168.最強とは

 そして、護法と技能。護法はマギと契約することでマギから加護をもらうことで使える力。


 極端な話だが、マギが弱くても覚えた護法が最強呪文ということもある。まあ、そういう護法は理力を大量に使うので、結局自身がレベルアップしていないと宝の持ち腐れなんだそうだ。


 技能はマギがいなくても使える。探究者シーカーになる前から覚えている人もいるそうだが、ほとんどの人は戦いの中で覚えることが多い。


 多くの資料が戦争で消失したが、現在知られている技能でも多くの種類が確認されている。戦闘技能から理力技能、戦闘以外の補助技能まで様々らしい。


 そういうことを踏まえた上で最強というのを決めるのは難しいそうだ。


 現に死者さえ蘇らせる(実際には生き返らせることはできないが、それくらいの回復技能を持つ)という高僧がいるそうだが、怪異モンスターと戦う技量は一般人以下らしい。


 その高僧が弱いのかというとそうではないだろうということだ。


 ほかにも限定的な強さを持つ探究者シーカーなどだ。水があれば無敵とか、一発しか撃てないが戦況を一転させることができる理力技能などがそれにあたる。


 こちらの世界にはないものだが、死者の魔導書もそれに当たる気がする。あれは幽斎師匠でも敵わない相手を粉砕して戦況を変えた。俺たちのことも粉砕しようとしたけどね……。



「台湾だと最強の探究者シーカーってどうなの?」


「そうだな。日本と変わらないな。何を持って最強とするかで違うと思う」


「その道に秀でていれば、ほかの者の追従を許さないからな」


「台湾には仏教僧もいるが、道教の道士もいるぞ」


「高位の道士が使う僵尸術は恐ろしい呪術だ」


 道教か日本だと陰陽道として伝わっているね。実際に昔は陰陽師が異界アンダーワールドに入っていたようだし。探究者シーカーの前身だな。


 そんな日本以外の国の探究者シーカー事情に、沙羅の祖父たちは興味があるようで話が盛り上がっている。


 その間にマーブルと話をするため沙羅の部屋に移った。


「マーブル、また太ったんじゃないか?」


「にゃ、にゃにおぉー! 乙女に失礼にゃ!」


「ちゃんと帰ってるのか?」


「ま、まあにゃ」


 怪しい……。そろそろ、また仕入れをして持って行かないと在庫がなくなる頃だと思うんだけど?


「怒らないから本当のことを言ってごらん」


「にゃ~」


「戻っ……ごにょごにょ」


「聞こえない」


 明らかに怪しい。悪い意味で。


「戻っていませんにゃ!」


「こ、この駄目猫! 今すぐ戻って確認してこいや!」


「怒らないって言ったにゃ……」


「にゃ……」


 沙羅は笑って見ているが、向こうのぱっちょんやプッカ、それにエリンは気が気じゃないだろう。商会の会頭が何か月も音信不通なのだから。


 それにアディールさんの件もある。貴子様の所の外務省の分室もこの年明けから始動する。ある程度したらアディールさんと実際に会わせて細かい話し合いもしなくちゃならないというのに……。


「俺たちの休みも少ないんだ。仕入れるにしても、仕入れの数量が分からないと、どれだけ仕入れればいいのかわからない。すぐ行け! 今すぐ行け! さっさと行け!」


「行ってくるにゃ……」


 俺が悪者みたいだが、違うからな! マーブルが堕落したのが悪いんだからな!


「完全にダークサイドに堕ちてたな……」


「みんなに可愛がられていたからね。誰かが必ず構っていたから、帰るに帰れなかったのよ」


 いや、違う。あれはクロだ。狙ってやっていたに違いない。時間はいくらでもあったのだから。


「改めて明けましておめでとう。初詣行けなくてごめんね」


 沙羅の着物姿見たかったなぁ。


「うんん。気にしてないよ」


 周りに誰もいないので沙羅を抱き寄せ軽くキス。沙羅が小太郎を抱っこしているのでちょっとぎこちない。


 小太郎、こういう時は気を利かせるものだぞ!


「にゃ~?」



 みんなの所に戻り、お暇しようとしたら泊まって行きなさいと言われる。


 ジミーたちはジン以外は明日帰国するので、今夜は送別会をするつもりだったのだが……ジミーたちが頷いたのでお世話になることにした。


 夜は宴会。もう何度目の宴会だろう……。幽斎師匠の所ほどの馬鹿騒ぎはないけど、その分飲む量が多い。明日も二日酔い決定だな。


 そういえば、マーブルがいないことに天水家のみなさんは気づいていたが、代わりに小太郎がいるので気にした様子はなかった。


 哀れ、マーブル。アイドルの格は小太郎が上だったな。






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