169見送り

 やはり、朝起きれば二日酔。いい酒を飲むと二日酔いにならないというのは嘘だ。みんなを叩き起こして風月をかけ、朝風呂で身を清める。


 朝食を食べてジミーたちは帰国の途に就く。


 まあ、その前に街に出て家族や恋人へのお土産を爆買いしていた。ブラックカードで……。


 荷物は全部、ジミーの自由空間に収納。


「便利だ。これを今回身につけたのは最大の成果だ」


 なんて言っている。


 空港までジンとお見送り。


「またな、アキ」


「ちゃんと修練しろよ」


「また、楽しいことしようぜ!」


 拳をぶつけ合い再会を約束して別れた。


 ジンとはレンタカーを返し東京駅で別れる。


「なにかあれば連絡しろよ。当分はこっちの仕事で日本にいるからな」


「了解。防具が出来たら連絡入れる。それから、自由空間の取得はどうする?」


「あ、あれは当分いい……」


 サングラスを掛け逃げるように人ごみに消えていった。そこまでか!?


 俺もやっと下宿先に帰れる。長かったぁ。


 大家さんへのお土産は全部宅急便で送っていたので手ぶらで挨拶。お土産は大いに喜んでくれたようだ。加奈ちゃんは小太郎を掲げてクルクル周り喜びを表現。やはりお土産より小太郎のほうがいいらしい。


 部屋に戻り沙羅にみんなが帰ったことを報告。マーブルも戻ってきたらしい。みんなからだいぶ責められたようだ。その話は明日聞こう。


 小太郎は加奈ちゃんに任せた。疲れたもう寝る。こんなにゆっくりしたのは、冬休みに入って初めてかも。ああぁ、睡魔に身を任せる俺。マーブルを責められないな……。



 翌日、体も心もスッキリし、とても快調。小太郎を加奈ちゃんに預けたまま、沙羅の家に向かう。


 てっきり、マーブルはみんなに怒られ落ち込んでいると思ったので、沙羅の家に行く前にケーキを買っておいたのだが、


「やっぱり、こっちがいいにゃ~。働きたくないにゃ~」


 と沙羅の部屋で大の字になってゴロゴロしていた……。


「ケーキいらないな……」


「なんでにゃ~!」


「お茶入れてくるね」


 マーブルを軽くケリケリして起こす。猫の姿なんだけどね。


「あきっちは酷いのにゃ~」


「それより、報告」


「はいはい、にゃ」


「はいは一回」


「あきっちはママにゃんか!?」


 ママにゃんねぇ。男だからパパにゃんのほうだと思うけど。それより、報告を聞こう。


「在庫は空っぽにゃ。プッカが泣いてたにゃ」


 可愛そうなプッカ。こんな姉を持ったのが運の尽きだな。


「アディールはいつでもマーブル商会に籍を移せるそうにゃ。引継ぎが終わって新しい副ギルド長が来てたにゃ」


 それじゃあ、早急にアディールさんはマーブル商会に移ってもらったほうがいいな。会頭が怠け者だからアディールさんに頑張ってもらわないと。


 沙羅がお茶を持って戻って来たので、ケーキを食べながら話を聞こう。


「それからにゃ、知り合いの旅猫行商人がマーブル商会に入ってくれることになったにゃ」


「マーブルのお友達なの?」


「そうにゃ」


「じゃあ、もふもふ?」


「もふもふにゃ!」


 もふもふはいいとして、旅猫行商人ということはケット・シー? それなら、種族固有転移スキルのマーキングを持っているはず。これは凄いアドバンテージだ。ソールリシア王国以外とも関係を持てるかもしれない。


 すぐにでも行きたい気持ちを抑え、まずは仕入れだ。沙羅がマーブルの書いてきたメモを翻訳してくれていたようで助かる。さっそく仕入れに向かおう。


 いつもの日用品問屋に行って注文。もう、お得意様だ。固形石鹸、タオル、バスタオル。消耗品だからいくらあっても困らない。


 前に頼んでいた百均のお店に卸すような品のリストもみせられる。プラスティック類は却下。木製の物や金属製のもので売れそうなもの注文。鏡や小物入れ金属のバケツなど。


 変わりダネでキャンプ用品の小さな鉄板や網、マグカップや鍋、五徳などだ。レイダーの野営用に売れるかも。売れるようならちゃんとしたキャンプ用品を仕入れてもいいな。


 文具、駄菓子問屋も周り注文を繰り返す。


 だから、何度も言うけど、そんなに駄菓子を買ってどうするのよ沙羅さん。


「おばあ様やお母さんたちの婦人会で人気があるみたいなの」


 天水家で消費されるわけじゃなかったみたいだ。だが、ハイクラスのご婦人方が駄菓子を食べる姿はシュールだろうな。


 次に行ったお店は業務スーパー。缶詰、瓶詰のものを注文。ここで気付いた。前にビールを缶で買ったけど、ビールなら瓶があると。なぜ、思いつかなかったのだろうか……天水家であんなに飲んでいたのに。


 急いで酒屋の問屋に移動して瓶ビールと樽詰めのワインを大量注文。ついでに栓抜きも大量に注文した。ほかには量り売りで売ろうかと思い、業務用の焼酎とウイスキーを大量注文。入れ物を移し替えても売ってもいい。


 何かのイベントですかと店員さんに驚かれたほどだ。笑って誤魔化すしかなかった。


 最後は王宮からのご注文。陛下やお客様用の少し高めのブランデーとウイスキー。料理長からも料理で使うらしく同じような注文が来ている。


 王宮からは葉巻の注文も来ているので最後に前に行った葉巻の専門店に寄って買っていった。


 これだけ買えば当分は間に合うだろう。



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