101.魔導書の検証

 土曜日、今日は午前中は人工迷宮で沙羅の魔法の検証をする。


 地下二階のスケルトンで試す。その前にマーブル先生の魔法講座が行われた。


 魔術、魔法は魔力を使う。魔宝石に溜めた魔力でも可。属性という概念はない。魔術は呪文や儀式などが必要。魔力の宿る言葉の組合せにより事象を具現化するので、無詠唱というのはない。短縮詠唱はあるが威力が落ちるそうだ。


 よくラノベで言うイメージは全く必要ない。必要なのは言葉という言霊。イメージで魔法が使えるならこの世界は既に滅んでいるとのこと。世知辛いな……夢がない。


 この世界、杖に意味はないし重装備だろうが全く問題なく魔術、魔法、魔導を使える。問題はその人の体力次第。マ-ブル曰く。マッチョな魔術士は大勢いる。逆に体力がないと魔術士なんてやってられないらしい。


 同じ呪文を二度、三度と多数回唱えると威力が上昇、倍ではなく上昇なのに使う魔力は倍になるそうだ。なので詠唱時間が長くなるしコスパ的に非効率。

 

 だが、その少しの上昇が命を繋ぐことがあるので大事なんだそうだ。それを連続詠唱と呼び、二人、三人と多人数で同時に同じ呪文を唱えて魔法を重ねることを多重詠唱と呼ぶらしい。


 魔術士になるには魔術士に師事するか、魔術ギルドの学校で勉強するしかない。才能で上下はあるが、勉強すれば誰でもなれる。


 魔導士は魔導書などと契約を結び魔術を行使する。呪文は魔導書に書いてあるが唱える必要がない。魔導書を出すと空中に浮いて、そこに手を添えることにより魔術が発動。


 魔法士は魔法スキルを覚え、使える魔法が頭に浮かぶそうだ。魔術と同じで呪文は必要。勉強の必要がないということだ。


 マーブルはご両親から学んだそうだ。ケット・シー族は魔術の才能が生まれつき高いそうだ。


 沙羅の魔導書は使える魔導は今は四つ。レベルが上がると増えるらしい。


 ・炎弾 拳大の炎の弾が飛んで行き対象に当たると爆発する。連続詠唱で威力が変わる。


 ・光盾 1メートルほどの菱形の盾が浮かぶ。どんな攻撃も一回防ぐ。継続なし。連続詠唱で大きさが変わる。


 ・身体能力向上 術者の身体能力を向上させる。沙羅曰く、倍くらいになるとか。効果時間は十分。連続詠唱不可。リキャストタイムに三十分必要。


 ・光源 光を放つ玉が浮かぶ。沙羅から半径10mくらいで自由に動かせる。効果時間一時間。 連続詠唱不可。


 地下二階に移動して、沙羅がスケルトンに炎弾を放つと一撃。オーバーキルのようだ。


 炎弾の速さは速度は120キロくらいか? 微妙な速度だ。避けようと思えば避けれると思う。沙羅の意思で少し軌道を変えれるのが救いか。小太郎の焔は対象を燃やすのに対して炎弾は物理攻撃に近いな。


 光盾は魔力消費が大きいらしい。そして、どんな攻撃も一回防ぐとあり、はにわくんの魔改造バットのフルスイングでも防いだ。が、しかし、小石をぶつける程度でも一回とカウントされ消える。例えば火炎放射のような放出系の攻撃には不向きだ。使いどころが難しい。


 身体能力向上は沙羅以外対象にならないが文句なく優秀。宵月と違い攻撃力だけでなく身体能力全ての能力が上がる。異世界の魔導は化け物か! と言ってしまうくらい凄い。リキャストタイムに三十分必要というのが惜しい。氣をまだ覚えていない沙羅には最高の魔法だ。氣とも併用できるなら凄いことになりそうだ。


 光源は字の如くライトだな。近くにあると相当眩しい。攻撃しても消えないし、自由に動かせるので目つぶしにも使えるのでは?


 マーブル曰く、なかなかの魔導らしい。詠唱が必要ないのも凄い。まあ、詠唱は魔導書がしてるらしい。聞き取れないくらい早口で……。


 ちなみに魔導書に書いてある呪文と同じような呪文をマーブルが唱えると、発動に魔導書より三倍時間がかかる。この魔導書、赤い彗星か!?


 魔導書は己を維持するために常時少量の魔力を消費するらしいが、沙羅が契約したことにより沙羅から供給される。その代り、魔法石のように魔力を溜めることもでき、沙羅から戦闘時以外に多めに供給を受け、魔力を溜めこんでいるそうだ。便利機能だ。


 まあ、俺にも月読様という理力タンクがいるけどね。限定的だが。




 一旦、入口近くの保管部屋に戻り着替えて、マーブルの家に転移。まずは屋台を引き取りに職人ギルドに。


「出来てるぜ」


 裏の倉庫に案内され注文した屋台を確認。ファンシーな塗装がされ可愛い屋台だ。中も折り畳みの台が設置されて全部広げるとなかなかの大きさになる。棚の手前に一センチほどの板が固定されていて、棚からものが落ちないようになっている。


 屋台を自由空間にしまい、マーブルの知り合いの孤児院に向かう。院長先生とお会いしてお互いに自己紹介したのち、駄菓子屋の屋台を任せる人を紹介された。


 シェリーさん17才。この孤児院出身で、今はこの孤児院を手伝っている。マーブルの特訓により自由空間を取得済み。なにも無い空間に閉じ込められる苦行。よく耐えたねって言ったら、遠い目をしていた……。


 取りあえず、みんなで屋台に駄菓子をセッティング。なかなかに様になっている。孤児院の子どもたちが集まってきて大騒ぎ。


 沙羅がみんなの頭をなでなで。モフモフだけでなく子どもも好きのようだ。小太郎は屋台の屋根の上に登り子どもたちから避難している。ちょうどいいので練習がてらプレオープンだ!









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