120.防疫
冷静なのは男性陣だ。見たことない人もいるのだろう。興味深そうに観察している。はにわくんがやった撲殺跡はあるけど血などは出ていない。今にも動き出しそうな感じだ。
「どうやって持ってきたんだ? アキ」
「異世界の人に、倒した後消える前に収納系のスキルで回収すると残ると聞いたので、小太郎に回収させました」
「ちょ、ちょっとなんてもの持ってきたのよ!」
「研究用に買い取ってもらえるかなと?」
「「「「……」」」」
誰もしゃべらない。とても痛い視線を感じる。なぜ?
「検疫班を至急に呼びなさい! 誰もこの部屋に近寄らせないように指示を出して! 大至急よ!」
検疫って今更なのでは?
自衛隊の衛生部隊がやってきて大騒ぎ。ビルが封鎖され辺り一帯も封鎖された。
只今、俺は正座中。目の前には鬼のような形相の貴子様がいて、説教されている。
聞かされていなかったが、
じゃあ、転移で異世界に行くのってヤバくない? それこそ今更か。月虹やマーブルのマーキングにもパスルームの機能があることを願おう。
残りの死体も出させられ、防護服に身を包んだ自衛隊員さんが回収していった。没収だそうだ。解せぬ。
それから、みなさんと特殊車両に乗せられ、自衛隊の病院に搬送。クリーンルームの病室に入れられ、今日明日で精密検査を受けさせられることになった。明日は大学休みだな……。
小太郎も一緒なのだが大丈夫だろうか? まあ、貴子様がマギだと知っているので、何かあっても貴子様のせいにしよう。
ちなみに、小太郎は貴子様と沙羅、秘書さんと同室だ。俺はショウさんたち男性陣と同室。別に羨ましいな、なんって……思っているんだからな! 心の底から羨ましいと思ってるんだからな!
翌日の昼過ぎに検査は異常なしとされ開放。また、特対室の執務室に連れてこられ、説教の続き……。
ちなみに、ビル内は俺たちが搬送された後に除菌作業が行われたそうだ。
「なんであなたはこう問題ばかり起こすのかしら……」
どこぞの嵐を呼ぶ園児のように言わないでください。そして、沙羅もショウさんも頷かない。特に沙羅は一蓮托生でしょうに。
「長い目で見れば国益になるでしょう?」
「だまらっしゃい!」
本物のUMAの検体が手に入ったのだ、何かしらの発見があるはず。俺は医学会に大いなる貢献したことにはならないのだろうか?
「もう、持ってくることは禁止!」
「ですが、異世界では
「うっ、それは……取りあえず、指示があるまでは禁止!」」
貴子様、誤魔化したね。まあいい、いずれ機会はやってくるはず。
「そういえば、まだオフレコだけど探究者専門学校を設立予定があるのよ」
急に話が飛んだな。
前々からその話はあったそうだ。国会の承認も済んでいたが諸々の問題があり棚上げされていたらしい。しかし、俺たちの異世界との取り引きが切っ掛けとなり、一気に話が進んでいるそうだ。
魂石の正当な取引価格が行われるようになれば、この国の立場が一気に変わる。それに加えて異世界との取り引きも始まれば、この国としてはイニシアティブを取りたいのだろう。
そんな中で、実はこの国は
そこで、探究者専門学校ということだ、昔と違って神仏との繋がりが形骸化している今、信徒に頼るのではなく能力のある者を一般市民から募集する方向に変えようということだ。
そんな上手くいくのか?
「募集方法はいろいろ考えているのよ」
一つはインターネット広告。俺が見た募集広告のように異能力者だけは見える広告を出し、能力ある者以外見えないサイトに誘導するらしい。そのほかにも、職安や高校、大学の求人にも同じような広告を紛れこませるそうだ。
それで集まるのか? 眉唾物と思われるだけじゃないのか?
「大々的に募集してはいけないのですか?」
沙羅、いいこと聞いた。俺もそれが疑問だったのだ。ラノベやアニメで異世界や迷宮はある意味認知されている。我こそは俺Tueee! したいと思う奴が大勢いると思うけどな。
「したとしても、使える人はどれくらいいると思う?
「「……」」
本人のやる気次第なんだろうけど、確かに夢見るニートには難しいだろうな。そもそも、そんな人間はニートなんてやっていない。ニートは所詮ニートというところか。
至極ごもっともなご意見だ。
まさに正論すぎて、沙羅も俺も反論できないな。
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