137.逆異世界観光

「こ、ここは?」


「ようこそ、異世界にゃ!」


「 !? 」


 天水家の倉庫に転移した。まずは着替えだ。俺たちは普段着に着替える。アディールさんは……。


「兄さんの服を借りてくる」


 アディールさん、俺より身長が高いので俺の服では少し小さい。沙羅のお兄さんの服なら身長は問題ないだろう。


 沙羅の持ってきた服に着替えたアディールさん。ぶかぶかだな。自衛隊の鍛え抜かれた体のお兄さんと華奢なエルフのアディールさんでは仕方がない。


「もしや、サラさんは異世界人ですか?」


「そうだよ。アキくんもね」


「アキさんも……」


 アディールさん、着替えも終わり懐から指輪を出して嵌めると、エルフ耳が俺たちと同じに変わる。ほかの見た目は変わっていない。無駄にイケメンの外国人になった……。


 天水家の車を出してもらい。街中をドライブすることにした。


「なぜ、マーブルさんは猫になっているのですか?」


「こっちの世界にケット・シーはいないの。伝承では存在しているから、昔は意外と簡単に行き来できたのかもしれないわね」


 そういう考え方もあるな。怪異モンスターが妖怪の元になってるくらいだ。十分にあり得る。


「こ、これは!?」


 車に乗ってからが大変だった。見るものすべてが気になるのはわかるが、どこの未開人だ! って感じだ。


 天水家の運転手さんが微笑ましくだが。ちらちらとこちらを窺っている。不思議に思っているんだろうな。


 肉も魚も食べるということなので、いつかの料亭と考えたが、天ぷらの専門店に決め沙羅が予約を入れた。


 クレストの町は内陸部に位置するので、海産物はなかなか流通していない。楽しんでもらえればうれしいとの考えだ。


 海産物の天ぷらといえば、海老、車海老だ。あとはきすだよな。小太郎も大好物だ。目の前で揚げてもらい熱々を食べる。至福だ……。


「これは……まさか!? エルフ酒!」


「この国はお米が主食なので、お酒もアディールさんのお口にあうと思いますよ」


 わかっていたけど、敢えて言わなかった。ちょっとしたサプライズだ。


 小太郎とマーブルは天ぷらの猫まんま。いや、天丼だな。ハムハムと満足顔で食べている。特上天丼だからな……。


 夕食を終えて天水家に戻り、向こうの世界に転移。もう、こちらは夜の帳に包まれている。


「時間の進みが違う?」


 向こうはまだ夕方だったから、気づくわな。


「そうみたいです。こちらの世界のほうが少し早く時が進むようです」


「それにしても異世界……夢のようでした」


「これからいくらでも行く機会があるにゃ!」


 そう、面倒な交渉事がアディールさんを待っているぞ! その時に好きなだけ異世界を堪能してください。問題は移動方法だな。


「マーブル、転移スキルって珍しいのか?」


「妖精族は意外と持ってるにゃ。人族はあまり持ってないかにゃ~」


「エルフ族も転移スキルを持つものは少ないですね」


 そうなんだ。となると、マーブルの一族ないし信用できる妖精族を、何人か移動要因として雇う必要があるな。


「移動のための人材が欲しいな。異世界だけでなく、この世界すべてを相手にするんだから」


「まずはプッカを向こうに連れて行ってマーキングさせるにゃ」


 そうか、プッカもマーキング持ちか。ケット・シー固有スキルなのかもな。ま、あとは追々だな。


 こちらの準備は二か月後には整うことになる。あとは貴子様と政府がどう出るかだ。一応、こちらの準備が整うことを伝えておこう。



 日曜、喫茶店ギルドに行くと、弓が届いていた。バラバラだ、英語の説明書を見ながら道具を使って組み立てていく。


 その間、小太郎は優雅に女性陣からブラッシングとマッサージを受けていた。報酬はほっぺにチューらしい。羨ましい限りだ。


 組立終わり弓を引いてみる。


 コンパウンドボウ 品質 良 刺突特性+140 耐久700/700


 引けなくはないがきついな。性能は文句なくいいはず。早く使ってみたい。


 鏃は形状が違う狩猟用のブロードヘッドを五種類百ピースセットだ。ねじ式なので取替が自由だ。刺さった時にダメージを多く与えるように凶悪な形の物もあるが、怪異モンスターに刺さるのかが問題だ。刺さる接地面が少ないほど刺さりやすいだろうからな。大きな刃の付いた鏃はどうなんだろう? 要検証だな。


 前回の続き、地下九階層の進む。レッドゴブリンと初見のゴブリンが現れた。


 ブルータルゴブリン 殺しを楽しむ残忍なゴブリン。武器に毒が仕込んである。ゴブリン三体分の強さ。


 強さはたいしたことはないが、武器に毒があるのは注意だな。


 ブルータルゴブリンは剣と短剣を持っている。こやつ、二刀流か!?


 毒持ちなので俺は近づかない。はにわくんに任せる。弓に矢を番え狙う。意外と簡単に引くことができた。異界アンダーワールドでのレベルの恩恵だ。


 シュッと風切り音が鳴り、レッドゴブリンの胸に矢が吸い込まれる。


 ここで驚きの光景が!?


 なんと、ブルータルゴブリンが矢の刺さったレッドゴブリンを、はにわくん目掛け蹴り飛ばす!


 はにわくんにレッドゴブリンがもたれかかった瞬間を狙い、攻撃を繰り出すブルータルゴブリン。剣先がはにわくんの腕を掠る。


 ニタァ~といやらしい笑みを浮かべたブルータルゴブリン。その後、はにわくんにボコボコにされたね。勝ったとでも思ったんだろうな。はにわくんには効かないのに。


 それにしても、レッドゴブリンが弓の一撃で沈んだのでかなりの攻撃力だ。十分に使える武器だ。


 ブルータルゴブリンも毒の武器に気をつければ問題ない。それに、アビリティーを使わなくても問題なく倒せる相手だ。所詮、ゴブリンか。


 まあ、理力が温存できて助かる。






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