125.防具作製依頼

 次の日は午前中は異世界言語の勉強に充て、午後からソールリシア王国に行き防具の注文をすることになった。


 お昼に出前のお寿司を食べたが美味かった……。



「たっだいまにゃ~!」


「いらっしゃいませ。マーブル商会へようこそ」


 ぱっちょんのお店の隣をマーブル商会が借りたというので来ている。


 挨拶してくれた美人の女性がカウンターにいる。エルフのようだ。


 痛いです。沙羅さん。腕をつねらないでください……。


「うちがそのマーブルにゃ!」


「まあ、そうでしたか、プッカさんからお噂はかねがね。エルリムーンです。エリンとお呼びください」


 アディールさんの紹介でマーブル商会で働いてくれることになったそうだ。マーブルが俺たちをエリンさんに紹介してくれる。まあ、俺たちもマーブル商会の準従業員のようなものだ。


「アキさんとサラさんですね。兄からなかなかのやり手と伺っています」


「兄?」


「アディールは私の兄です」


 に、似てない……。


「にゃはは! 似てないにゃ!」


「よく言われます……」


「「……」」


 さすがKYN空気読めないにゃんこ。言っちゃたよ。


「と、ところでプッカはどこに行ったんですか?」


「プッカ、サボってるにゃ!」


 マーブル、お前が言うな! 一日中ゴロゴロしているのはどこのどいつだ。


「プッカさんは孤児院にお菓子の納品に行っています。最近は更に売り上げが伸びているそうで、商業ギルドに屋台を増やすようにと多くの要望書が届いているそうですよ」


「おぉー、それはいいにゃ! あきっち増やすにゃ!」


 要望書を出すということは大人なんだろうな。駄菓子の販売屋台は、町の子どもたちのためにやっている慈善事業なんだけどな……。


「やるのは構わないけど、大人と子どもで店を分ける必要があるな。あの屋台は町の子どもたちが、安くお菓子をかえるようにとの慈善事業なんだから」


 沙羅も頷いている。


「まあ、そういう事情があったのですね。ですが、客層を分けるのは難しいと思いますが……」


 そうなんだよねぇ。年齢確認なんて無理だよな。この世界、年齢なんてあってないようなものだし。


「ほかの町の領主からも、出店するようにとの話がきているとも聞き及んでいます」


「あきっち! 出店するにゃ! マーブル商会の躍進にゃ!」


「無理。資金は大丈夫だろうけど、人材がいない。店に常時、納品もする暇もない。王都くらいなら考えてもいいけど、各国の王都に支店を出すほうが重要度が高いから駄目だな」


「そんにゃ……」


 とりあえず、その辺は政府との話が終わってからだ。今日は防具の注文に来たんだから。今はこの話は棚上げだ。


「また来るにゃ~」


 職人ギルドに来ている。武器防具屋に行くより、ギルドに発注したほうが早いだろうと考えたからだ。


「おいおい、どこの国の部隊に卸すつもりだ?」


 異世界の自衛隊です。


「とある傭兵団から頼まれたにゃ! 気に入れば今後も受注できるにゃ! マーブル商会のために頑張ってほしいにゃ!」


 おっ、ナイスアドリブだ。マーブル。


「マーブルには世話になったけどよぉ。うちだけじゃ、この数は厳しいぜ。ほかの町のギルドにも頼んだらどうだ?」


「じゃあ、ギルド長に任せるにゃ」


「いや、任せるて言われてなぁ。そもそも、ファングベアーだけだと素材を集めるだけで大変だぜ?」


 確かにそのとおりだな。なら妥協案を出そう。


「それでは、ファングベアーの革鎧とあと二種類ほど同じくらいの性能又は上の革鎧をお願いします。装備を統一したいとの先方からの要望なので。それから、性能のいい防具なら別途買います」


「うーん。それなら出来なくはないな。だが、金はかかるぞ?」


 なので、金貨の入った袋をカウンターにのせる。


「前金にゃ! どんどん作るにゃ!」


「お、おう。さっそくレイダーギルドに依頼を出さねぇとな」


 ギルドの外に出た。


「なあ、マーブル。ファングベアーって強いのか?」


「初級殺しってよく言われているにゃ。中堅クラスになるためには避けて通れないモンスターにゃ」


「俺たちで倒せるか?」


「あきっちとさらっちでなら倒せるにゃ」


 なので、沙羅と相談。俺たちでもファングベアーを狩らないかということ。


「面白そうだね。ほかの怪異モンスターとも戦ってみたいな」


 さすが軍神沙羅。一も二もなく承諾。


「ちなみに俺たちの実力だと竜の大回廊だと、何階層まで行けると思う?」


「うーん。四階層……頑張って五階層かにゃ。あそこは一階層からめっちゃ強いにゃ」


「ファングベアーは何階層クラスなの?」


「一階層クラスだにゃ」


 なるほど、その名に恥じぬ高ランクの迷宮だ。


「竜の大回廊の五階層までで武器防具のいい素材になる怪異モンスターはいるか?」


「そうだにゃ~、一階層のオークはおいしいお肉にゃ!」


 いやだから、武器防具の素材だって……でも、美味しいお肉、気になる。


「二階層のソードマンティスは名前どおり剣の素材になるにゃ。三階層のファルスドラゴンはファングベアーよりいい防具の素材だにゃ。四階層はオーガにゃ。薬剤の素材になるにゃ。変異種は防具でもいい素材になるにゃ。五階層はアント系のモンスターにゃ。上位種になればなるほどいい素材になるにゃ」


 これは狩の相手を変更するべきか? 沙羅も同じことを考えているようだ。


「どうだろう。時間もあるし、今日はこれからファングベアーを狩ってみないか? その状況次第で週末は竜の大回廊に行きたいと思う」


「アキくんに一票!」


「じゃあ、着替えて狩りに行くにゃ」


 マーブルの家で着替えを済ませ、マーブルの転移でどこかに飛ぶ。


「竜の大回廊の入口にゃ。この辺にファングベアーもウロウロしてるにゃ。ここより森の奥に行かなければ、この辺ではファングベアーが一番強いモンスターにゃ」






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