90.駄菓子屋構想

「お菓子もいいにゃ~」


「お菓子ねぇ。それより塩とか砂糖はどうなの?」


「無理だにゃ」


 塩の売買は国が管理しているそうだ。人にとって塩は必需品。値が上がりすぎても下がりすぎても、在庫が余りすぎても足りなすぎても駄目なので国が一元管理してる。


 砂糖に関しては贅沢品という位置付けで、貴族が絡む商会での専売みたいな感じになっているらしい。貴族に喧嘩売るつもりなら売ってもいいと言っている。砂糖を売るのも貴族に喧嘩売るのも俺じゃないのでマーブルにお任せと言ったら、即答で否だった。


 お菓子はパッケージに問題がある。ほぼすべてのお菓子のパッケージはプラスティック包装だからだ。それに、お菓子では儲けにならない。微々たる儲けはあるだろうけどやる価値はあるのだろうか?

 

いや、考えようによってはありだな。俺たちの名を売るにはもってこいかも。未知なるお菓子、必ず話題になるはずだ。


「ポテチダメにゃか……」


 どこかの神様と同じでポテチ好きか。俺も好きだけどね。


 ポテチなら向こうで作っても同じじゃないだろうか? 道具は探せばプラ以外の物もあると思う。あとは油と塩だけだ。味を変えたければ、青のりやコンソメの素を混ぜればいい。屋台でやれば売れるのではないだろか?


 向こうに同じような芋があるか聞くとハテナ顔。まあ、なくてもこっちから種芋を持っていって向こうで育てればいい。


 向こうにある油とこっちの植物油で試して、味を確かめる必要もある。


「やるか?」


「やるにゃ!」


「ポテチだけじゃなくて、ほかのも何か売ったほうがよくない?」


「その心は?」


「しょっぱいものを食べると甘いものが欲しくなる!」


「あるにゃ~」


 なるほど、女性の意見は大事だな。となると、屋台でできる甘い物ってなんだ?


「りんご飴!」


「チョコバナナにゃ!」


 いやいや、どっちも難しいからね。りんご飴のりんごは季節ものだし、バナナとチョコは向こうに持って行って問題ないか? いや、今更か……。


 なら、


「タイ焼きはどうかな?」


「なんにゃ? にゃんか心惹かれる言葉にゃ~」


「たい焼きかぁ。材料をそろえるのが大変そうじゃない」


「型さえなんとかなれば、あんとカスタードは業務スーパーで売ってるし,皮もこだわらなければホットケーキの素でいいと思う」


「何の型かわからないけど、ドワーフの職人に作らせればいいにゃ」


 なるほど、こちらで作るより安くできるかもしれない。


「試す価値はありだな」


「お菓子なんだけど、缶入りやガラス容器なら問題ないんじゃないかなぁ」


 缶やガラス容器か。そうか! 測り売りだ! 大きなガラス容器を用意して測り売りすれば軽いお菓子は無理だけど、ある程度の重さのお菓子なら売れる。串差しのお菓子もありだな。


 スマホで調べてみると、あるある。お菓子というか駄菓子だな。串カツや焼きするめなんかがある。招き猫の大きなガラス製の容器まで売っている。


「可愛い~」


「欲しいにゃ~」


 容器だけでも客寄せできそうだ。確か駄菓子屋の問屋が隣の駅前にあった。店売りもやっていたはずだ。これもいけそうだ。儲けはあまり出そうにないけど、マーブルの名を売るのにはいいんじゃないだろうか?


 ポテチとたい焼きの屋台と駄菓子屋の屋台二台が必要になるな。屋台の図面が欲しい。あいつに頼むか。


 マーブルとサラと話を詰めたので、下宿先の部屋に帰ろうとしたら


「あらあら、十六夜くんの分もお夕飯用意しちゃったのよ?」


「小太郎ちゃんのご飯も用意したわよ」


「にゃ~」


 こら、小太郎。勝手にご馳走になる気になるんじゃない。


「アキくん、食べていけばいいのに……」


 ぐっ…その上目遣いは反則です。沙羅さん。


「お邪魔じゃなければ……」


「あらあら、じゃあお夕飯までまだ時間があるからお風呂に入ってもらって。沙羅ちゃん、お背中を流して差し上げてね」


「お、お母様!」


「あらあら、小太郎ちゃんのお背中を洗って欲しかっただけなのに……沙羅ちゃんは何を想像したのかしら? ねぇ、お母様」


「やっぱり、お赤飯を用意したほうがいいかしら?」


 こ、この二人は……。


「おばあ様まで! アキくん、こっちよ!」


 風呂に入る前に大家さんに今夜の夕食はいらない旨を連絡しておく。沙羅に案内された風呂は、お客様用の離れの風呂なのだそうだが、どこかの高級旅館の内風呂のようだ。行ったことないけど。


 体を洗い、小太郎の体もわしゃわしゃ洗う。顎もしっかり洗ってやると気持ちいいのか目を細めている。ちゃんと猫用のシャンプーが用意されていた。至れり尽くせりだな。


 しっかりと小太郎の泡を流し終わると、自分から湯船にピョンと飛び込み猫かきで泳ぎ始める。お前は犬か!? 


 大家さんの家では絶対にやらないのにな。俺たち以外この風呂に入らないことを理解しているのだろう。


 小太郎の泳ぎを見ながら風呂を堪能する。こんな立派な風呂に入るのは、月読様の所の露天風呂以来だ。正直、いろいろあったなぁ。


 さてあがるか。


 小太郎を抱きかかえ脱衣所に……沙羅と目が合う。


「き、着替えとね。コタちゃんを預かろうかと……」


「ありがとう。じゃあ、小太郎をお願い」


 沙羅は小太朗をバスタオルで受け取ると、脱兎の如くいなくなる。


 ちゃんっと腰にタオルは巻いてますよ!






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