123.情報共有

「ともあれ、これ以上の騒ぎは起こさないようにしたまえ。我々でも庇いきれなくなる」


「どの程度が騒ぎになるのでしょう?」


「「……」」


 こちらとしては騒ぎにしたくてしているわけじゃない。良かれと思ってやっているのだ。正直、騒ぎと言われるのは心外なのだ。


「沙羅と聖臣くんは何をどこまで関わっているんだい? 君はいずれうちの家族になるのだろう? ならば一蓮托生だと思う。君たちがどの程度の関りがあるか、私たちも知っておくべきだと思うんだ」


「ふぇぇぇ!?」


 沙羅さん、奇声はもう十分ですよ。忠道さんの言うことはそのとおりだ、助けてもらう以上、こちらも情報をある程度開示すべきだろう。


「質問に質問で返して申しわけありませんが、逆にみなさんはどこまで知っているのでしょうか? 私も沙羅も貴子様からは箝口令は敷かれていません。まあ、言ったところで信じる人がいないというのもありますが」


「上層部に上がってきている情報によれば、新たな異世界人と接触したことにより、今までの異世界人との取り引きが不平等であったこと、異世界製の強力な武器を手に入れたとあった」


 以前、ここで話したこととあまり変わりがないな。さて、どこまで話そうか。


「では、ここからの話は貴子様も知らないことを含みますので口外無用でお願いします」


 全員が固唾をのんで俺の次の言葉を待つ。


「私と沙羅は、異世界である向こうの世界に実際に行っています」


「「「「⁉」」」」


 自衛隊チームは驚きとマジかよこいつって感じで俺を見る。沙羅の祖母と母はあらあら、まあまあって感じで微笑んで対照的だ。


「向こうでは最高権力者である国の王様と接触を持ちました。こちらが異世界人とは明かしていませんが」


「素早いな。どうやってその権力者と接触をもったんだね?」


「私と沙羅が最初に会った異世界人は行商人でした。そして、快く協力者になってくれました。なので、商人という立場を利用し、こちらの世界の品を持ち込んで権力者と繋ぎを取ることにしたところ、すぐに最高権力者の侍従長の目に留まり知り合うことができました」


「その協力者は信用できるのかな?」


「にゃ~ん」


 信用できると本人が言っています。


「どこかの国の政治家なんかより、間違いなく信用できます」


 沙羅もうんうん頷きながら、マーブルをなでなでしている。


「こちらの品……倉庫にあったものか⁉」


「資金はどうしたのだね?」


「貴子様のポケットマネーからxxxほど……」


「「「「……」」」」


 正直、ポケットマネーと言える金額ではない。二回目のお金は特異室の予算からか国から出たものだと思う。まあ、俺には関係ない。その分の金額以上の品を持っていかれているのだから。


「異世界との取り引きを今後も続けられると?」


「私はそのつもりですが……」


「獅子身中の虫どもか……」


「確かに既得権益の利権に絡みそうですな」


「最低価格で一本二億円だからな、砂糖に蟻が群がるように出てくるだろう」


 炎の魔剣の水流の魔剣は自衛隊に試供品として買われたんだった。


「あの強力な武器はそう簡単に手に入る物ではありません。向こうの世界でもレア物になります。政治家がこの取引を我々から奪えば、おそらくもう手に入らないでしょう」


「それはどういう理由でだね?」


「我々の協力者とは信頼関係で結ばれています。利権にしか興味のない政治家では信頼関係を結べるとは思いません。それに、協力者は今回の件のために商会を立ち上げてくれました。その心意気を踏みにじれば、全てが泡と化すでしょう」


「国が関わらずとも取引に支障はないと?」


 ないな。まったくない。強いて言えば魂石くらいだろうか? でも、魂石の利益なんてほかの取り引きに比べたら雀の涙だ。


「魂石くらいでしょうか。あれは国が管理しているようですから」


「魂石か……」


 元々はそれが発端なんだけどね。魂石だけでも今の倍の利益になるのに、政治家共は強欲だ。人のことは言えないけど。


「国が手を引いた場合はどうするつもりだね?」


「別に構いません。異界アンダーワールドがあるのはこの国だけではないので」


「国益が大きく削がれるか……」


「そうなった場合、十六夜くんはこの国にはいられんでしょうな」


「間違いなく拘束されるか、命を狙われますね」


 ですよねー。そのために脱出ルートを確保しておかないといけない。一つはもう出来ているから、次はアメリカとフランスだな。


「その対策もしています。最悪は一時的に異世界に逃げ込みます」


「なるほどな。ほかの者が行けない安全地帯か」


「では、国が取引を認めるといった場合はどうするつもりだね?」


「会社を作って正式に向こうと取引をします。こちらの製品は品質が高いので、向こうのどこの国に売っても利益を上がられます。そしてこちらの世界では手に入らない、強力な武器などをこちらの世界に持ち込めば、引手あまたでしょう」


 武器が見つからなくても、その素材をレイダーギルドに依頼として集めさせ、その素材で職人に作らせればいい。お金も手間もかかるけど、それでも利益は上がるだろう。


 まあ、どちらに転んでもウハウハには違いないと思う。






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