144.ボス再戦

 反対側のボス部屋の前の扉に移動。


 沙羅が竜牙兵を召喚。俺の竜牙兵と違い槍を持っていて、両腕に丸型のアームシールドを着けている。


「同じじゃないんだな」


「でも、格好いいよ! 突撃ぃ! って感じかな?」


「いっぱい集めると面白いかもにゃ」


 理力の補充が大変だけどな。


 中に入る前に、全回の戦闘内容と出てくる怪異モンスターを教えておく。


 扉を開け中に全員が入ると扉が閉まる。向こう側に魔法陣が浮かびボスが登場。


 あれ? なんか多くない?


 前回はゴブリンリーダーにレッドゴブリン、ゴブリンキャップ、ブルータルゴブリンが二対ずつだったのに、ゴブリンリーダー以外が四体ずつに増えている。


 これは、ボス部屋に入った人数で相手が変わるのか?


「アキくん、話が違うよ?」


 仕方がない、はにわくんと俺の竜牙兵も参戦させる。これで戦力は二倍だ。竜牙兵が二体は戦力過多な気もするけど。


 戦闘が始まったので、俺は入って来た扉を開けてみる。


「お花摘みかにゃ?」


 違うわ!


「もしものときに撤退できるかの確認だよ」


「あきっちは転移すればいいんじゃないかにゃ?」


 いや、それはそうなんだけどね……。


「俺がいない時というか、将来的なことを考えて確認しているんだよ」


「この迷宮をあきっちたち以外に、開放するのかにゃ?」


「すぐじゃないけどね。こっちの世界に迷宮ってほとんどないから売りになると思ってね」


「入場料を取るんだにゃ! さすが守銭奴にゃ!」


 誰が取るか! 誰が守銭奴だ! ちょっとケチなだけだ!


「こっちの世界ではレイダーみたいな人のことを探究者シーカーって呼ぶんだけど、なり手が少ないんだ。マーブルもわかっていると思うけど、異界アンダーワールドに入らないと怪異モンスターと出会うことはまずない。怪異モンスターというものを知らない人がほとんどなんだ」


「じゃあ、にゃんで異界アンダーワールドに入るにゃ?」


「放っておくと異界アンダーワールドから怪異モンスターが溢れ出てくるからだよ」


「迷宮のモンスターリベリオンみたいなもんだにゃ」


 リベリオン? 反乱? ラノベでいうモンスターのスタンピードのことか? 


「モンスターリベリオンが起きたら、どうしているんだ?」


「なにもしないにゃ。それに、滅多に起きないにゃ。モンスターリベリオンが起きるのは迷宮の寿命が尽きた時に起こるにゃ」


 何かが俺の知識と違う……説明、プリーズ!


 ラノベのようなモンスターのスタンピードは起きないらしい。そもそも、迷宮のモンスターは迷宮の外に出ることができないらしい。


 唯一、出てくるのが、モンスターリベリオン。迷宮の寿命と考えられていて、迷宮がなくなり中にいたモンスターだけが地上に残される現象。


 別に町を襲うこともなく、最下層の強力なモンスターが現れることで生態系が少し変わるくらいなんだそうだ。


 迷宮のモンスターが迷宮に対して反乱を起こし自由になるという意味らしいね。


 異界アンダーワールドとのこととはちょっと違うかな。異界アンダーワールドの場合は間引きすれば防げるから。


「まあ、そういうわけで、わざわざ命をかけて戦おうなんて人は少ないんだよ」


「あきっちはなんでやってるにゃ?」


「お金のため」


「守銭奴だにゃ。さらっちは……聞かなくてもわかるにゃ」


 目の前の光景を見ていればわかる。嬉々として魔剣を振るう姿。戦うのが好きだからだ。


 戦況も完全に沙羅たちに傾いている。残すはゴブリンリーダーだけになっている。そろそろ、ゴブリンリーダーの変身時間かな?


 と思っていたのに、何事もなくゴブリンリーダーが討伐されてしまった……あれ? 変身しないの?


 ゴブリンリーダーが消えると宝箱が残っている。これは同じだ。


 沙羅が宝箱を開けようとしたので止める。


 宝箱 鍵なし 罠あり 階層主討伐報酬


 やはり、罠があった。


 今回もはにわくんに開けてもらう。カツンっとはにわくんの頭に小さい矢が当たり跳ね返る。


「はにゃ~?」


「罠なんてあるんだ……報酬なのに、いやらしいわね」


 俺も、そう思った。


 宝箱の中身は金貨類に金ぴかの湾曲した短剣ジャンビーヤだ。成金みたいで趣味が悪い。金貨類の量も少ない。


「なあ、マーブル。初回討伐報酬ってのはあるのか?」


「なんにゃそれ?」


 ないようだな。ボスの変化もなかった。数は多かったが、そのせいか簡単にボス戦が終わってしまった。


 竜牙兵二体というのも、大きな要因とも考えられるけどな。


 敵が強くて報酬がいいか、敵が弱く報酬がいまいちか、俺的には報酬がいいほうがいいな。


 並列思考は凄く使い勝手がいい。


 たまたま、いいスキルスクロールを手に入れただけなのかもしれないけどな。






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