162.死合開始
幽斎師匠が岩切丸を持ち上げ、
「こいつを鑑定させたら面白いことがわかった」
鑑定させたって簡単に言うけど、鑑定ってレアなスキルだったはず? 持っているのは偉いお坊さんや神職の方だよね? 鑑定させたんだ……。
「普通、
それは知っている。特定の武器に理力特性ってのがあり理力を流すと魔力攻撃も加わるという奴だ。ことらの世界ではないのだろうか?
試しに俺もムーンスラッシュを出して理力を流してみると、剣が白く光り始めた。
幽斎師匠の岩切丸は黄色く、ジミーが持つ疾風の槍は緑色に、金剛の魔槌は黄色、炎の魔剣は炎を吹き出し始める。
ちなみに興亜一心刀でも同じようにしたけどなにも起きなかった。
「元々高性能なうえ、理力を流すと恐ろしいくらい強化される。だが理力を馬鹿喰いしやがる。常時、流すのは無理だから気をつけろ」
魂石を配り終わり持ちきれない分は俺が収納しておく。
「おまえ……収納スキルも持ってたのかよ」
そういえば、幽斎師匠は知らなかったな。まあ、いいや。
「準備はいいですか、気を緩めたら死にますからね」
ジミーたちがごくりと唾を飲む。
月虹で竜の大回廊地下五十階に飛ぶ。
氣を探っているわけでもないのに、肌にピリピリとした化け物の氣を感じるが近くにはいないようだ。
「ヤバいくらいの氣を感じる……」
「今まで
「近くにいないのに肌に突き刺さるような氣だ……」
「これ、マジでヤバくねぇ?」
幽斎師匠は眼を瞑って微動だにしていない。
その間にこっちも準備しておこう。小太郎は連れて来ていない。はにわくんは召喚しても盾にさえならないだろう。となると、俺の最大戦力である竜牙兵の召喚だ。
「な、なんだこいつは!?」
アレックのすぐ横に出現したので驚いている。
「アキの眷属か?」
「まあ、そんなところ。俺より強いよ」
「確かに強い氣を感じる」
「が、ここでは格下のようだな」
間違いなく竜牙兵でもこの階層の敵には敵わない。でも、防御に徹すればそこそこ行けるのではと淡い期待を抱いている。俺の護衛を頑張ってくれたまえ。
「よし、行くぞ」
幽斎師匠の瞑想が終わると、まるで別人のようだ。いつもの幽斎師匠と違い畏怖さえ感じる。これが本来のい日本のトップ
「凄い人だな」
「周りの氣に負けてない」
「おそらく、内に氣を封印していたんだろう」
「誰だ。じじいより弱いって言った奴」
だから、俺です。そんなこと言われても、幽斎師匠の本気モード見たの初めてだからなぁ。
通路を移動して行く。広い空間に出た。ゴリラがいた。いつか見た触手を生やしたカブトガニと戦って勝った巨大な角の生えたゴリラ怪獣だ
チラ見されただけなのに足が震える。ジミーたちの顔色も悪い。
「お前らはここにいろ」
そりゃあ、いますよ。一歩も動く気はありません。もう遅いが気配遮断を使って、俺はここにいない、俺はここにいないと呪文のように自分に言い聞かせる。
肩に岩切丸を担いだ幽斎師匠がゴリラ怪獣に向かって歩いていく。
ゴリラ怪獣は三メートルを超える巨体。
「おい、でかぶつ。俺を楽しませてくれよ」
ゴリラ怪獣を見上げる感じになる、幽斎師匠が言い放つ。それに対してゴリラ怪獣はフンっと鼻で笑った。ゴリラ怪獣は幽斎師匠を脅威ある敵とは見ていない様子。
幽斎師匠、岩切丸を一振りしたと思ったら、一瞬爆発するように氣を放出する。
目を細めた後ニヤリと笑うゴリラ怪獣と、不敵な笑みを浮かべる幽斎師匠。
こ、こいつらバトルジャンキーだ!?
ゴリラ怪獣の剛腕が唸り幽斎師匠を狙う。ゴリラ怪獣の拳が地面を穿ち、土煙が上がり何も見えなくなる。
土煙の中、幽斎師匠が岩切丸を振るう影が見え、それを躱すゴリラ怪獣の影も見える。動きはそれほど早くはない。俺でも躱すだけならできそうな早さだ。
だが、パワーは先ほどの一撃を見たとおり桁違い。どんな防御をしたとしても防げるとは思えない。
ゴリラ怪獣は岩切丸の攻撃を受けずに躱している。ということは、岩切丸の攻撃は有効打になるとゴリラ怪獣は思っているということだ。
お互い攻撃を躱しつつ、必殺の一撃を狙っている。途轍もなく高度な駆け引きが行われているのだろう。
「おい、何かこっちに向かって来るぞ!」
幽斎師匠とゴリラ怪獣の戦いに気づいたのか、遠くからこちらに移動してくる大きな氣を感じる。
やばくね?
狭い通路では戦い難い。この広い場所で戦うしかない。焼け石に水かもしれないが、全員に宵月と月城を使う。さすがに理力が一気に減った。六人と竜牙兵、もう一度全員に使うのは無理だろう。
「来たぞ! アキは下がってろ!」
言われなくてもそうする。俺では足手まといだろう。竜牙兵は俺の護衛な。
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