157.忘れていた年始挨拶
さて、どこに行こうか? アレックとニッキーは自分たちのテリトリーなので、俺の行きたい所でいいと言う。
スマホでチェックをしてシュウマイ工場の見学をすることにした。電話すると即日可能だけどペットは駄目だそうだ。仕方ないので小太郎は居残りだな。
小太郎は気にした様子もなく。陽当りのいい場所で背伸びをしてから丸くなって昼寝に入った。
シュウマイ工場はとても近代的。本当に工場だった。もっとアットホーム的なものだと思っていた。でも、ここのシュウマイが好きなんだよね。
「そういえば、アキには刀の師匠もいるんだよな?」
「正式に弟子にはしてもらってないけどね」
「どこに住んでるんだ?」
「鎌倉だよ」
「なんだすぐそこじゃないか」
「遊びに行こうぜ!」
そういえば、忙しくて年賀状も出していなかった。年始の挨拶がてら行ってみるか。というより、天水家にも挨拶にもいかないと不味いだろう。幽斎師匠とともに俺の後見人みたいなものだからな。
となると、竜の大回廊にはあと数回しか行けないか。幽斎師匠に挨拶に行って、翌日天水家に挨拶でギリギリだな。
「じゃあ、連絡取ってみる」
もちろん幽斎師匠にではなく、奥様のほうにだ。メールしたらすぐに返事が来て、お泊りOK。待ってるわ♡ だそうだ。ほかの人が見たら不倫メールに見られかねない内容だぞ。
沙羅にもメールを送っておこう。返事は夜かな。
「泊りOKで待ってるって」
「楽しみだな」
「相当な強者なんだろう?」
「日本では五本の指に入るって聞いている」
ほかの四人ってどんな人たちなんだろう? 会ってみたいな。
「じじいとどっちが強い?」
「氣を俺に譲る前なら、風師匠」
本気の幽斎師匠を見たことはないけど、氣がわかるようになった今ならわかる。氣を渡す前の風師匠のほうが間違いなく強い。
「でも、サムライなんだろう?」
「確かにご先祖様は侍だろうね」
「サムライは最強なんだろう?」
「戦国時代の侍はそうかもね」
世界最強の戦闘集団なんて言われていたらしいけど、それは集団での火縄銃ありきの話でだ。銃を使う戦いならヨーロッパの竜騎兵のほうが上だろうし、肉弾戦でならスパルタの重装歩兵のほうが強いんじゃないかな?
「それでも会うのが楽しみだ」
そうそう、シュウマイ工場でお土産にシュウマイを買って月読様に奉納しておいた。喜んでくれるかな? 大家さんの所の加奈ちゃんも好きなので送っておいた。でも、小太郎のほうがいいんだろうな。
「いい時間だった」
「心が折れた……ギブ」
ジミーは心身ともに充実。ジンは……駄目みたいだな。当分、やらないと言っている。間を空けても覚えられるだろうか?
沙羅からメールが入り、いつ来ても問題なし! と返事が来た。お土産は何にしよう。
夜はまた中華街に繰り出す。案の定、翌朝は二日酔い。懲りないな……風月を使ってやったけど。
昨日の続きでゲイブウルフ狩り。今日は少し難易度を上げると言って、二頭を相手に戦わせられている。二頭相手なので焦ってしまい並列思考を使っても気が散り、氣をギリギリの強さで使うのが難しい。ずっと駄目出しを喰らっている。まあ、レベルは上がってるけど。
そして残りの刀が心許ない。ふと、気づく。氣の量の訓練なら刀じゃなくてもいいんじゃね? と。
スケルトンから奪った錆びたシリーズが自由空間に死蔵されている。これを使おう。
「なんだその武器は?」
「氣の練習ならこいつで十分!」
錆びた剣に氣を纏い攻撃。折れたね。まだ氣が弱いということだ。
左手に打己棒を持ち、右手に錆びたシリーズを持つ。打己棒には十分に氣を纏わせけん制に使い、錆びたシリーズにギリギリになるように氣を纏わせ攻撃。いい感じだ。
それにしても、余裕がないと並列思考も宝の持ち腐れと気づかされた。これが気づけたことだけでも、いい収穫となった。
「器用だな」
「左手はちゃんと棒法を使ってるぞ」
「こんな器用なことができるのに、なんで氣の感覚は鈍いんだ?」
「アキだから……」
「にゃ~」
外野! ちょっとうるさいぞ! それに小太郎、肯定するな。
相手の氣を感じ、それよりほんの少しだけ氣を強くする。かといって、相手もずっと同じ氣の量を纏っているわけじゃない。こちらが攻撃しようとすれば、相手もそれを感じ、氣を強くしてくる。
イタチごっこのようだ。正直、イライラして強い氣でバサッとやってしまいたくなる。
「アキはいつも余裕を残して戦う癖がある」
そりゃあ、安全マージンを取るのは普通でしょう?
「普段の戦いならそれでいい」
「だけどな、こういう訓練の時にはそういう余裕は必要ない」
「せっかくの訓練なんだ、少しばかり緊張感をもたないとな。なので、武器を折るごとに俺たちに一杯ビールを奢ってもらおう」
「にゃ~」
まじ!? 俺たちってことは、一本折るごとに四杯奢るってこと? 小太郎もミルクちょうだいと便乗してるし……。
これはヤバい。まじで緊張してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます