167.天水家年始挨拶
「みんな、また遊びに来てね。約束よ」
少々二日酔いで幽斎師匠の家をお暇する。昨日はあれから幽斎師匠の馴染みのお店を梯子酒で午前様。
新幹線で東京に戻り沙羅の家に挨拶しに行かないと。
「お世話になりました」
「また来てね」
「また来ますから小太郎を返してください」
「にゃ~」
「わふ?」
「あらあら、小太郎ちゃんはうちの子と勘違いしてたわ」
いや、わざとだ。あわよくば、そのままこのうちの子にしようとしていたな。
俺のマギじゃなければ考えるけど……いや、それもないな。小太郎は俺の大事な家族だからな。
小太郎が戻って来て俺の肩に登り首にスリスリ。
「やっぱり、本当のご主人様のほうがいいみたいね。妬けちゃうわ」
「また来い」
「「「「「はい」」」」」
幽斎師匠と奥様の見送りを受け、俺たちは帰途に就いた。って、下宿にはまだ帰らないけど。
新幹線の中ではジミーたちは爆睡。俺はグリーン車に初めて乗ったので緊張した。小太郎は自由空間で寝ていると思う。
東京駅で昼食を取ってから、レンタカーを借りて沙羅の家に向かう。連絡は入れてある。
「おかえり」
「ただいま」
「にゃ~」
なんか照れるな。
マーブルが寄ってきて俺の脚にスリスリ。完全に天水家の家猫に成り下がったな……。
居間には天水家全員が揃っている。
「遅ればせながら、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」
「うむ。河上先生の所にいたそうだな。まあ、楽にして座りたなさい。ご友人のみなさんも」
とは言っても、いつもの座卓ではみんなは座れない。忠道さんとお客様が来た時用の座卓を一緒に取りに行く。
「河上先生の所では修行でもして来たのかい?」
「いえ、遊びに行っただけですよ?」
「そうなの? なにか雰囲気が変わったよ?」
「幽斎師匠の前にジミーたちと風師匠の所で修業したからでしょうか?」
それもあるだろうけど、やはり死線を乗り越えたからかもしれない。死への恐怖、そして己の弱さを痛感させられた。
「君はいい先生に恵まれているようだね。羨ましいよ」
「幽斎師匠を紹介しますか? がっかりしても知りませんけど」
「そ、そんなになのかい!?」
合う人には合うだろう。ショウさんみたいな人とは間違いなく合う。真面目そうな忠道さんでは翻弄されて合わないと思う。
「刀かぁ……」
若干だけど心揺れたようだ。
ほんの少し場を外しただけなのに、ジミーたちは既に打ち解けている。順応はやっ!
お土産も渡し終わっていて、お土産の月餅を食べながらお茶を飲んで談笑してるくらい打ち解けている……なぜだ!?
あの厳格そうな沙羅の祖父でさえにこやかな表情だ。コミュニケーション力の違いななのか!?
「まさか家に世界的スターが来る日が来るなんて、感慨深いわ」
確かにジミーたちは世界的スターに違いない。ジンは日本でも活躍する俳優だから、天水家の面々も知っていた。
「ねぇねぇ、修行の成果はどうなの?」
「間違いなく強くなったといえるね。サラは氣の訓練は順調?」
「氣道っていうのは開けたけど、氣を練るっていうのが苦手かな」
なんとなくわかる。沙羅の場合バーンとやってガツンと感覚で戦うタイプ。理論で下準備して戦うのは苦手っぽい。その反面、一度体に覚えさせれば考えなくても感覚でできるようになる天才肌だ。
「河上先生はご息災だったかね?」
「きわめてお元気でした。一度、みんなで
「ほう。河上先生の勇姿を見れたのか」
「お父さん、河上先生は引退したと聞いていましたが?」
沙羅の父が驚いている。
「一線を退いてはいるが、その実力は現役含めてもまだ五本の指に入るだろう。そんな方に同行できる十六夜くんはいい経験になるだろう」
現役含めても五本の指に入る。現役の時も五本の指に入ると言われていたはず。トップではないということだ。
あれだけの実力を持つ幽斎師匠なのにトップじゃない、ならばトップとはどんな人なんだ?
「ちなみに五本の指に入る人たちってどんな人たちなんですか?」
「気になるかね?」
凄く気になる。俺だけじゃない。ジミーたちも幽斎師匠の実力を知っているだけに興味津々だ。沙羅も何気に最強を目指しているので興味があるようだ。
「五本の指に入ると言っても一概に言うのは難しい。武器を持って戦うということなら、河上先生は一、二を争う実力者だろう」
だけど、武器を持たない戦い方もある。マギと護法アビリティに技能スキルだ。
マギは基本契約した者の実力に比例して強くなるが、最初から強いマギもいる。マギと言っていいのかわからないが月読様のような神格だ。契約というより守護というほうが正しいと思う。
ちなみにジミーのマギの白蛇王は亜神(半神)格だが、神格と亜神(半神)格では越えることのできない差があるそうだ。
まあ、神格から守護を受けられるのは、本当の意味での高僧や神職に就いてる人で、俺みたいなのは稀らしい。
それから、偶に戦い方が認められて守護はされないが、戦神から加護をもらう人はいるそうだ。
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