156.同格
ゲイブウルフ三頭は明らかに連携した動きを見せている。まあ、それに対応するジミーたちも凄いけどね。
俺はそのゲイブウルフ一頭に夢月を使う。駄目だ効いていない。なら宵闇はどうだ! ゲイブウルフの目が輝きを失うが、まったく意に介していない。目以外で周りを感じ取れるようだ。ならば、猿猴捉月はどうだ! 駄目でした……。こいつら強いぞ。
「硬い!」
「このランクで防御でも氣を使うとはな」
「異世界モンスター、半端ねぇな。氣の使い方が上手いぞ」
「まあ、俺たちの相手じゃないけどな」
モンスターが氣を使うことに驚いたジミーたちだが、俺にとっては強敵でもジミーたちには格下。連携して攻撃してくるゲイブウルフを手玉に取って、あっという間に二頭を倒した。
「アキ、やれ!」
えっ、俺?
「氣を使うモンスターとは初めてだろう?」
「練習相手にはこいつはちょうどいい」
「今のアキと同等程度の強さだ」
はぁ、やるしかないか。
ジミーたちが倒したゲイブウルフを収納して、残ったゲイブウルフの前に立つ。
ゲイブウルフは俺よりジミーたちを気にしている。ジミーたちが俺の後ろに下がると、ニヤリと笑った気がした。舐められているな。
ならば行かせてもらおう。間合いを詰めようとすれば、ゲイブウルフも俺に向かって走り出す。すれ違い様、お互いに攻撃を繰りだすがゲイブウルフの爪は空を切り、俺の刀が奴の首を捉える。
ギャン! と鳴き声を上げるか、まったく斬れてない。まだ氣を使っていない状態で、俺の刀は毛の一本も斬ることができなかった。な、なんて、頑丈さだ。
ゲイブウルフもやっと、俺を同等の敵と認識したのか俺の周りを回り様子を窺っている。
来ないならこちらから行く。今度は刀に氣を纏う。ゲイブウルフが繰り出す前脚攻撃にカウンターで合わせ斬りつけたが、パキーンっと刀が折れた……。
氣を纏った前脚を氣を纏った刀で攻撃したが相殺。元々のゲイブウルフの防御力が刀の攻撃値を上回り耐久値が限界を超えたってことか?
刀が折れたことで勝機と見たかゲイブウルフの攻撃が激しくなる。折れた刀を棒と見立て棒法で防ぐ。
勝利に焦ったのかゲイブウルフが大きく飛び、上から俺を狙ってくる。上空からの攻撃は確かに勢いが乗る分攻撃力が上がるが、その代り逃げ道がなくなる。
俺は六陽掌で迎え撃つ。二手の陽春白雪と七手の陽関三畳の絶技は伊達じゃない!
攻撃してきた前脚を受け払い、空いた胴に掌打を打ち込む。手応えあり。この技は本当に防御無視だな。
ゲイブウルフはそのまま血を吐き絶命。収納する。
「モンスター如きに氣で負けるようでは、まだまだだな」
「氣と氣の戦いは、より強く氣を纏ったほうが勝つ」
「アキは氣を押えすぎだ」
「相手の氣を感じ、それより少しだけ強い氣を纏えるようにならないとな」
まだまだ修練不足。最初の一撃はゲイブウルフより氣が弱く、最後の一撃は無駄に強い氣で攻撃していると酷評された。
氣は無限じゃない。回復はすれど使いすぎれば氣は枯渇する。それを防ぐためにもギリギリを見極めないといけないということだ。大事なところで氣を使えなくなるのは愚の骨頂。そこら辺も今後の課題だな。
その後もジミーたちは一頭だけを残し俺の訓練にまわす。一度、刀の代わりにムーンスラッシュを使ったら使うのを禁止された。氣を使わなくてもゲイブウルフの首を落とせたからだ。
余談だが、ジミーたちがムーンスラッシュを使っているところを見て、欲しがってうるさかった。これは俺の秘密兵器なの! あげません。
そしたら、細身の剣なら使うから探してくれと言われる。探してはみるけど、高いよ? 向こうの金で買うと言っている。さすがスーパースターたち。まあ、四人ともブラックカード所持者だからな……。
所持する刀の数も少なくなってきた。
できれば、興亜一心刀より性能のいい刀を揃えたい。もう、工業刀は使い切り、今は興亜一心刀を使っている。
月読様に頼めばくれると思うけど、今の俺には手に余る代物だらけだろう。下手をすると国宝級が出てくると思う。奉納刀だから職人が自信を持っている業物だけだろうから。
結構な数のゲイブウルフを狩ったのでホクホク顔。刀で斬ってもダメージを与えられない防御力。いい防具になるだろう。
レイダーギルドにゲイブウルフを卸して元の世界に戻る。
ジミーとジンはまた自由空間に入る。ジミーは訓練をやる気満々。ジンはげんなり顔。一度に入っている時間は俺のときより長い。トータル時間でいえば数日で俺が自由空間スキルを覚えた時間とほぼ同じになる。
「じゃあ、頑張って」
「おう!」
「なにを頑張れと?」
「にゃ~」
もちろん、苦行をだ。
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