93.納品
翌日は、業務スーパーでの品選び。やはり、沙羅は初めてのようで大はしゃぎ。カートに載った買い物かごが山盛りになっていく。誰が持つんだ? 俺だね……。
その姿をしり目にメモに欲しい品と量を記載していく。果物のシロップ漬けは多めに欲しいとマーブルに言われていたので多めに記載。
貴族連中に高値で売りつけるそうだ。一度、見本品を送り、それを食べたら貴族は虜になること間違いないと言っている。じゃあ、試しにあんみつも入れておこう。
ツナ缶、サバ缶、コンビーフ、魚の水煮、蒲焼、などを記載。そしてマーブルの気に入ったあんこの缶詰、スイートコーン、ミートソース、カレーの缶詰。これらはマーブル個人で楽しむものらしい。カレーのために沙羅にお米と飯盒を用意してもらったそうだ。
ほかには高級缶詰のカニ缶、ホタテ缶。変わりダネの焼き鳥、牛丼、シチューそして非常食の乾パン。
ここでも結構な量になる。支払いを済ませ配送を頼む。
さて、沙羅さんや、その大荷物は誰が持つのかな?
「てへぺろ♡」
金曜に屋台の設計図が出来と連絡がきた。本当にやりやがった。
受け取りにいくと、なぜか沙羅と握手をして涙を流している。
別紙に材料表まで書いてある。こいつら渾身の力作のようだ……。ホームセンターで向こうでは手に入らない材料と工具を買っておこう。
物がそろったので翌日の土曜日に沙羅の家に集合。配送された品は倉庫に置かれ、さっきマーブルが自由空間にしまったそうだ。じゃあ、行くか。
「私も行く!」
えっ!? 行くの?
「今週で夏休み終わりだよ? おじい様もお父様もみんな迷宮の件で忙しくて、どこにも出かけていないの!」
さて、どうする?
「さらっちはうちが連れて行くにゃ。あきっちは自分の力で来るにゃ」
「えっ!? アキくんも転移できるの?」
そういえば、言ってなかったな。沙羅が避暑に行ってる間に修行して身につけたと教えた。月兎のことも教えたら見たいと言うので月兎で兎を召喚。
敵はどこだと辺りをキョロキョロするが、敵らしき者がいないことに困惑の表情で俺を見る兎。
「可愛~いぃ!」
沙羅が兎に抱き上げモフモフ、スリスリ。兎、俺にどうすんだよという目を向けるが、目を逸らす俺。すまん、兎、許せ。
マーブルが兎を抱っこしたままの沙羅と共に消えたので、俺も小太郎と共に転移する。
「うさちゃんが消えちゃた……」
そりゃそうだ。アビリティーで呼び出した兎だからな。
「ようこそなのにゃ。さらっち」
「ここがマーブルの家なんだぁ。可愛い家だね」
沙羅からすれば大抵の家は可愛い家になるだろう。下宿先の部屋など沙羅の部屋の四分の一くらいしかない。
出かける前に三人で荷物のばらしかた。大口で買っているのでほとんどがきっちりと梱包されている。段ボールやビニールを外し、缶詰のラベルも剥がせるものは剥がしペンで何の缶詰か書いていく。印刷されているのは……知らん。とても大変な作業だった。向こうの倉庫でやっておくべきだった。反省。
「これはこれはマーブルさん。お越しになられたということは例の件に進展でもありましたか?」
「商業ギルド副ギルド長のたっての頼みだからにゃ。とっても苦労したんにゃよ。寝る間も惜しんで働いたにゃよ。ここ大事だからにゃ! おかげで希望の品を手に入れてきたにゃ」
「ほ、本当ですか!?」
「どこに出すにゃ?」
「ちょ、ちょっとお待ちを。おい、君。すぐに会議室を用意してくれたまえ!」
商業ギルドが上や下への大騒ぎになっている。それから、マーブルくん。いつ君が寝る間も惜しんで働いた? 飼い猫の如く食っちゃ寝の生活を送っていたのは誰だ?
目が泳いでいるぞ、マーブルくん。
そんな俺たちは会議室に案内され品物をマーブルが出すと、アディールさんたちギルド職員が総出で検品を始める。
「そちらのお美しいお嬢さんはマーブルさんの新しいお友だちですかな?」
「さらっちにゃ、あきっちのガールフレンドにゃ」
「マ、マーブル、な、何言ってるの!?」
ガールフレンドって言っただけのような気がするが、沙羅は何かと勘違いしたようだ。
「商業ギルド副ギルド長のアディールです。お見知りおきを」
そう言ってイケメンエルフ野郎は沙羅の手を取って口づけをしやがった。キザ野郎が……。
「はぅ……」
「しかし、見れば見るほど素晴らしい品ですな。本当にマーブルさんが仕入れてくるとは。半分冗談だったんですがね。いえ、もちろんすべて買い取らせていただきますよ。いくらでも欲しいくらいですから」
「こんなに仕入れてどうするんですか? 転売目的ならこちらとしてもいい気分ではありませんが」
「何を仰るんですか! 売るなんてとんでもない! 我々、商業ギルド職員は毎日多くのメモを取ったり資料作りが仕事。今まで使っていた紙は、この紙に比べれば質が悪く、ペン書きだったので間違えると修正するのに時間がかかりました。今も正式な契約書類はペン書きですが、事前に下書きができるので間違えて修正することが少なくなりました。このノートと鉛筆のおかげで大幅に仕事の効率が上がっています。まだまだ足りないくらいです!」
鬼気迫る勢いで説明される。
そ、それはよかったですね……。
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