135.装備強化

 ただし、もちろんただではない。それは、侍従長さんも俺も理解して上でのこと。ここで、用意していたものが役に立つ。


「偶然、目に留まる逸品があり、手に入れた品でございます。陛下に気にいってもらえれば幸いです。こちらはよろしければ侍従長殿に」


 葉巻セット二つを侍従長さんに差し出す。


「これは……」


 見た目で質の違いがわかるので、ランクの低いセットから葉巻を一本取り出し、香を確かめる侍従長さん。どうやら侍従長さんも嗜むようだ。


「火をつけても?」


「どうぞ」


 さすが普段から嗜んでいるようで、流れるような手さばきで葉巻に火をつけ楽しむ。


 紫煙が舞い葉巻のいい香りが周りに漂う。侍従長さん、これ以上ないほどの至福顔。


「葉巻自体も言うに及ばずですが、この道具もなかなかの逸品。陛下もお喜びになられるでしょう」


 ふふふ……勝ったな。いろいろな意味でね。これでマーブル商会は安泰だ。



 帰りに王都の商業ギルド、武器屋、レイダーギルドに寄り、依頼状況を確かめる。


 炎の魔剣 品質 最良 斬撃特性+160 突き特性+200 打撃特性+120 理力特性+80 火炎属性+80 耐久1800/1800 火炎弾


 ムーンスラッシュ(半曲刀) 品質 最良 斬撃特性+250 理力特性+150  耐久2500/2500 月光 月の満ち欠けで能力変化


 アラクネのローブ 品質 最良 耐久2300/2300 防御+280 理力耐性+120 魅了耐性+160 毒耐性+140


 竜牙 竜牙兵を召喚できる。召喚時間二十分。理力を補充すれば再召喚可。


 炎の魔剣は二本、竜牙も二本、ほかに奇人コーエンの魔導書が二冊手に入った。


 炎の魔剣は以前手に入れたものより性能が落ちた品だ。


 アラクネのローブと竜牙は商業ギルドが王都で行われたオークションで競り落とした品。


 どちらも目が飛び出るほどの金額。なのだが、それに見合う性能だ。アラクネのローブは布なのに、今まで見た防具と比べても飛び抜けている。なんといっても欠点がない。


 竜牙はドラゴンの中でもハイクラスのドラゴンの牙。倒して手に入れた物ではなく、抜け落ちた牙を運よく見つけたものらしい。相当レア物らしい。


 ちなみに、ドラゴンの牙は生え変わるそうだ。鮫か!?


 使用すると一定の間、味方として戦ってくれる。竜牙兵、ファンタジーではお馴染みのドラゴン・トゥース・ウォリアーと呼ばれる謎造体を召喚できる。スパルトイなんて呼ばれることもあるな。


 竜牙兵が破壊されても竜牙が壊れない限り、理力を補充すれば何度も召喚できるエコ仕様。竜牙兵は上級レイダークラスらしく、理力系の攻撃がまったく効かない凄い奴なんだそうだ。


 よく競り落としたな商業ギルド。褒めて遣わす。


 アラクネのローブは沙羅に渡した。鎧はもう必要ない。ローブのみで十分。ひらひらとするのが嫌ということで腰に剣帯を着け絞っている。


 もう、見た目は軍神じゃなくなったけど、氷結の魔剣とアラクネのローブでとんでもない化け物になった気がする……。


 それにしても、防具がローブだけになったので、沙羅のナイスバディがもろ分かり。服は着ているが、なんともエロい……。


「あきっち、その目は駄目にゃ……」


「えっち!」


「……」


 竜牙は一本ずつ持つことにした。明日検証してみよう。


 ムーンスラッシュは俺が預かる。片刃の半曲刀なので刀の代わりになるかも。名前に月が付いているのも気に入っている。



 クレストの町に戻りもう一つの検証を行う。そう酒だ。酒といえばドワーフ。職人ギルドに行くしかない!


「まだ、全然出来てねぇぞ?」


「そちらの用事で来たわけじゃありません」


「じゃあ、また違う依頼か?」


 それも違う。これ以上ブラックな職場環境にするつもりはない。たぶん……。


「今日はみなさんを労いに来ました。お酒は好きですか?」


「酒だとぉ! 誰に言ってやがる! 俺たちドワーフにとって酒は命の水だ!」


 ギ、ギルド長……顔が近いよ。


「マーブル商会で手に入れたお酒にゃ。試飲して意見が聞きたいにゃ」


「よし! 任せろ! 野郎ども店じまいだ! みんなを呼べ! 宴会の準備をしろ!」


「「「「へいっ!」」」」


 いいのか? まだ昼前だぞ? それに宴会?


 できれば竜の大回廊に行きたかったんだけど……。


「もう、無理にゃ」


「もう、無理ね」


「にゃ~」


 あれよあれよと、ギルドの中庭に宴会場がセッティングされて、近くのいくつかの食堂から料理が続々と運ばれ、酒屋から樽ごと酒が運ばれてきている。


 ギルド職員だけではなく、周りの工房の職人も集まってくる。老若男女問わずだ。沙羅とマーブルが小太郎を連れ、おこちゃまたちたちに駄菓子を配り始めた。


 俺はテーブルを一つ借りて持ってきた酒を並べる。取りあえず、一種類ずつ。


 酔っ払う前に一通り試飲をしてもらおう。酒のことなら任せろと言うギルド長と、ドワーフ族の世話役の長老が試飲して評価してくれることになった。


 俺たちを囲うようにドワーフが集まる。女性なら嬉しいが、むさい男どもに囲まれても嬉しくない。これも商売のためと諦め、試飲会開始だ。






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