゃないぞ」


「にゃ、にゃんですとぉー!?」


 だから~、マーブルの神罰取り消しのためにも奉納するんだよ!


「しかたないわね」


「そ、そうだにゃ。神罰は怖いにゃ」


 やっと諦めたか……。


「そういえば、あきっちは使徒なのかにゃ?」


「違うんじゃないか? 今のところお情けをかけてもらっている状態だからね。いつかは、そうなりたいな」


「何気にこたちゃんって、凄~い!」


「こたっち、何気に大物にゃ……」


「にゃ~」


 実際に沙羅の部屋で奉納してみせる。


「う、うちのお菓子が消えたにゃ……」


 まだ、言うか……この駄猫。


 前に沙羅に渡した勾玉や甲陽軍鑑はその神様からもらったことも教える。月読様の名は明かしていない。勝手に教えていいことではないだろうからな。名を教えるのは月読様から許可をもらってからだ。


「そ、そうなんだ。神様から下賜されたものだったんだぁ……」


 沙羅がなぜか遠い目をしている。


 そうしている目の前に、一センチほどの紐が通された翡翠の勾玉が二つ現れる。この前に鎌倉でもらったものと同じだ。


「二人にくれるらしいね」


「ほ、本当に!?」


「ゴ、ゴットアイテムにゃ!?」


 いやいや、そこまでのものじゃないと思う。闇を払う(微)の能力があることは教えておく。


「聖水を常時体にかけているようなものにゃ。闇耐性があって、異常状態関係の魔法に強くなるにゃ。凄いものにゃ。返せと言われても、もう返さないにゃ!」


「返せなんて言わないから、ちゃんと身に着けておけよ。サラもな」


「うん」


「もちのろんにゃ!」


 そうしているうちに、天水家のみなさんが戻って来たので、予定どおり話し合いを始める。


 朝にも話したが今度は詳しく話す。抜けているところは沙羅がフォローしてくれている。


「会社設立に関しての登記申請は弁護士に任せればいい。古物商許可も同じで問題ないだろう」


「十六夜くん、資本はいくら用意したんだね?」


 天水父に聞かれたので、昨夜貴子様から渡された小切手を出す。


「四億ですか。小さいビルなら買えますね。安全を考えれば、事務所を借りるよりビル丸ごと買うほうがいいと思いますが。どうでしょう? お父さん」


 忠道さん、本気ですか? ビル丸ごと買ってどうしろと?


「一階は倉庫で最上階を十六夜くんの部屋にすればいい。残りの階は事務に使えばいいだろうね。おそらく、それでも将来的には手狭になると思う」


「政府関係者や自衛隊関係者、下手をすれば各国の外交官も訪れることになるだろう。取り引きが増えれば倉庫も拡大しなければならなくなる。まあ、それは当分先のことだろう。今はこのくらいでいいだろう」


 なるほど、天水祖父の言うことは一理ある。面倒だけどね。


「当初の人材は十四名。財務会計経理に四名、その他部署に六名、警備に四名というところだろう」


「警備ですか?」


「もちろんセキュリティ会社とは契約を結ぶが、君のボディーガードや内部情報のセキュリティ対策も取らねばならない。内部情報をハッキングしようとする輩から情報を守るエキスパートが必要になってくる」


「取りあえずはお試しだね。必要になれば随時増やすことになる。違うな、間違いなく増やすことになるね」


 うちの会社が世間に知れれば、現在我々が行おうとしていることは、世界各国が喉から手が出るほどの情報なので、情報を盗もうとハッキングされるということらしい。


 当分、そこまでの脅威はないと見ているが、この後必ず必要になってくる。その時になって急遽作るより、今から少数でも集めて基盤を作っておくのが狙いだ。


 政府が各国にどこまで情報を開示するつもりかはわからないが、甘い蜜を吸おうとする馬鹿な政治家が必ずリークすると考えて間違いないそうだ。


 そうなれば、必ず月彩 Tr.Coの名が出る。各組織はこぞって合法、非合法問わず、うちのことを調べるだろう。


 実際に俺のことを台湾の青丐幇にリークした馬鹿がいるからな。今度は各国のエージェントに狙われてもおかしくない。そのためのボディーガードであり情報セキュリティでもある。


 今は自衛隊から派遣されてショウさんが付いているけど、いつまでも頼っていられない。自衛隊も所詮は国の機関の一つだから、命令には逆らえない。そのための自前の警備が必要になる。


 どこの国にもとらわれず、力のある強い人?


 そうだ、向こうの世界から連れてくればいいんじゃね?



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