83.自由空間スキル

「あきっち、急ぐにゃ! お宝にゃ!」


 マーブルが倒されたモンスターに近寄りモンスターに触れると、消えた? そして、何もしていないのに俺とマーブルの体が光る。レベルアップなのか? 結構長い間、光り続ける。


 マーブルが何かの石を出して確認している。よく見れば魂石だ。


「もっと持ってくればよかったにゃ……」


 俺の魂石を確認すると一つがMAX状態、予備に持っていた一つがMAXでもう一つが四分の三ほど溜まっていた。


「あきっちも持ってたにゃか。ラッキーだったにゃ!」


 確かにラッキーだ。何もしていないのに、二十万円が手に入ってしまった……。


「ここは危険にゃ。手負いじゃないほかのモンスターは見逃してくれないにゃ。行くにゃよ。にゃ!」


 また転移。俺的には少し狭いが、こぢんまりとした可愛い部屋だ。ここはどこだ? 


「うちの借りてる家にゃ。ゆっくりくつろぐにゃ」


 小太郎を服から出してソファーに下ろすと毛づくろいを始める。俺も装備を外しソファーに腰を下ろし、バッグからペットボトルを出して水を飲む。小太郎も飲むか?


「にゃ~」


「で、これからどうする?」


「まずは、商品の登録をするにゃ」


「登録?」


「真似されないように商品を、商業ギルドに登録するのにゃ」


 特許みたいなものか。やはり意外と文明レベルは高いようだ。


「一緒について行っていいかな?」


「問題ないにゃ。ついでにレイダーギルドにあきっちも登録するにゃ。」


「レイダーギルド?」


「モンスターを狩ってお金をもらうギルドにゃ」


 ラノベとかの冒険者ギルドか!? ファンタジーだ! っていうか、光明真会うち喫茶店ギルドも同じか……。


「そういえば、迷宮の中で倒されたモンスターが消えたけど、あれってどうなったんだ?」


「何を言ってるにゃ? 回収したのにゃ。あんな高レベルのモンスターをみすみす捨てるなんてもったいないにゃ」


「回収した? 普通、倒すと消えるよね?」


「あきっちは知らないのかにゃ? すぐに回収すれば消えないにゃ。所有権が回収した人に移るにゃ」


 なんか、凄い話になってきた。モンスターを回収するなんて話、聞いたことがない。


「どうやって回収すればいいんだ?」


「スキルや特殊なバッグがあればできるにゃ」


 そういえば、マーブルはそういったスキルを持っていたな。


「マーブルの自由空間みたいな?」


「にゃ!? あきっちは鑑定持ちかにゃ? 羨ましいにゃ~。自由空間は意外と覚える人が多いにゃ。商人には必須のスキルにゃ。時空間って上位のスキルもあるけど、あれはレアにゃ」


 覚えることが可能なのか、なら覚えたいなぁ。


「そのスキルの違いは?」


「自由空間はただの空間にゃ。時空間は空間の時間をある程度自由に設定できるにゃ。時間を止めることも早めることもできる不思議スキルにゃ」


 それは凄い。ますます、覚えたいね。


「時空間はどうやって覚えるか知られてないにゃ。でも、自由空間ならこたっちなら覚えられると思うにゃ」


「小太郎が?」


「こたっちは自由空間みたいなの使ってるにゃ。おそらく原理は同じにゃ。覚えたいかにゃ?」


「にゃ~!」


 水を飲んでいた小太郎が元気よく答える。


「じゃあ、思ったが吉日。始めるにゃ。こたっち、暇だから寝てるとにゃ」


 とマーブルが言うと小太郎が消えた。どこ行った?


「うちの自由空間に送ったにゃ。寝てればそのうち覚えるにゃ」


 なんという強引なやり方。でも簡単だ。


「じゃあ、俺も覚えることができるかな?」


「うーん。どうかにゃ? でもあきっちも転移スキル使えるから覚えられるかも? 親戚みたいなものだからにゃ」


「俺の転移はスキルじゃなく、加護で使えるんだけど?」


「加護のこと知らないからにゃ、わからないにゃ。こたっちが覚えたら暇なときにやってみればいいにゃ」


 そ、そうだね……軽いな。



 マーブルの家を出て歩きながら街並みを見る。レンガ造りの家が多くヨーロッパの街並みに似ている。道もしっかりとレンガで舗装されているし、ヨーロッパ中近世でよく聞く町が汚物で汚れているということもない。ゴミ一つ落ちていない綺麗な街並みだ。


 三十分ほど歩き大通りに出て、どちらかというと近代的な立派な建物に入る。中は役所そのもの。いくつかのブースに分かれていて、それぞれに受付がある。その一つにマーブルが歩いて行く。


 マーブルが受付の人と話をすると、別の部屋に案内される。


 数分待つと耳の長い眼鏡を掛けた金髪の男性とほか数人が現れた。あれがエルフか? イケメンはイケメンだが思ったほどではないな。普通のイケメンだ。エルフは超絶イケメンではないらしい。それでも十分イケメンだ。女性のほうはどうなんだろう?


「お久ぶりですね。マーブルさん。今日は珍しい商品をお持ちだとか」


「そうにゃ。凄い商品を手に入れて来たにゃ。うちの独占販売にゃ。登録をお願いするにゃ」


「ほう。何やら凄い自信ですね。それでは拝見いたしましょうか」


 マーブルがテーブルに品物を並べていく。エルフさんの表情が険しくなっていく。


「これをどこで?」


「教えないにゃ」


 当たり前だ。全てが異世界印のメイドイン異世界の製品。口が裂けても言ってもらっては困るからね? フリじゃないからな!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る