92.購入交渉

 出したのはファングベアーの革鎧とポーション一式に、怪異モンスターを倒して手に入れた興亜一心刀。スケルトンからドロップした石化液。そしてとっておきの魔法石。


「これが異世界の鎧。ワイルドだね」


「こちらで作るポーションと違うわね」


「ほう。軍刀か? 実用刀にしては目釘が一つしかないな」


「この宝石はなんだね?」


 魔法石に興味を持ったのは天水父。理力の貯蓄用と教えると驚いている。


「これがあれば護法が使い放題か……戦い方が変わるな」


 品物の見分後、ビールから日本酒に代わる。俺は帰るからと断ると、明日は休みなのだから泊まっていきなさいと断れなくなった。まあ、夏休みだから当分休みだから、何も言えない。


 さっきのスキルのことでみなさんに、小太郎が俺のマギだと教えると驚いてはいたものの、更に凄いでちゅねぇ~と猫可愛がりは変わらなかった。天水家は大物ぞろいだった……。


 ついでに天水祖父が小太郎と一緒に寝ると言われ、俺は離れの客間で一人で寝ることになった。夜? なにもなかったよ。残念ながら。


 翌日、天水家で朝食までご馳走になり、天水家を後にする。玄関を出る時に天水祖父から


「また遊びに来なさい」


 と言われたが、俺ではなく小太郎に言っていた気がする。目線でね。



 電話で工学部の友人と大学で待ち合わせ。屋台の図面を引いてもらう。今回は沙羅も一緒に行き願いする。


 手作りで作るので複雑なものはいらない、簡単質素だけど頑丈なのを頼むと言うと、


「了解! 週末までには完成させる。任せろ! いえ、喜んでやらせていただきます!」


「アキくんの友だちっていい人だね!」


 いや、なんかいつもと違う……。


 帰りに知り合いの雑貨問屋の社長に連絡。すぐに会ってくれることになった。


「そんなに何に使うんだ?」


「福祉関係の景品に使おうかと……」


「まあ、うちは売れれば理由なんて関係ないがな」


 俺一人ならちょっと苦しい理由だが、沙羅が一緒なので誤魔化せたようだ。用意できたら連絡をくれることになった。


 問題はどう運ぶかだ。さすがにその場で自由空間は使えない。一度場所を移す必要がある。さて、どうするかと沙羅と相談すると天水家の倉庫に置こうということになり、配送してもらうことにした。やはり、配送が一番楽だ。


 社長に相談すると大口なので配送料はただでいいそうだ。


 社長に缶詰などについても相談すると、大量に仕入れるのでなければ、業務スーパーでいいのではないかと言われる。あまり値段は変わらないらしい。なので、缶切りだけ注文する。


 その帰りに業務スーパーに寄って話を聞いたら、配送もしてるし大口なら値段交渉も可能だそうだ。


 次の日、小切手について悩む。小切手なんて使ったことがないのでもらったところで、何もできない。なので、使い方を知っているであろう沙羅に相談。


 さすがお金持ちの沙羅は知っていて、一緒に銀行に行ってくれることになった。某都銀に連れて行かれ、小切手を新しい口座を作り移す。これで引き落としができるようになったらしい。ついでに沙羅お薦め有名クレジットカードも作ることになった。これで現金ではなくカードで支払いもできるようになる。


 帰りにサラとマーブルを連れて駄菓子の卸問屋に行ってみる。沙羅は初めての駄菓子に大興奮。小口でも買えるので沙羅は仕入れのことはそっちのけで、大人買いのにはしっている。


 その間に俺はお店の人と相談交渉。こちらも、大口なら値段交渉も可能だそうだ。なので、詰め替えができそうな駄菓子を選んでメモしていく。


 あんこ玉やふ菓子、カルメラ焼き、金平糖。塩昆布、揚げカツ、するめ、のし菓子。串カステラ、鈴カステラもいいな。チョコ菓子はまずいだろうか?


「チョコ美味しいにゃ~」


「チョコそのものはどうかな~? こんなのはどう?」


 沙羅が寄こしたのはムギチョコ。なるほど、これならいいかも。測り売りできるし、溶けることをあまり心配しなくてもいい。


 となると、ポップコーンもいいな。探すと業務用のでっかい袋に入ったポップコーンを見つけた。キャラメル味も発見。もう少し探すと、コーンのままのポップコーンの素も見つけた。これがあれば、向こうでも作れる。


 沙羅は大量に乾燥したコーンを見て首を傾げている。どうやらお嬢様の沙羅は、ポップコーンの素を知らないようだ。教えてあげるとそれも購入。キャラメル味の素もかごに入れている。


 沙羅はこれが業務用と理解していない。一キロ入りの袋をかごに入れている。ここに置いている中では最小だが、膨らんだらどれだけの量になるのだろう……。お手伝いの咲さん、頑張ってください……。


 その後もお店の人と話をしていると、小分け用の紙袋も売っているそうだ。大中小それぞれ確認してメモに数量も記載していく。


 十分に吟味が終わり商品を注文。沙羅と話した結果、注文した品は全てサラの家に配送してもらうことにした。こちらも配送料はいらないらしい。ラッキーだ。


 だが、今回沙羅が買った品はお持ち帰り。もちろん、持つのは俺。沙羅は小太郎とマーブルのキャリーバッグを持ってルンルン。


 こんなに買ってどうするんだ……。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る