165.うさぎ師匠降臨
『戯け者め!』
あれ? 月読様の声が聞こえる。
『この月読の子孫がなんと不甲斐ないことか!』
と、言われましてもどうしようもない状況です……。
『あのような亜神などと契約するなど、阿呆としか言いようがない』
お言葉ですが、あの状況では藁にも縋る思いでやったことでして……。
『それでこの状況かえ? 前より悪いではないか。すべて聖臣の不徳の致すところであろう。そなたのせいで仲間が死ぬのだぞ! 反省せい!』
はい、海より深く反省します。ですので、助けてください!
『仕方ないのう。わらわの愛し子の願いと仲間ゆえ、助けて遣わす。これは貸しゆえ、ゆめゆめ忘れるではないぞ!』
月読様の声と共に巨大骸骨の頭上に光が射したと思ったら、光の中からヒーロー……もとい、うさぎ師匠が現れ巨大骸骨にメガトンパンチ!?
「「「「「!?」」」」」
あれほどの強さと頑丈さを持った巨大骸骨が粉々に砕け散る。さ、さすがうさぎ師匠。半端ねぇっす。
何事もなかったかのようにトコトコと俺のほうに歩いて来るうさぎ師匠。
ゴチン!
「あだっ!?」
うさぎ師匠から拳骨をもらう。そして、うさぎ師匠は俺の胸に腕を刺し込む。う、うそ……なんで? って痛くないし。
うさぎ師匠が腕を俺の胸から抜くと、そこには死者の魔導書がある。どうやら、没収のようだ。代わりにA4サイズの紙が渡され、額を小突いてから光の中にジャンプして消えていった。
周りを見ればみんなの怪我が回復している。月読様のお慈悲だろう。
「おい。どうなってる!」
「あれは何だったんだ!」
「うさぎ……だよな?」
「めちゃくちゃ強くねぇ?」
「アキの知り合か?」
いろいろ聞きたいことはあるだろうけど、いったん安全な場所に移動しよう。ここにいるのは危険だ。
「まずは、安全な場所に移動します」
クレストの町の広場に月虹で転移。
「ここは?」
幽斎師匠は初めてだな。
「異世界の俺が拠点にしている町です」
さすがの幽斎師匠もポカーンと口を開け周りを見る。
「それより、最初から全部説明しろ!」
ちょっと怖い顔して問いただしてくるジミー。ほかの三人も頷いていて、弁護してくれる気はないようだ。
アレックはそばで見ていたけど、改めて死者の魔導書について説明。月読様についてはたまに手を貸してくれる、偉い人と誤魔化した。
「偉い人ってよう……」
まあ、納得できないのはわかる。なので、うさぎ師匠から渡された紙をみんなに見せる。
「高級アイスだと……」
「「カップラーメン?」」
「スナック菓子?」
「兎用のカリカリ?」
「請求書です」
みんな微妙な顔をしている。しかし、やはり月読様はカップラーメンにハマったか。ラーメンをだいぶ気に入っていたからこうなるんじゃないかと思ってはいたんだが。
「助けてもらったんだから、みんなで払うからね」
「お、おう」
「「「「……」」」」
それよりせっかくクレストの町に来たので魂石を換金しよう。それに、最後の一体は回収できなかったけど触手カブトガニ一体とゴリラ怪獣五体を回収してある。せっかくなのでこれで防具を造れないだろうか?
レイダーギルドに行って魂石を換金。一人当たり大金貨八十五枚になった。
「金貨かこれ?」
「日本円に換金すると一枚十万くらいだそうですよ」
「八百五十万かよ……」
資金は手に入ったのでみんなに相談。ちょうど六体モンスターの素材があるので、これで装備を造らないかと言ってみる。
「こないだ防具を注文したばかりだぞ?」
「このモンスターの素材は、この世界でも相当に貴重な素材だから、王都で注文した防具なんかより相当にいい防具になる。実際に戦ったからわかるだろう?」
「「「「たしかに……」」」」
職人ギルドに行きギルド長を呼ぶ。
「まだ、全然出来てねぇぞ」
「そっちはゆっくりでいいです。今日はここにいる全員の防具を特注で造ってほしくて」
「また防具か……俺たちを殺す気か?」
「まあまあ、そう言わずに素材を見てくださいよ。滅多に手に入らない素材ですよ?」
「そこまでの素材なのか?」
「竜の大回廊地下五十階のモンスターです」
「なに!? また、手に入ったのか!」
建物の裏に回り触手カブトガニとゴリラ怪獣を出す。
「マジもんかよ……」
「ゴリラ怪獣はあと四体あります」
「いいだろう。だが、高けぇぞ」
「お。お手柔らかに」
ギルド長が人を呼びモンスターを回収。別の場所で解体するそうだ。
表に戻り、交渉開始。一人頭、金貨百五十枚と言われた。払えなくはないけど値下げ交渉。なんとか粘って金貨百枚と残りの素材を渡すということで手を打ってもらった。得したのか損したのかは、マーブルがいないのでわからないけどね。まあ、いいさ。ギルド長との付き合いだ、ギルド長を信じよう。
そして、全員のサイズ測定をしてもらい、装備一式造ってもらうことになった。
俺とジミーたちは動き重視でゴリラ怪獣の素材でお揃いに。幽斎師匠は触手カブトガニで鎧一式だ。
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