スメラミクニラビリンス～月読命に加護をもらいましたがうさぎ師匠には敵いません～

166.請求書

「そっちのぼろい装備のオヤジはどうする？　同じような造りにするか？」

　幽斎師匠の鎧は先の戦いでボロボロになっている。まるで落ち武者のようだ。

「出来るのか？」

「そこまで壊れちゃ修繕は無理だろう。そいつをくれれば同じようなものを造ってやるぜ？」

「いいだろう」

　幽斎師匠の使っている鎧だ、相当な金額のものだろう。だけど、見るも無残な状態。直すより新しく買ったほうが安く済むのかも。

　鎧兜を外してギルド長に渡す。

「ほう。面白い造りだな。なるほど、防御と動きやすさを兼ね備えているのか。だいぶ手の込んだ造りだ。職人の魂を感じるぜ」

　それから、天水家用にゴリラ怪獣の素材で襟巻と、小太郎用に敷物をお願いする。

「あの姉ちゃんのか？　敷物はわかるが襟巻とはな。豪儀なこった。いいぜ、任せとけ！」

　出来上がりはかなり時間がかかると言われた。自衛隊発注の鎧もあるので仕方がない。

　王都の武器屋にも行って、ジミーたちの鎧一式も引き取ってくる。俺のファングベアーの革鎧よりいい装備だ。

「さすがサイズ合わせしただけある。ぴったりだ」

「これだけのものは向こうでは手に入らないな」

「この装備もかなりいい装備だぞ？」

「この装備よりいい装備って……」

　俺がさっきまで装備していた火喰い鳥の鎧より、いい性能になるそうだ。火喰い鳥は竜の大回廊だと地下二十階クラスのモンスターになるらしい。

　今回の素材はその倍以上の階層のモンスターだから期待できる。そういえば、以前に触手カブトガニで装備を造った人ってどんな人なんだろう？　気になるな。

　用事も済んで幽斎師匠の家に戻ると、幽斎師匠が土下座してきた。

「すまない……なんの言い訳もできねぇ。人斬りの先祖を笑えねぇ、自惚れだった……」

「連帯責任ですよ。誰も止めなかったんですから」

　ジミーたちも頷いてくれている。

「俺たちはまだまだだった」

「上には上がいるってことだ」

「正直、ビビったけど、やる気もでた」

「ああ、目標ができた。必ず一人で奴らを倒せるようになる」

　凄いなジミーたちは。俺はそこまで強くならなくてもいいかな。あの階層より下もまだまだあるし、きりがないと思う。

「何を言っているんだ。アキ」

「お前も強くなるんだよ」

「いつまでも、俺たちに守られている気か？」

「あの兎のように最強を目指すぞ」

　えっ！？　うさぎ師匠を目指すの？　強そうって感じよりラブリーでプリチーな感じだぞ？　確かに強いけど。

「あらあら、みんな戻ったのね。じゃあ、お昼にしましょうか」

　あちらでの滞在は、こちらに戻れば二時間程度のこと。あの長い死を掛けた戦いはとても濃い時間だった。正直、燃え尽きたね。今日はもう何もしたくない。

「にゃ～？」

「わふ？」

　お昼を食べた後、岩切丸をギルドに返しに行き、そのまま鎌倉駅近くのデパートで買い物。

　ギルドの女性職員さんにあの大量の魂石はどうしたのか追及されていたけど、幽斎師匠はどうでもいいだろうと突っぱねていた。ギルド職員さん、涙目だったね。ご愁傷様です。

　デパートで月読様のご希望の品を厳選して買う。支払いは詫びと言って幽斎師匠がしてくれた。みんなで両手いっぱいに荷物を抱えて、人の少ない神社に移動。

　人目のないことを確認してみんなの荷物を一ヵ所に集めて置く。凄い量だ。

　一応、二礼二拍手一礼してから月読様に奉納する。

　瞬時に大量の品が消えた。満足してくれるだろうか？

「相手は神格か？」

「わかるんですか？」

「知り合いのじじいが同じことをしているのを見たことがある」

　ちなみにその人は二礼二拍手一礼はしないそうだ。このお参りの仕方は戦後広まったものらしい。それまでは合掌だけだったそうだ。まあ、気持ちだからいいや。

「そう、思っていただいて構いません。小太郎はその方の眷属ですからその繋がりです」

　と、本当のことは言えないので誤魔化しておく。

「あのちび助、意外と大物か？」

　猫又のエリートではあるな。

　そんなことを考えていると目の前に何かが置かれた紙が現れる。

　なんだろう？

　拾ってみると一センチくらいの翡翠の勾玉に紐が通してあるものが六つ。

　勾玉　闇を払う(微)と鑑定できた、

　みんなに配れってことかな？

「これは？」

「満足したので、お返しじゃないでしょうか？」

「神器かよ……」

「そんな大層なものじゃないですよ？」

「馬鹿野郎！　大層なもんだよ！」

「「「「……」」」」

　ジミーたちも驚いたようだが、お揃いなのでみんな首にかけるようだ。せっかくなので、俺もかけておこう。

「お前ら大物だよ……」

　幽斎師匠は身に着けずにハンカチに包んで胸元にしまた。こういうものは使ってこそだと思うんだけどね。

　まあ、人それぞれか。