81.異世界情報

 ファングベアーの革鎧はいいなぁ。見た目も黒の革鎧で格好いい。欲しいなぁ。俺の使っている自衛隊の装備より高性能だし。


 武器は刀を練習しているので、幅広剣は捨てがたいけど今は浮気する気はない。


「この剣、格好いいよねぇ。私が使っていい?」


「構わないよ。代わりに革鎧ちょうだい」


 双方納得の上で沙羅は剣、俺は革鎧を得た。


 ポーション類は常時持ち歩きたいので割れないように工夫が必要だな。ガラス製試験管のちょっと小さいバージョンなので、それ用のバッグでも作ればいいかも。ウレタンで保護すれば割れないだろう。中身を割れにくい容器に移し替えるのも手だ。


 宝石の原石は……保管部屋に飾っておこう。いつか、日の目を見る日もあるだろう。


 取りあえず、一通り品物は見たので、昼食をとりながらお互いの一般常識のすり合わせ行った。


 向こうの貨幣は金貨、銀貨、銅貨で各大小がある。銀行カードのようなものもあり、思っていたほど低い文明ではないのかもしれない。大口の取引だと普通に手形取引も行っているそうだ。


 しかし、社会体制は典型的な封建社会。王国、帝国があるが、共和国などの民主主義はない。中世から中近世のヨーロッパみたいなものだと推測。ラノベのような魔王はいないらしいが、魔族の国はあるそうだ。今現在は各国での小競り合いはあるが、大きな戦いはないそうだ。


 人族、エルフ族、ドワーフ族、魔族、妖精族、ドラゴン族が国を持っている。種族的な身分差はなく、国を持たない少数種族もいる。


 町の外にはモンスターが闊歩しているが、強いモンスターは町周辺には出ない。が危険は危険。商人や冒険者以外は町や村の外に出ることはほとんどない。町や村からの移動は定期的な護衛付きの駅馬車を使用。ここでモンスターを怪異としないのは、生態系が違うような気がするので、モンスターと定義した。


 科学という概念はあり、その職業は機巧士と呼ばれる。だが、科学より魔術が発達している。こちらでいう理力を使った護法アビリティーに近く、加護がなくても使える。学問として発達していて護法アビリティーやスキルに関係なく術が使えるようにしたもの。才能に関係なく使えるのはいいな。


 別枠で魔法、魔導というのもあるそうだ。こちらは契約で使えるようになるとのことなので護法アビリティーのことなのかもしれない。


 錬金術 理力や魔術を利用した機巧士が操る術。機巧士イコール科学者みたいなものか? 興味はある。


 医療 医術、薬学は普通に発達している。ポーションを見る限りこちらの世界より進んでいる可能性もある。


 神官と呼ばれる神に仕える者の一部(極稀)に神聖魔法と呼ばれる術を使える者がいる。その力は神の如く凄いらしいが、神に認められた人だけ使えるらしく国に一人いるかいないからしい。


 輸送、移動手段は基本馬、馬車。大きな町同士だと列車が走っている。数は少ないが飛行船もあるそうだ。稀に転移を使えるスキル持ちがいる。


 加護の概念はあるが、マギの概念はない。加護は持って生まれたものと、何かの拍子で得られることがある。テイマーという職業もないそうだ……残念。


 マーブルの住むソールリシア王国は、大陸の西にあり三大大国の一つで他種族国家。


 町や村でさえ上下水道も完備されていて、浄化設備もこちらの世界より発達している。医療 医術、薬学と同じように、もしかするとこちらの世界より発達している可能性がある。


 なのに、生活水準はあまり高くない。こちらの世界には電気がある分、生活水準は遥か上のようだ。


 気になる点はやはり魔術だろうか。漫画やラノベに出てくるような魔術が使えるのだろうか? そんな力を人が制御できるのか? 気になるな。


 詳しい話はおいおいすることにして、ここに用はないので帰ることにした。


 マーブルは当分沙羅の家に泊まり、この世界の情報収取……もとい、食い倒れしたいらしい。


 偽装工作のためリヤカーに鉱石を積んで帰る。荷下ろしして、マスターギルド長に挨拶して帰ろうとした時、目ざとく葛城さんに猫化したマーブルを見つけられた。このモフラーめぇ……。


「その子はなんなの!?」


 その子はなんなの? と聞かれても……どうしましょう?


「わ、私の知り合いに、少しの間面倒見てと頼まれたんです! コタちゃんと仲がいいので連れてきました。マーブルです」


「にゃ~」


 小太郎、空気を読んでマーブルにスリスリ。


 沙羅、小太郎、ナイスだ! 葛城さんも納得したようで、ほかの女性の探究者シーカーさんたちとモフモフし始める。


 マスターギルド長もいつもの小太郎のカリカリをマーブル分も皿に出して、小太郎とマーブルの前に出す。


「にゃ~」


「みゃ~」


 小太郎が一度食べて見せてから、マーブルにカリカリを食べるように促すと、マーブルも美味しそうにカリカリを食べ始める。


 お前は猫か!? ん? 猫でいいのか?


「コタちゃんも、うちに泊まらない?」


 沙羅はマーブルに飽き足らず、小太郎にまで勧誘。沙羅の家では豪勢な料理がでるからなぁ……。


「にゃ…」


 一度、沙羅を見上げてから俺のもとに来てスリスリ。たまにデレる小太郎、愛い奴じゃ!


「残念~」


 なのに、下宿先に帰ると、俺がいることを忘れたかのように加奈ちゃんにべったり……。ツンだな……。



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