97.屋台作成依頼

 王都で昼食をとりマーブルの家に帰って来た。高級料理店だけあってなかなかの味だった。沙羅が美味しいと言っていたのでそうなのだろう。


「つ、疲れたにゃ~」


「休んでる暇はないぞ」


「うにゃ~」


 多くの品は王宮に置いてきた。それでもまだ品はある。こうなると個別に売るというより、注文を受けて品をそろえるようにしないと、時間がいくらあっても足りなくなる。


 今。マーブルの自由空間に残っている品は,

 ぱっちょんの店に全部卸してしまったほうがいいだろう。


「わかった行くにゃ~」


 沙羅はここに残ってもいいよと言ったが、ついてくるそうだ。


「こりゃまた、すげぇ品ばかりだな……」


 なぜか、呆れた目で見られる。前回置いていった品は全部売れたそうだ。服屋からは布と針、糸の注文も入っているらしい。


 ぱっちょんが売り上げを渡してきて、マーブルが仕入れ代を引いた利益を半分ぱっちょんに渡すがぱっちょは拒否。話し合いの結果なんとか4:6で納得させた。


 次に向かったのが職人ギルド。屋台の作成を頼むためだ。


 職人ギルドで図面を見せると大勢の職人が集まって、あーでもない、こーでもないと話し合いが始まる。ついでにホームセンターで買って来た工具と金具、ねじなども渡すと、更に白熱した話し合いになってしまった。


「ただでいい。代わりにこの図面と余った金具。この工具が欲しい」


 別に問題はないが、条件を上乗せする。前回断られた金属のインゴットの件だ。


「いいだろう。特別に売ってやろう」


 ラッキー!


 各種金属のインゴットに宝石の原石も購入する。屋台が出来たら、ぱっちょんの店に連絡を入れてもらえるようにした。


 商業ギルドにまた来た。


「お願いですか?」


 ぱっちょんのお店のことを話す。


「なるほど、貴族様ですか。それはご愁傷さまです」


 商業ギルドから見ても貴族は面倒なようだ。少々頼み難いが、商業ギルドに貸は十分にある。なので、商業ギルドのほうで貴族からの注文の取りまとめをお願いしたら、キラリン! とアディールさんの目が光る。


 マーブルがごくりと唾を飲み込む。


「いいでしょう。お引き受けしましょう。ですが……商業ギルドがただ働きするわけにはいきません。そこでです。このノートではなく契約に使える丈夫な紙と消せない使いやすいペンが欲しいですね。もちろんお金は払います。あるのでしょう?」


 でた、この見透かしたような『あるのでしょう?』が。紙は問題ない高級紙なんていくらでも手に入る。だがしかし、ペンか~。


 こういうのは、沙羅に相談だ。


「プラスチックフリーのペン?」


「側は金属でも中の詰め替えの芯は、どうしてもプラスチックなんだよね」


「じゃあ、ガラスペンは? こっちでは羽ペンを使っているようだし。ガラスなら問題ないんじゃないかしら? 私も持ってるけどとても使いやすいよ」


 ガラスペンというのがどんなものか知らないけど、沙羅がそう言うのなら問題ないのだろう。 


 なので、マーブルに頷いて見せる。


「いいにゃ! 泥船…違ったにゃ。雪風に乗ったつもりで任せるにゃ!」


「雪風が何か知りませませんが、なにやら凄い自信のようですね。期待してますよ。マーブルさん」


 商業ギルドを出ると、だいぶ陽が暮れてきた。


 最後は本屋だな。本は雑貨屋あるいは古本屋などで扱っている。今回は古本屋に向かった。三人で分かれて各々気になる本を集めることにする。俺と沙羅は文字が読めないので、なんとなくで選ぶことになる。


 新しい本から古い本まで多くの本が棚に並んでいる。一冊、目についた本を取って見る。中を見ると幾何学的な図形やら、いろいろな構えをした人の絵が描かれている。試しに鑑定してみる。


 奇人コーエンの魔導書 本と契約すると魔法が使える。契約者の血を一ページ目の魔法陣に付け、魔導書と契約を交わす。対価が必要。ロットナンバー22/200


 まじ!?


 これは買いでしょう! こんなものが普通に買えるのか。さすが異世界。でも、高いんだろうな……。


 ほかにもないか探したが見つからなかった。俺がほかに選んだ本はおとぎ話の載った、子ども向けと思われるもの三冊。文字より絵が多い、絵本に近い本だ。言葉や文字を覚えるなら、こういう本のほうがいいだろう。


 マーブルと沙羅が選んだ本と、恐る恐る俺が選んだ本を会計に出す。書店の主人が一冊ずつ本を確かめメモをしていく。そしてあの本で主人の手が止まる。ドキドキなんですけど。


「なあ、兄さん。ガキならまだしも、あんたいい歳こいて子ども向けの冒険譚に奇人の魔導書はないんじゃないか? こちらのお嬢さんたちのように教養ある本を選んだらどうだい」


 よ、余計なお世話だ!


「あきっちはおこちゃまにゃ!」


 マーブルもうるさい! 


 この本の秘密を教えないぞ!







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