138.ボス部屋

 さて、昨日手に入れた竜牙を使ってみよう。どうすればいいんだ? 理力を補充とか書いてあったよな。


 手に持った竜牙に理力を流してみると、自分の意志とは関係なく理力が持っていかれる。おいおい、どれだけ持っていく気だよ。


 感覚でおよそ俺の全体の理力の半分を持っていかれた。とんでもないな。この後、どうするんだ?


 出てこい! 出てこない。竜牙兵! 出てこない。召喚! 地面に魔法陣が出てきて、地面から何かが浮き上がってくる。


 見た感じ鎧を着けたスケルトンぽい。違うのは骨の太さと顔がドラゴンの顔の骨っぽいところ。骨は頑丈そうで黒光りしている。顔は骨のドラゴンが兜を被っている。


 武器防具はすべて金属製のようだ。ヒーターシールドとバスターソードを持っている。強そうだ。いや、レイダー上級クラスなら強いのだろう。


 レッドゴブリンとブルータルゴブリンが現れたので竜牙兵だけで相手をさせる。


「やれ! 竜牙兵ドラゴン・トゥース・ウォリアー!」


 金属鎧を身につけているにも関わらず、音もなく移動してレッドゴブリンを何事もないように突き刺す。隙を突いて攻撃してきたブルータルゴブリンの攻撃を盾で逆に押し戻し、態勢を崩させて斬り伏せる。シールドバッシュか!? こいつ、できる!


 できるなんてもんじゃない。こいつ本当に強い! 間違いなく戦闘のプロだ! 戦い慣れしている!


 二十分という時間制限はあるものの、強力な助っ人ゲットだ。沙羅の竜牙もあるから相当な戦力アップになる。


 その後、二十分目一杯頑張ってもらった。ゴブリンキャップの矢も簡単に防いでいるので、居場所を把握しているようだ。やるな。


 二十分経つと静かに消えていった。


 今度はムーンスラッシュを試したい。片刃の半曲刀、護拳が付いているのでサーベルやセイバーなんて呼ばれる剣だ。刀とよく似ている。


 ブルータルゴブリンとレッドゴブリンが出て来たのでブルータルゴブリンをはにわくんに任せて、俺はレッドゴブリンと対峙する。


 氣は使わず、武器の性能だけを試してみる。スパッと斬れたね。今日は月齢で下弦の月。月の満ち欠けで性能が変わるらしいがどのくらい違ってくるのだろうか?


 この剣は封印だ。使うとしても竜の大回廊で苦戦したときだけだな。あまりにも斬れ味が良すぎて、訓練にならない。まだまだ、俺の技量では工業刀で十分だ。


 そうこうしていると、地下十階層に下りる道を見つけた。今日はついてるな。


 どうする? おりるか? 時間は十分にある。覗くだけ覗いてみるか。


 昼休憩を挟んで地下十階層の探索開始。と意気込んで向かったが一本道だ。怪異モンスターも出てこない。


 もしかしてこの階層で終わりか? 迷宮拡張もここまでだったのか? 上の階層は今でも拡張し続けているのにな。


 突き当りに着いた。大きな扉があるんだが……。開けろということか?


 まてよ。これってボス部屋か!?


 ここは十階層。キリのいい階層だ。ゲームなら間違いなくボス部屋だろう。


 どうする? 沙羅がいないがやるか?


 理力はほぼ回復している。竜牙に補充してもボス戦の間のアビリティーくらいなら事足りるだろう。


 竜牙に理力を補充しながら考える。ボス戦だとしても今まで出てきた怪異モンスターを顧みれば、そこまで脅威となるボスではないと思う。


 問題は沙羅だ。絶対に怒る。あの軍神がこんなイベントを逃して何も言わないわけがない。


 うーん、やろう。やはり興味に勝てない。それに、倒しても時間が経てば復活するかもしれない。出ないときは出ないときで謝ろう。


 小太郎、はにわくんに説明。お馬さんは……一度戻ってもらおう。リヤカーは自由空間にしまった。


「よし、行くぞ!」


「にゃ~」


「はにゃ~」



 扉を押し開け……あ、開かない。


「にゃ~」


 なるほど、扉を引いてみた。開いたね……。


 部屋の中は広い空間になっていて向こう側に扉がある。怪異モンスターはいない。


 あれ? 肩透かしか?


 部屋の中に入ると後ろの扉が閉まった。罠だったのか!?


 向こうの扉近くに魔法陣が空中に現れその下に怪異モンスターが現れた。無駄に凝った演出だ。


 中央にでかいゴブリン。左右にレッドゴブリン、ゴブリンキャップ、ブルータルゴブリンがいる。


 ゴブリンリーダー ゴブリン族のリーダー。高い戦闘技術と高い指揮能力を持つ。強さはゴブリン二十体分


 むっ、こいつ侮れない強さだ。


 向こうがこちらを認識したようで、ゴブリンリーダーが指示を出し動き出す。レッドゴブリンとブルータルゴブリンが前進してきて、ゴブリンキャップが一歩後ろに下がり弓を構える。


 ちっ、統率されるとゴブリンでも厄介だ。無暗に突っ込んでこないで、連携した動きになっている。数でも不利な状況だ。


「竜牙兵、召喚。月兎、召喚」


 竜牙兵とミニうさぎ師匠が現れる。


「まずは前の四体! 小太郎はゴブリンキャップを狙え!」


 はにわくんたちが走り出し、ゴブリンキャップ一体が火に包まれる。


「宵闇」


 残り一体のゴブリンキャップを一時的に無力化。


 はにわくんと竜牙兵が怪異モンスターに斬りつけ、ミニうさぎ師匠がゴブリンリーダーにドロップキック。


 ミニうさぎ師匠のドロップキックは防がれるが、追加効果のノックバックが発生。ゴブリンリーダーがたたらを踏み時間稼ぎ成功! ニッカっとサムズアップして消えていくミニうさぎ師匠。男前だ! 性別は不明だが……。


 その間にはにわくんと竜牙兵が、レッドゴブリンとブルータルゴブリンを倒し終わりゴブリンリーダーに向かう。


 俺は弓で常闇が効いてウロウロしているゴブリンキャップに止めを刺す。小太郎のほうも倒し終ったようだ。


 ここまでは順調だな。





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