122.プライバシー
異世界言語は取りあえず、平仮名変換表を見ながら勉強。
平仮名は旧文字を抜かせば四十六文字単品で使うのに対して、ローマ字は二十六文字で組合せで使う。マーブルの世界の文字はローマ字に似ていて三十五文字の組合せで成り立っている。
平仮名に対応する組見合わせがいくつかあり、使う言葉によって組合せが変わるのは面倒だ。
文法も英語に近いが主語が省かれる場合が多いようで、誰の言葉か読み解くのがなかなか慣れないと難しい。
そして当たり前だが、単語は覚えるしかない。現在進行形で沙羅が辞書を作っているので追々だ。取りあえず、ノートPCとスマホにデータを落とす。スマホに落としておけば向こうでも使えるからな。そのためスマホに大容量記憶カードを入れてある。
そんなことをしていると、夕食の時間だと沙羅の母が呼びに来た。居間に行くと全員揃っている。
頂きますの後は、まあ一杯とビールが注がれ一気に呷り飲む。旨い! ご返杯を繰り返していい気分になってきたところで、沙羅の兄の忠道さんから爆弾が投下される。
宮内庁特別異威対策室のロックダウン事件だ。
「まさか
「ぐっ……」
「科学検疫班が緊急出動したそうだね」
「テロが起きたのではと、政府も上層部も上を下への大騒ぎだったな」
「ぐぬぬぅ……」
そこまでなのか? 沙羅の祖父は自衛隊の幹部なので実際そうだったのだろう。しかし、そこまで大事になっていたのか……。
「ちょっとしたお土産のつもりだったんです……。まさか、今更検疫だなんて言われると思ってませんでした」
「まあ、そこまで詳しくは説明されていないだろな。しかし、今回の件はそれを差し引いても前代未聞の事件だね。いい意味でも、悪い意味でもね」
沙羅の父は笑いながら言っているが、目は笑っていない……。
「過去にも同じことがあったと思いますが、なに分資料が何も残っていません。過去にも収納系の能力を持っていた
さっきから沙羅の父も忠道さんも悪い意味の所を強調してるんですが……。
「あなたはそれだけのことをしたのよ。反省しなさい」
みなさん、さも当然とばかりに紗耶香さんの言葉に頷く。いや、まあ、そうなんですけね……。
「謹んで謙虚に受け入れます……」
「当然ね。あなたはうちの家族候補なんだから、不祥事ばかりでは困るわ」
「ふぇっ!?」
沙羅から奇声が上がる。今のは家族公認と思っていいのだろうか。それから、マーブルさん。俺を足蹴にするのやめてくれません?
「それで忠道、解剖のほうはどうだったんだ?」
「我々とは全く異なった生き物。が答えでしょうか。人に近い
心臓らしき臓器には石のようなものが埋め込まれていたそうだ。それに消化器官があるなら何かしらを摂取してエネルギーに変えているということだ。
「研究はまだまだこれからですが、面白いことになりそうです」
「一歩リードできるか……」
「どうでしょうか、秘匿しているとも考えられます」
「共産主義者ならともかく、アメリカが秘匿するとは思えん。ここぞとばかりに世界に公表し、我々が先駆者だと確固たる地位を表明するだろう」
実際、アメリカの
「しかし、そうなってくると、沙羅や聖臣くんが危険ではありませんか?」
「外夷のことなら心配なかろう。十六夜君の身辺の報告書を見たが、いいコネクションを持っている。各国も下手に手が出せんほどのな」
「そうですな。私も見ましたがどちらかといえば、獅子身中の虫が厄介かと……」
獅子身中の虫ねぇ……言い得て妙だな。それにしても、俺にはプライバシーってものがないのか!? 調べられて困るようなことはないけどさぁ……。
「貴子様とは良好な関係ではある。河上彦一郎先生の弟子であれば一番よかったのだが、いざとなれば我々が彼の後ろ盾になるしかあるまい」
幽斎師匠ってそこまでの人なのか? 飄々として世俗には関わらない人のように見えたけど?
「幽斎師匠って政界に顔が利くんですか?」
「利くなんてものじゃないぞ。彼のご先祖が人斬りだったのは知っているかな?」
「はい。聞いています。
「そ、そうか、それは初めて聞いたな……。
「それに凶犬と呼ばれた二つ名も伊達ではないからね」
凶犬って二つ名は
なにやったんだあの人は……いや、聞きたくないな。
絶対にまともじゃない!
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