84.商業ギルドとレイダーギルド
エルフさん、一つ一つ品物を見ていくごとにますます表情が険しくなる。
「これをどこでお売りになるので?」
「ぱっちょんの店に卸すにゃ」
「当ギルドでも買い取りしたいのですが。如何がですか?」
「値段次第にゃ」
マーブルとエルフさんとの駆け引きが始まったので、品物を見て首を傾げてる人たちに、商品の説明をしてあげるとあーだのうーだのと驚きの声をあげる。
「そういえば、マーブルさん、そちらの方は?」
「あきっちにゃ。友達にゃ」
「商業ギルドの副ギルド長のアディールです。お見知りおきを」
「
挨拶して握手しようとすると、アディールさん怪訝な顔をしながらも手を差し伸べてくる。強引に握手したが、もしかしたらこちらの世界に握手の習慣がないのかも。
「マーブルさんのお友達にしては、礼儀正しく教養も高そうですね」
「なんにゃ!? 喧嘩売ってるにゃ? 十倍返しで買うにゃよ?」
「いえいえ、褒めてるのですよ」
そんなこんなで、いくつかの品を売って商業ギルドを後にした。
レイダーギルドに来ている。ガラの悪い人たちが多いそんな中を、ずんずん進んで行くマーブル。
先輩たちに絡まれることなく受付で話をして登録。俺はこちらの文字を読むことも書くこともできないので、マーブルが代筆してくれた。
二センチほどの長方形の金属の板を受け取る。板に穴が開いるので紐を通して首から下げるそうだ。レイダーギルドの説明を受けるか聞かれたがマーブルが必要ないと断ってしまう。俺は聞きたかったよ……。代わりにあとでマーブルが説明してくれるらしい。
登録が終わりマーブルは別の受付に移動。
「買取を頼むにゃ」
「ギルド証を」
「あきっち、出すにゃ」
ということで、作ったばかりのギルド証を渡す。
「どのようなものの買取りですか?」
「竜の大回廊の地下五十階層のモンスターにゃ」
ギルド内が騒然となる。本当か? と疑いの目に晒される中、受付の方にギルド裏の解体場に出すように指示された。
なぜか、ギルド内にいた人たちがぞろぞろついてくる。
解体場にいた係の人に事情を説明して、マーブルが触手付のカブトガニを出すとどよめきが起きた。カブトガニを鑑定しても何も出てこない。レベル差がありすぎて俺の鑑定では見れないようだ。
係の人とマーブルが話をして、係の人が記載した紙を持って戻る。
「あきっち、いっぱいになった魂石を出すにゃ」
魂石を二つ出してマーブルに渡す。どうやら買い取ってもらうらしい。
「半分現金、半分は預けるにゃ。あきっち、ギルド証」
言われるまま出す。木皿の上に金貨が二十五枚置かれる。魂石一つ大金貨五枚、モンスターが四十枚らしい。
「なにしてるにゃ。早くしまうにゃ。それはあきっちのものにゃ」
「いいの?」
「いいのにゃ!」
なので、持っていた布製の袋にいれ、ギルド証と一緒にリュックにしまった。こちらの貨幣価値がわからないが、周りの様子を見るかぎり大金であることは間違いない。
「次行くにゃよ」
マーブルは速足で表通りから少し外れた通りに入り、通りに面した雑貨屋に入る。
「ぱっちょん。いるかにゃ~」
「あなた~。マーブルちゃんよ~」
店番をしているのは三毛猫のケット・シー。呼ばれて出て来たのはトラ猫のケット・シー。
マーブルの叔父さんと叔母さんなんだそうだ。パチェットさんとプルーネさんというらしい。叔父さんをぱっちょんって……。
そんなことを気にした様子のないマーブルは、カウンターに品物を並べていく。
「ほう。こいつは……」
パチェットさん、品物を見てうなってる。中身はオヤジなんだろうけど姿や表情が可愛い。許されるなら、モフモフしたい。
「バンバン売るにゃ!」
「仕入れは間違いねぇんだな?」
「ここにいる、あきっちが仕入れるにゃ」
「どんだけ手に入る」
凄まれているのだろうけれど、見た目は可愛いので頬が緩んでしまう。
「いくらでも」
「本気か? この石鹸や食器、王侯貴族が使ってるものが貧相に見えるほどの逸品だぜ。それだけじゃねえ! なんなんだこいつは! エルフ紙なんて目じゃねぇほどの代物まであるじゃねぇか! えんぴつ? なんじゃこりゃ!? われ、舐めてんのか!」
少々、興奮のご様子。興奮が収まったところで、向うから持ってきた種も渡すと育った実物を見ないとなんとも言えないと言われた。
なので、ぱっちょんの知り合いの農家さんに育ててもらうことになった。
昼時になったのでマーブルおすすめの店で昼食。小太郎も出してあげお昼にする。さすがにまだ自由空間は覚えていない。
俺は唐揚げサンドと柑橘系のジュース。マーブルはパンとホワイトシチュー。小太郎は鶏肉のささ身のボイルとニンジンスープ。美味しかったけど、味付けがちょっと物足りない感じがした。
午後は向こうに持っていく品物の買い出し。職人ギルドでドワーフから宝石の原石を買う。ほとんど捨て値だな。
「こんなものどうすんだ? てめぇらじゃ使いもんにならねぇぞ」
「大丈夫ですよ。これ、カットして丹念に磨くと綺麗ですよね」
「ほう。普人族のくせに、わかってるじゃねぇか! 気に入った。また来い!」
どうやら気にいられたようだ。珍しくマーブルが驚いている。ドワーフは仲間意識が強いので、一目で気に入られることは稀なんだそうだ。
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