152.実戦訓練
ジミーたちの剣の修行も基礎は学べたようで、後は実戦で鍛えよということらしい。
大学が始まるまで、あと十日ある。なので、実戦を行なおう、竜の大回廊で。そう、ジミーたちを連れてだ。
「せっかく身につけた技、実戦したくない?」
「したいが、俺たちはこの国の
ジンは日本国籍も持っているので
「この国じゃないから問題ない!」
怪訝な顔をしているが、装備を整えて周りからこちらを窺えない裏庭に集合。
「じゃあ、行こう」
「にゃ~」
転移した場所は竜の大回廊の地下四階層。
「転移か!? ここは?」
四人とも周りをキョロキョロと観察。
「ようこそ、異世界迷宮竜の大回廊へ」
「異世界!?」
「
「「まじかよ!?」」
なので、説明。ここと大宮駐屯地の
「じゃあ、アキは地下五十階層まで行ったのか?」
「ジンくん。いい質問だね。行ったけど、行ってない!」
「なんで、ハイテンションで否定するんだ?」
「さあ?」
「アキだから?」
「にゃ~」
なんで、小太郎が相づちを打つ!?
「では、説明しよう! 異世界人に連れて来てもらったから!」
「「「「なるほど~」」」」
ここは地下四階層で地下五十階層は、おそらくジミーたちでも無理だと説明。全盛期の風師匠でも厳しいのではないだろうか?
「そこまでなのか……」
「異世界、半端ねぇ……」
「その異世界人凄い達人なのか?」
「教えを乞いたいな」
勘違いしているようなので、それも説明。会ったのは行商人で隠形の達人。代わりに戦闘能力は高くないと。
「隠形の達人か、それはそれで学んでみたい」
「で、ここに連れて来たんだ、楽しませてくれるんだよな」
「俺たちは強いぜ」
「今回習得した技を実戦で使ってみたい」
この階層のモンスターは武器持ちのオーガだ。楽しんでもらえると思う。できれば、この下の階層のアント系とも戦ってもらいたい。ジミーたち強者がどういった戦い方をするのか見てみたい。
「この階層のモンスターは武器を持った人型。ジミーたちには物足りないかもしれないけど、戦い放題だ」
「いいねぇ」
「おっ、さっそくお出ましだぞ」
「誰が先に行く?」
「俺が行こう」
先鋒はニッキー。
「でかいな……」
「パワーはあるけど、スピードはない」
「了解っと」
オーガがニッキーに仕掛ける。オーガの武器は巨大なメイス。当たれば怪我ではすまない。直剣で受けることもできないし、受け流すのも難しいだろう。
持つ武器は違えど、刀で戦う俺と同じ状況。ニッキーの戦い方を参考にしたい。
オーガのメイスに直剣が振れると、直剣がメイスに吸い付いたように軌道を誘導するかのような動きをする。オーガが驚いた表情しているので、ニッキーが操っているのだろう。
ニッキーの操る長剣がまるで蛇のようにメイスを移動し、オーガの手首に喰らいつく。
手首を貫かれ武器を落とすオーガにニッキーが直剣を一閃。その距離はまったくニッキーの間合いじゃない。なのにオーガの首が落ちた……。
「まあ。こんなところか」
俺は何が起きたか全くわからない。
「わかってないようだな。ちゃんと氣を感じていたか?」
いや、ニッキーの戦いに集中していたので、氣を気にしていなかった。
「いついかなる時でも気を抜くな。自然体で氣を感じ取れるようになるんだ。次はアレックだ。ちゃんと感じろよ」
オーガが現れとアレックが前に出る。アレックが飛び出しオーガに仕掛ける。迎え撃つオーガの武器を持つ手を回し蹴りで払い、直剣を振るう。直剣の間合いじゃないのに、オーガの胸がざっくりと斬られ血を流す。
「硬てぇなこいつ!」
何が起きているのかさっぱり。こういう時こそ並列思考だ。動きを見逃さないように注視し、氣も一緒に探る。
アレックは氣を直剣にしか纏わせていない。ということは、あれはアレックの素の動きということだ。凄いな……。
そして少しだけわかった。アレックの直剣に纏わせている氣が直剣より伸びていることに。その伸びた氣でオーガを斬っているんだ。
アレックがオーガから距離を取り、ニッキーと同じようにオーガに向かって一閃。首が落ちた。
「わかったか」
「なんとなく。氣を伸ばしたり、飛ばしたように感じた」
「あれは剣氣だ。己の氣を剣と化す技だ。剣の長さを超えた攻撃や、剣から斬撃を飛ばす。絶技の部類だが剣からではなく指からでさえ剣氣を出せる技もある」
「指を剣の代わりにできるってこと?」
「
氣弾はないのに剣にして飛ばす氣はあるんだ。不思議だ。でも、飛ぶ斬撃は浪漫だ!
残りのジミーとジンもオーガと戦い圧勝。正直、参考にならない。ジミーたちにとってオーガは格下なので、本気を出すまでもない。たんに修行の成果を試しているにすぎない。
この四人は本当に強いのだ。
この四人に追いつく日は来るのだろうか?
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