161死合の準備
幽斎師匠、最初は打撃しか使ってなかったのに段々突きを織り交ぜてきている。厄介だ。
棒法で対応しているが、六陽掌を出す隙が見つからない。
「なんかやろうとしているようだが、どうした」
「……」
読まれている。 悔しいが棒法も幽斎師匠のほうが
打己棒を左手に持ち替え、六陽掌をメインに変える。六陽掌は二手の陽春白雪と七手の陽関三畳の型技がありそれを組み合わせて攻撃する。もちろん、武器を持った相手に対応する技もある。
「今度は掌法か?」
いえ違います。両方です。左右、別々の技を出す。たんに別々の技を出すのでなく、お互いの技を補うように一つの技に組み合わせる。これぞ、雌雄一対撃。
幽斎師匠の杖を打己棒で絡め動きを封じ、空いた体に六陽掌を叩き込む。取った!
「そうは問屋が卸さねぇんだよ」
取ったと思ったのがフラグだったのか、右手首をするりと捕まれ軽く引かれ態勢が崩れる俺。掴まれた手首が軽く捻られ、気づけば青空を見ていた……。
合気道の技か!?
「なかなか、よかった。まあ、まだまだだがな」
差し出してきた手を掴み起き上がる。
はぁ……負けた。
「その技は刀に応用できるのか?」
「検証、研鑽中です。ただ、刀で受けるのはちょっと気が引けて……」
「棟を使えばいいんじゃねぇのか? あるいわ鞘を使うか? まあ、どっちにしても邪道だな」
ですよねー。せっかく覚えたこの技を、どう刀に組合わせるかが問題だ。
「なあ、アキの使った技って」
「ああ、棒法と六陽掌だが、違う技になっていた」
「違う技同士を融合させたのか?」
「アキ、まじ器用」
咄嗟に思いついたことをやっただけなんだけどな。まあ、付け焼き刃だ。だけど、手応えは感じた。これは研鑽する価値ありだ。
「お前らもやるなら、遊んでやるぞ?」
「「「「お願いします!」」」」
「えっ、嘘だろう……」
「まじかよ……」
「強えぇ……」
「誰だ、じじいより弱いって言った奴……」
俺だな。しかし、幽斎師匠強いね……。俺との対戦は遊んでいたということが丸わかり。
ジミーたちが手も足も出ないなんて……。
「甘っちょろい剣だな。死合いが足りてねぇな。格下ばっかりと戦ってんじゃねぇか?」
「「「「……」」」」
強い
「アキがいればなぁ……」
しー、しー! 幽斎師匠の前でそれ言っちゃ駄目!
「なんで、そこで十六夜が出てくる?」
なんでもないよ? なんにもないですよ! ジミーもしまったって顔しているけど、もう遅いような気がする……。
「……十六夜。なるほど、そういうことか。十六夜、おめぇ転移スキル持ってるな?」
だぁー! そりゃあ、気づくわなぁ。俺が異世界人と付き合いがあるの知ってるから、そこから勘づくよな。
「持ってます」
「なるほど、それで異世界か……」
異世界とは関係ないんだけどね。話すのも面倒なので説明は省く。
「強い
「いますね」
「どのくらいだ?」
「俺がプチっとやられるくらい」
「今のお前でもか?」
氣を全開にすれば一撃くらいは防げるかもしれないが、そんな危険は冒せない。
「まず無理です」
「面白れぇ。今からそこに行くぞ!」
「嫌ですよ。死にたくないので」
「十六夜は俺を連れてくだけだ。戦うのは俺だ」
「幽斎師匠がどこまで強いのか知りませんが、そのモンスターを倒すと魂石が一度で二つ満タンになります」
「「「「二つだと!?」」」」
「面白れぇじゃねぇか」
幽斎師匠がスマホでどこかに連絡している。電話が終わると、
「準備する。待ってろ」
と言って、家に入っていった。
「どうするんだ?」
どうするんだ? と聞かれましても、行くという選択肢しかないような?
「行くしかないでしょうね」
「俺たちも行っていいか?」
「自己責任ですよ?」
「そこまでなのか?」
「フル装備で、氣を防御に全開で使えば一撃くらいなら防げるかも?」
「まじかぁ」
それでも行くようなので、俺の持つ武器を渡す。金剛の魔槌、疾風の槍、炎の魔剣二本だ。俺は火喰い鳥の鎧を装備した。ちゅっとサイズが大きいけど。
しばらくすると、武者鎧姿の幽斎師匠が戻ってきた。本気モードか?
「遅せぇな。まだ来ねぇのかよ」
幽斎師匠が悪態をついていると、門の前に車が止まり誰かが入ってきた。いつか会ったギルドの受付の女性だ。
「幽斎さん。急にどうしたぁ……せ、戦争にでも行くつもりですか!?」
女性の後から男性が大きな箱を二つ運んでくる。
一つは魂石がいっぱい入っている。もう一つは鍵が掛かっているようで、幽斎師匠が鍵を開け中身を取り出す。
岩切丸だ。
「帰っていいぞ」
「えっ!? 説明なしですか!」
可哀そうギルド職員さん。トボトボと帰っていった。
こうやっていつも無理難題を言われているんだろうな。
お疲れ様です……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます