155.竜の大回廊六階層

 小太郎、ミュージアムの職員の方たちから猫缶を食べさせてもらってご満悦。面倒を見てもらうだけでなく猫缶までご馳走になりまして、ありがとうございますとお礼を言ったら、みんなの癒しになったから気にしないでと言われた。


 逆に連れて行かないでというような目線をみなさんからいただいた。どこの職場でも癒しを欲しているってことか。それにしても、小太郎は罪作りな奴だな。


 風師匠の屋敷に戻り、自由空間にいた二人を解放。


「いい訓練ができた」


「つ、つらい……」


 真逆の反応。


 ジミーは存分に訓練ができた模様。どんなに暴れても問題ない空間だからな。ジンは俺と同じで暇していたようで、途中から忘れられていないよなと不安に陥ったらしい。そこも同じだな。


「四時間しか経っていないのか?」


「まじかよ。CDを十枚以上聞いたぞ?」


 そうなんだよな。自由空間の時間の流れはこっちより速いんだ。感覚的には半日近く中にいた感じだろう。何もない空間だから孤独感、疎外感に襲われる。その中で黙々と剣の修行ができるジミーが普通じゃないと思う。


 夕食を食べた後、ここに来て初めてみんなと飲みに行った。小太郎は風師匠と居残り。ここに来てから風師匠は小太郎をジミーたち以上に可愛がっている。猫可愛がりってやつだ。小太郎も風師匠に抱っこされるのは嫌じゃないので問題ない。


 中華街に繰り出しお店を梯子。最後にはお姉さんたちがいるお店にまで連れて行かれた。ジミーたちはある意味ここはホームグランド。なので有名人と顔がバレているので大変だった……。



「「「「頭痛てぇ……」」」」


「にゃ~」


 竜の回廊の地下四階層で四人が唸っている。


 そりゃそうだ。あれだけ飲めば二日酔いになるってもんだ。これだけは体を鍛えようが、氣を鍛えようがどうしようもない。


 四人に風月をかける。ちなみに俺は既に風月で回復済み。


「あっ、気分がよくなった」


「回復系のアビリティか?」


「アキは多才だな」


「アキというより小太郎が凄いのか?」


「にゃ~」


 小太郎くん違うでしょう。月読様が凄いんだからな。


「今日は地下六階層に行ってみよう」


「六階層のモンスターは?」


「知らない。俺とサラにはまだ早いと言われたから」


「情報なしか。それはそれで面白い!」


「腕が鳴る!」


「稼げるんだろう? 俺はやるぜ!」


「にゃ~」


 みなさんやる気十分。地下六下層のモンスターは防具のいい素材になるだろうか? 楽しみだ。


 その前に、はにわくん召喚!


「はにゃ~」


「なんだこいつ!?」


「アキが呼んだのか!?」


「間の抜けた顔だな……」


「土偶?」


 残念! 埴輪です。


 俺の眷属と紹介。マッピングに専念するので小太郎と一緒に俺の護衛をしてもらう。


「これ強いのか?」


「打たれ弱いところはあるけど、パワーはあるし、何といっても毒や酸などの異常状態に強い。頼もしい仲間だね」


「はにゃ~」


「き、気が抜ける声だな……」


「強けりゃいいんじゃね?」


「お手並み拝見だな」


「はにゃ~!」


 地下に下りる道を探し歩き出す。すぐにワーカーアントと遭遇。


「はにゃ~」


 ドタドタとワーカーアントに向かって行く。俺の護衛を頼んだはずだよね? はにわくん、ワーカーアントの頭に六角棒を振り下ろす。ワーカアントの頭がグチャっと潰れた。おっ、レベルが上がったな。


 それより はにわくん強くなってる? ということは、俺が強くなっているということだ。


「なんだこいつ強いじゃないか」


「はにゃ~」


 はにわくん、調子に乗ってワーカーアントの突進を受け止める。ちゃんと突進を受け止めている。確実に強くなている。


 でも、君は俺の護衛だぞ?


「にゃ~」


 その後もはにわくんは攻撃に参加。完全に護衛の件を忘れている。


「アキも苦労してるんだな」


 見かねたジンがはにわくんの代わりに護衛をしてくれる。はははは……笑えねぇ。


 なんとか昼前に地下六階に続く道を見つけた。早いが昼飯を食べてから六階層に挑戦することにした。探索を開始すれば、すぐにモンスターに遭遇。三頭の犬型のモンスターだ。


「犬? いや、狼か?」


 残月で見るとゲイブウルフと出ているから狼なのだろう。凛々しい顔ではなく、もの凄く凶悪な顔をしている。目力が凄いな。凶悪な顔のわりに目は冷静そのもの。どう狩ろうかと考えている目だ。


 三頭がゆっくりと近づいて来る。はにわくんが突撃。先頭のゲイブウルフに攻撃をするが、素早く躱してはにわくんに向かってジャンプ。ゲイブウルフの動きに惑わされるはにわくんの頭に、ゲイブウルフの前脚が振るわれる。


 ガシャーンっとはにわくんの頭が砕ける。うそーん……。


「気をつけろ! こいつ氣を使ってるぞ!」


 確かに一瞬だが前脚に氣を感じた。氣は万物に宿ると言われていたが、モンスターがそれを使いこなすとは聞いていない。はにわくんが一撃で沈められるなんて……。


「面白い! みんな行くぞ!」


「「「おう!」」」


 あー、俺は見学ね。取りあえず、バタバタ藻掻いてるはにわくんを戻す。ゲイブウルフははにわくんには荷が重いようだ。


 さて、俺はどうしようか?






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