145.助っ人その一
沙羅が満足したので撤収。沙羅の部屋でお茶を飲んでるとメールが入っていることに気づいた。ショウさんからだ。
明日、貴子様が話をしたいということで問題ないかと来ている。沙羅は明日は予定があるのでパス。メールで俺一人だけどいいか確認を取ると問題なく、朝にショウさんが迎えに来てくれることになった。
「癒されるわぁ~」
早朝から小太郎をモフモフ、チュッチュッと俺は完全に空気状態だ。
「あのう。今日呼ばれた件なんですけどぉ?」
「はぁ……至福のひと時を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえって言葉知らないの?」
「造語までは俺の記憶の範疇ではありません」
「あら、つれないわねぇ。コタちゃんのご主人様は冷たいでちゅねぇ」
「にゃ~」
そこは、返事しなくてえぇちゅうねん! 小太郎くん。
「財務省の
「いつ?」
「今日の午後三時。財務省でよ」
まじかよ。俺が今日断っていたらどうするつもりだったんだ。
「それは正式な表の会合なんですよね?」
「いえ、今後の調整を兼ねた顔合わせという主旨のようよ」
「あまりにも唐突ですね。相手の本当の主旨が見え隠れしてますが?」
「わかる?」
「馬鹿じゃないですから」
おそらく、高圧的に出て威圧と勢いで、俺からすべての権限を奪うつもりだろう。
「こちらの助っ人は?」
「もちろん私が一緒に行くわよ」
「ほかには?」
「いないわね」
まじかよ。行くってことは相手の陣地に乗り込むってことことだ。
「断れるんですか?」
「無理ね」
考えろ。貴子様はおそらく役に立たない。だからこそ、早めに俺を呼んで考える時間を作ったんだ。というか。昨日のうちに教えろ! ってんだ!
残り時間は七時間。どうする?
「助っ人を呼びます」
「誰に?」
「教えません。交通費宿泊料等は経費で落としますからね」
「いいわよ。宛名は特対室でね」
言質は取った。取りあえずは電話だ。
それから一時間後なんとか助っ人二人と連絡は取れた。どちらも来てくれることになった。これで、政治家対策はできたと思う。
「連絡が取れました。一人はこちらに、一人は向こうで落ち合うことになりました」
「誰を呼んだの?」
「会えばわかりますよ。美味い昼飯を用意しとけだそうです」
「そう。わかった気がする。よく承諾したわね」
「二億円が消えましたよ」
「
「マジです。国も馬鹿なことをしたもんです。みすみす二億を捨てたんですから」
「ああ、そういうことね」
現金じゃない。魔剣を一本を献上することで手を打ってもらった。剣一本なら安いものだ。
助っ人到着までに貴子様と打ち合わせという名の雑談。
向こうの世界側の交渉役が決まったことなどを話しておく。相手はエルフで長寿なので長い付き合いになることも。もちろん、こちらの国側が誠意を見せるならだともね。
さて、昼過ぎに待ち人来たる
「十六夜! うちの賢夫人を篭絡するとはふてぇ野郎だ!」
「篭絡なんてしてません。幽斎師匠の奥方とはSNS友達なのでお願いしただけです」
「SNS友達ってよぅ……」
「小太郎の写真が欲しいとお願いされ、代わりに以蔵くんの写真を送ってきますよ?」
「にゃ~」
俺のスマホの待ち受けは豆柴の以蔵くんになっている。
「はあ……それより飯だ、飯! 期待してるぜ、貴子様よ!」
「はぁ……瑞祥本店からお弁当を取っています。お楽しみください。河上先生」
瑞祥と言えば老舗料亭でも一見さんお断りのお店だ。これは期待できる。
お弁当と呼んでいいのか、困るほどの豪華な昼食が始まる。小太郎は俺と貴子様からお刺身をもらって食べている。
「で、俺を呼んだ理由はなんだ?」
美味しい昼食を食べたながら、幽斎師匠に事情を説明。
「十六夜は馬鹿か大物かのどちらかと思っていたが、馬鹿は馬鹿でも大馬鹿かよ。まさか異世界とはな」
酷い言い方だ。奥さんにチクるぞ。
「それにしても、魂石が一つ五十万か……」
「掛け値なしですよ」
「だとしても、だいぶ足元見られていやがったんだな。取り決めをした当時の政府の役人が無能だったのか、相手が上手だったのか。だとしてもだ、それをずっとそのままにしてきた今の政治家は無能の一言だな」
ばつが悪そうな顔をしている貴子様。他人ごとではないからな。
「それだけの価値になるなら、もっといい武器、いい防具を買えたろうに……死なずに済んだ命がどれほどあることやら」
ますます、ばつが悪そうな顔をしている貴子様。確かにそのとおりだな。間違いなく今の倍の値段で買い取れたはずだ。
倍の収入になれば、その時使っていた武器防具よりランクのいいものが買えたはず。
今からの話し合いでのいい口撃材料になりそうだ。
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