175.はにわくんミニ
商談コーナーでアディールさんと打ち合わせ。
プッカとエリンさんは品物が入荷したことの旨を手紙に
マーブルも旅猫行商人の仲間に手紙を書いている。
「アディールさんには、近々俺たちの世界に来てもらいます。そちらを見てもらい、国の情勢などを説明します。百聞は一見に如かずです」
「私が異世界に滞在できるのですか……感慨深いものがありますね」
「五日前後に向こうに行き、しばらく向こうに滞在してもらうのでそのつもりでいてくださし。荷物は 必要最低限でお願いします」
「手ぶらでもいいということですか?」
沙羅と相談して当分は沙羅の家で一般常識のお勉強。その後、特対室で用意したホテルに移る。
今着ている服は向こうでは着れないので、必要なものは向こうで揃えればいい。
「問題は容姿ですね」
「姿変えの指輪があるので問題ないかと」
そういえばそんなのがあったね。
指輪を使ってもらうと、前とは違い凄い違和感がある。顔立ちは西洋人なのに、髪の毛と目の色は日本人。なので、前と同じにしてもらう。
「ハリウッドスターが霞んじゃうね」
「そうだね……」
もう少しフツメンにしてもらおうか。いや、駄目だな。この整った顔も十分に武器になる。
「その指輪は時間制限なしですか?」
「魔力を補充すれば問題ありません」
それなら安心。魔法石もあるから問題ないだろう。軽く今後の予定を話してまた迎えにくると言って今日は終了。
みんなで王都に飛んで、王宮に納品と注文伺い。今回もいろいろと注文が入る。もう、お得意さまだ。マーブル商会なしでは、生きていけないと言ってもいいくらいの注文数。
なにかあっても、助けてもらえる下地は出来上がったとみていい。この状態をほかの国でも作らないといけない。深刻そうに言っているけど、それほど難しいとは考えていない。
俺たちの持ち込む製品を一度でも使えば、もう今まで使っていた品を使おうなって思わなくなるのが目に見えている。王族や金持ちなら尚更だ。
各国の王家御用達になってしまえば、こっちのもの。王家の後ろ盾があればほかの商会からの横やりを躱せ、いろいろなリスク削減になる。
マーブルはその必要性をよくわかっていなさそうだけどな。
王都に来たついでに武器防具屋に寄って注文して溜まっていた品を買い取って来た。
結構な量の武器があるが、ほとんどが前に買った武器の劣化版。最初に買った武器は当たりだったようだ。まあ、無理に集めてもらったせいもあるかもな。
その中で一つだけ目を引く武器がある。
清浄の杖 品質 最良 打撃特性+70 理力特性+200 聖属性+200 耐久800/800 清浄
マーブル曰く、アンデッド特化武器だそうだ。試しに清浄を使ってみたら、汚れていたファングベアーの革鎧がピカピカになった。
「そんなことに神様の力を使うにゃ~!」
と怒られた。神様にアイス如きで文句を言って奴には言われたくないな。
本来は、闇の力や不浄の力を払うものらしい。便利だからいいじゃないかと思うのは、やっぱり神様への冒涜なのだろうか?
人工ダンジョンに戻り、スケルトン相手に清浄の杖を使ってみる。触れただけで塵に変わった。
「雑魚相手にゃら、そんなものにゃ。理力特性+200と聖属性+200ってのは凄い能力にゃ。武器自体の性能はいまいちだけどにゃ」
それでも。俺が使う興亜一心刀の倍近い性能だぞ。泣けてくる……。
保管場所でお昼を食べてもまだ時間に余裕があるし、うちの軍神が戦いに飢えているようなので地下十階のボス部屋に行ってみる。
俺も沙羅も一度ボスを倒しているので、それでも再戦できるか知りたい。
扉を開け中に全員が入ると扉が閉まり、向こう側に魔法陣が浮か。再戦可能みたいだ。
竜牙兵を出し、はにわくんも召喚……ん? はにわくんとお馬さん以外にも呼べるようだ。取りあえず、はにわくんを召喚。
「はにゃ~!」
久しぶりの登場で沙羅とハイタッチ。俺とは……しないんかい!
まあいいさ。では新しい眷属を呼んでみよう。
「……」
「はにゃ~?」
「変なのが出てきたにゃ」
槍、いやあれは矛か? その矛を持ったはにわくんより一回り小さいはにわくんがはにわくんの横に登場。
「はにわくんの弟さん?」
「はにゃ~?」
確かにそう見えなくないが、はにわくんには覚えがないようだ。
そいつは変なジェスチャーも変な声も出さない。
「矛を上げて」
はにわくんミニが矛を上げる。
「右手下げて、左手上げて、左手下げないで、右手上げる」
「すご~い!」
か、完璧だ。引っかけにも引っかからない。
あとは、はにわくん並みの自律思考があるかだな。
「よし、はにわくんミニ、お前ははにわくんの部下一号だ。はにわくんの命令を聞くんだ。理解できたら矛を上げろ」
矛を上げたのでそれなりの思考能力はあるんだろう。
「じゃあ、はにわくん任せた」
「はにゃ~」
まあ、頑張れぇ。
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