85.世界を股にかける商人
次はどこに行こうかとのんびり街を見ながら歩く
「そういえば、前に言ってた魔宝石ってなに?」
「魔力(理力)を貯めれる宝石にゃ。欲しいにゃ?」
「普通に買えるのか?」
「資金は潤沢だから問題ないにゃ!」
じゃあ、買おう!
魔術師ギルドという所に来ている。表は古びた洋館の佇まいだが、中は商業ギルドとさして変わらない、様式美というやつか?
カウンターでマーブルが受付の人と話ししているのを聞いていると、魔宝石の値段はピンキリみたいだ。それでも、安いもので小金貨五枚からで、上はキリがないそうだ。
ここにあるものでいい物は大金貨五枚の魔法石。それ以上は取り寄せになる。なので、大金貨五枚のものを俺と小太郎用に個人的に買う。マーブルは俺たちに売る分の大金貨一枚のものを五個買っていた。
「いい買い物をしたにゃ」
なのだそうだ。いつもは数が少ないらしい。それだけ重要があるということだろう。
次に向かったのは武器防具屋。
店主はマーブルの知り合いらしいのでゆっくりと見て回る。品揃えはマーブルが持ってきたのと同じ程度の性能の物が多い。その中でもいくつか目についた物をマーブルに買ってもらう。
そう、向こうで売るつもりだ。ギルドに売るのではなく宮内庁特別異威対策室室長の貴子様に話を持って行こうと思っている。
なぜか? それは魂石だ。この世界でも魂石を使っていた。魂石は国が管理しているという。もしかしたら、どこかの異世界人と取引をしているのではないかと考えたからだ。
それなら、俺たちも新規参入したい。俺はマーブルがいるので直接取引ができるし、品物の仲介でもいい。そのために貴子様と話をする必要があるので、興味を引く品を探さないといけない。
薬屋でポーション類を一通りと薬草の図鑑を買う。図鑑が異常に高かった。
貴子様との交渉に使うものは、まあ、こんなものだろう。
「こんなもんでいいのかにゃ?」
「とりあえずいいよ。今回はお試しだからね」
マーブルの家に帰るとアディールさんが玄関前でウロウロしながら待っていた。変質者!?
俺たちを見つけると走って来て、マーブルの肩を掴み激しく振る。
「マーブルさん! ノートとえんぴつ、消しゴムを大量に仕入れてください。言い値で買います!」
「な、なんにゃ~!?」
俺たちが帰った後、ノートとえんぴつを使ってみたそうだ。それがこの状況。あまりにも使いやすく、間違っても消せる。そして丈夫。もう、今までのペンや紙は使えないと言っている。
「どのくらい欲しいにゃ?」
「ノートは一万冊、えんぴつは五千本 消しゴムを五百個。もっと質のいい物があればそれも。あるのでしょう?」
「どうするにゃ? あきっち」
俺的には問題ない。おそらく商業ギルドは固定客になる。いや、商業ギルドがこの話を広めれば、多くのギルド関係が固定客になり得る。アディールさんが言ったように、一度使えば元の不便さに戻りたいとは思わないだろう。
そして、その品を仕入れられるのは俺たちだけ。独占だ。
なのだが、貴子様との話し合い次第だ。こちらの世界の品を円に換える手段がない今、大きい取り引きはできない。今現状、俺のポケットマネーでやっている。正直、資金が心許ない。
「とりあえず保留で。向こうとの交渉次第ですね」
「ぐっ…仕入れられる分でも…」
「まあ、買える分くらいなら」
「よろしくお願いします!」
さて、この後どうする? マーブルの家で一泊するか? まだまだ、見たいものはたくさんある。
「向うに帰るにゃ! あきっちの転移で!」
「えっ!? 帰るの?」
「夕ご飯はさらっちの家で食べるにゃ!」
できるだろうか? 理力は月読様持ちだから理論的には問題ないはず。とりあえず、マーブルの自由空間から小太郎を復帰させる。なんと自由空間を覚えていた!? さすがエリート猫又。
「にゃ~」
「こたっち、やるにゃ~」
「よし。じゃあ、やってみようか」
小太郎を肩に乗せ、マーブルと手を繋ぐ。俺の部屋を思い浮かべ、
「月虹」
ふわっとした感覚の後、俺の部屋にいた。成功だ。もしかして、俺の月虹って制限なしか? 月読様の所にも飛べたりして?
部屋の時計で時間を確認すると、まだ正午を過ぎたばかりだ。向こうとの時間が少し合わないがまあいい。沙羅に電話すると飛んできた。転移じゃなく車だけどね。
部屋に来た沙羅に頼んで、至急に貴子様にアポを取ってもらう。一応、理由を説明。
「世界を股にかける商人になるのね!」
世界じゃなくて異世界だけどね。
さっそく、携帯から電話をかけている。皇族のプライベート番号を知っている沙羅さんて……。
なんと、明日会ってくれることになった。さすが沙羅さん。
その後、沙羅に向うでの出来事を話して、明日貴子様と交渉する内容を話し合う。状況によってはマーブルにも話に加わてもらう。一応、猫姿の状態で連れて行く。
打ち合わせが終わり、明日天水家の車で迎えにくると言って沙羅がマーブルを連れ帰っていった。
ふと俺の部屋に大家さん一家以外で女性が入ったのは初めてだと気付く。そう意識すると、沙羅の甘い残り香が鼻腔をくすぐった。
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