86.魂石の価値
早朝、サラが迎えに来た。いつもの車ではなく、もう一台ある高級車でだ。緊張する。そういえば、突然伺うのだから、お菓子とか買っていかなくていいのかな?
沙羅が風呂敷に包まれたものを見せる。
ちゃんと用意してきた? とら屋の特別厳選羊羹詰合せ? マーブルは昨日の夜に食べたって? 美味しかった? そ、それはよかったね……。
官庁街のとある高層ビルの駐車場に入る。駐車所に入る前に警備の人が車内を隅々まで検査、俺たちのボディチェックをされる。
ビルの中に入る時にも、更にボディチェックや持ち物すべて出させられチェックされた。
マーブルも小太郎も自由空間を使えるので意味ないけど。特に小太郎の自由空間には、マーブルから引き取った品物がすべて入っている。
執務室に案内され中に入ると、貴子様がPCとにらめっこ。貴子様はPCとにらめっこしながら、ソファーに座るように手で促される。
しばらくすると、俺たちの座ったソファーの前の椅子に腰を下ろした。挨拶をしてお土産を渡し、お茶会が始まる。
「あなたたちが見つけた地下世界がいろいろ反響が大きくてね、寝る暇もないくらいよ……コタちゃん成分が必要よ」
しょうがない。小太郎を渡すと小太郎にキスの嵐。沙羅もマーブルをキャリーバッグから出し渡すと両手に花状態。
「沙羅も猫を飼うことにしたようね。わかるわ~。許されるなら私も飼いた~い」
忙しいのは、
今回見つかった
「それで、今日来た件は? コタちゃんを連れて慰労しに来たわけじゃないでしょう? 大至急会いたいって言うくらいだから」
小太郎を引き取り、事前にマーブルから受け取った品の剣とポーション類一揃いと、薬草の図鑑をテーブルの上に出させる。
「!?」
自由空間に驚いたのか、品物に驚いたのかはわからないが、驚いていることは確かだ。
「どこから出したの? それにこれはなに?」
両方でした。
「質問にに質問を返すのは申し訳ありませんが、一つ聞いておきたいことがあります。魂石は誰との取引に使っているのですか?」
「!?」
「異世界人ですね?」
「……ど、どうして、そう思たのかしら?」
動揺しまくっているな。もしかして、国家機密なのか?
「この品物は俺が個人的に異世界人と取引して、手に入れたものだからです」
「!?」
貴子様目を大きく開き驚きを見せ天を仰ぐ。その後、心を落ち着かせるためとまた小太郎を奪われる。
「あなたたちは私を過労死させるつもりなの?」
沙羅がブンブンと首を振って否定。
「十六夜くんは刀の修練をしていたのではなかったの?」
「幽斎師匠の件はありがとうございました。残念ながら弟子にはしてもらえませんでした」
「そう。やはり石頭は変わらないのね」
幽斎師匠と過労死はとりあえず置いといて、沙羅のコネで大宮駐屯地の
もちろん、向こうに行ったことは言わない。
「取引レートは?」
大金貨一枚を見せて、
「魂石を五枚で買ってくれました。ただし、今回は今後の取り引きを考え、特別に利益なしで買い取ると言っていました」
「少し借りるわよ」
大金貨をハンカチに包み貴子様が立ち上がり電話をどこかにかけると、秘書さんらしき女性がすぐに現れる。
「これをすぐに過去の資料と比べて頂戴。大至急よ」
貴子様がハンカチに包まれた金貨を渡すと、秘書さんは一礼して出て行く。
「それでほかにもあるんでしょう?」
どうせ売らないと宝の持ち腐れなので、宝石の原石ととっておきの魔宝石を一つずつ出す。向こうでは宝石はあまり価値がないことを教える。そして、とっておきの魔宝石の使い方も。
昨日、戻ってからマーブルに魔法石の使い方を聞いて実際にやってみた。握って理力を感じ魔宝石に流すと魔法石が淡く光り、魔法石に理力が溜まっていく。
理力を流しすぎると体がだるくなるから注意にゃ、とマーブルから言われた。魔力枯渇というらしい。こっちだと理力枯渇になるのだろう。
「また、とんでもない代物を持って来たわね……」
俺の心配はこれらを権力行使で取り上げられること。ほかにも持っていることを話したが、話が決まるまでは出す気はない。
そうこうしてると、秘書さんと幾人かが資料を抱えやって来た。みんなでその資料を確認していくと、大金貨の写真があった。
「我々が手に入れた金貨の中で一番金の含有量が多いものです」
「価値は?」
「今の金相場換算ですと十万円前後かと」
「やられたわね。長年騙されてたってことね……」
どうやら国の機関と異世界人との取引で、だいぶ相違があったようだな。まあ、ぼられていたともいう。
「ちなみに魂石はどのくらいで取引を?」
「この金貨より質の悪い金貨で二枚ね」
貴子様が指さした写真を見ると少しくすんだ色の模様の違う金貨。半分以下の価値で長い間騙されていたわけだ。ぼったくりと言っていいな。どれだけの金額を騙されていたのだろう? 聞くのが怖いな。
マーブルも写真を覗いているので後で聞いたみるか。
一瞬、ニヤリとしていたから、何か知っているはずだ。
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