117.勧誘
マーブルが俺の足をケリケリしているが無視して、アディールさんと話を進めよう。
「今のアディールさんなら、その商才を上回る経験をお持ちでしょう。もう一つだけ質問させてください。世界を相手に商売したいと思いませんか?」
「それはまた、唐突な質問ですね。その様子ですと、マーブル商会さんはこの国だけでなく、世界中の国を相手に商売なされる気ですね」
「そのとおりにゃ!」
「では一つご忠告をしましょう。マーブル商会さんで扱っている品を見せていただきましたが、みな素晴らしいものでした。ですが世界を相手にされるのであれば、あの品質を維持するのは難しいでしょう。客は馬鹿ではありません。品質が落ちれば、値下げを要求するか購買意欲を失うでしょう」
アディールさんの話はもっともだ。家内制手工業のように手仕事だけで製品を作っているのならば、必要数量を満たすために製品の品質が落ちることがあるだろう。
しかし、俺たちの扱う商品は一部を除いて、工場制手工業製や工場制機械工業製だ。厳しい検査を通って出荷される製品なのでそんなことはまずない。
「俺たちはそうならない仕入れ先を持っていると言ったらどうします?」
「とても興味深い。私の好奇心を大きく揺さぶる話です」
俺を射貫くような目つきで見ている。そろそろ、本題に入りますか。アディールさんは気付いているようだけど。
「俺たちはそれこそ世界を相手にしても問題ないほどの仕入れができます。ですが、それを管理する人材が不足しています。どうでしょう。マーブル商会で異世界を相手に商売をしてもませんか?」
「異世界……!?」
マーブルと沙羅が、あぁ~言っちゃったみたいな目で俺を見る。
なに、言ったところでどうこうなるものじゃない。アディールさんが今知ったところで、なにもできないのが現状だ。
「なるほど異世界でしたか……伝承の中のことだと思っていましたが、本当に繋がっていたのですね」
「現状、ゼギール帝国が極秘に独占して行っていますが、縁がありマーブル商会でも繋がりを持つことができました。ゼギール帝国があまりにも不平等な取り引きを行なっているようで、相手側も我々マーブル商会と取り引きしたいと思っています」
「そこまで話が進んでいるのですか……。ですが、なぜ私なのですか? もと優秀な人材など捨てるほどいるでしょうに」
捨てるほどいないから困っているのです。
「一つはあなたが長寿であり義理堅いエルフであること。もう一つはマーブル会頭があなたを信用できると言っていることです」
「それは嬉しい言葉ですね」
「異世界とはこれからいろいろと話を詰めなければならないことが多くあります。いずれは、この国の王とも話しをしなければならなくなるかもしれません。交渉事なら海千山千のアディールさんの得意分野。間違っても不平等にはならないでしょう」
「なるほど、交渉ですか国の役人、あるいは大臣クラスが相手となると腕が鳴りますね」
「そして、異世界とはこれから長い付き合いになります。エルフであるアディールさんなら適任でしょう。我々では数十年が限度ですから」
じっと考え込むアディールさん。話具合からは手応えを感じる。
「少しお時間をいただいても?」
「構わないにゃ。でもにゃ……実はぱっちょんの店の隣の空き店舗を借りたいにゃ。ついでにその店で受付をしてくれる人を探してもいるのにゃ」
アディールさん眼鏡をずらし少し考え、
「空き店舗の件は問題ありません。まだ、応募中で決まっていませんので。受付とはどんな仕事になるのでしょうか?」
なので、サンプル品だけ置き、注文を受け後日品を渡すだけの店舗にすると教える。
「貴族様の対応になるのですね。となると、そこそこの教養と守秘義務が必要ですね。わかりました。そこは個人的に私がなんとかしましょう」
アディールさんの去就は保留だが期待はしている。店のほうも上手く話が進んだ。十分に合格点だろう。
街の食堂で昼食を食べた後、マーブルは孤児院に駄菓子を持って行ったり、こちらでまだやることがあるとのことなので、俺と沙羅は王都の商業ギルドやレイダーギルドなどを回ることにした。
ここクレストの町では成果がなかったが、王都ではなかなかの成果があった。
疾風の槍 品質 最良 突き特性+230 打撃特性+100 理力特性+100 風属性+100 耐久2200/2200 素早さUP
岩切丸 品質 最良 斬撃特性+400 理力特性+100 断属性+110 耐久3200/3200
耐魔の腕輪 魔攻撃を二割軽減する。装備者の魔攻撃が四割減となる
火喰い鳥の鎧 品質 最良 耐久1600/1600 防御+180 斬撃耐性+90 火炎耐性+160 水氷耐性-160
収納袋(小) 四メーター四方の空間を保持
死者の魔導書 悪魔が亜神の力を封じた魔導書。死者の魂を縛る。
これは大漁だ! なんかヤバそうなものもあるけど、全て買い取った。
もちろん現金一括払いで。
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