73.ラーメンの後のかくれんぼ

 翌朝はうさぎ師匠と軽く組手をしてから朝食。その後はラーメンのスープ作り。


 大き目の鍋にいろいろな野菜をとお肉をひき肉状にして投入。後はこまめに灰汁をとる。いい具合に煮込んだら鍋の中身をこして出し冷ます。


 冷めると上部に油が固まるので、その油は捨てると黄金色のスープが残る。鶏ガラを使っていないので、旨味やコクが少し弱いので鶏がらスープの素をちょい足し。


 ここで問題発生。メンマとナルトが無い! チャーシュー、煮玉子、海苔は用意した。メンマとナルトのことがすっかり頭から抜けていた。


 うさぎ師匠に言って一緒に探す。メンマはすぐに見つかった。それも大量に。瓶詰のメンマが大量にあったのだ。某有名食品メカーのものから、地方の特産品、有名ラーメン店のものまで選び放題。これは酒のつまみとしてもいけるな。


 ナルトは苦労した。諦めかけたところで、うさぎ師匠がちくわぶを見つけた、全然違うがちょっと似てるから代用するかと思った時に閃く!


 なるとは練り物だ。と、おでんかかまぼこ辺りにあるのではないだろうかと。ありました。おでんの詰合せ、かまぼこの詰合せのどちらにも入っていた。


 これで食材は万全。具材を準備しスープを沸かし、麺を茹でる。醤油は岐阜のたまり醤油を使う。


 トッピングはチャーシュー、メンマ、なると、海苔、ホウレン草、そして煮玉子。完璧な布陣だ!


 熱々を月読様の目の前に出す。


「うどんかえ?」


 おふぅ……ラーメンを知らないなんて、人生の半分は損してると思う。


「うどんも美味しいですが、これは一度食べたら病みつきになるラーメンというものです」


 うどんで人生を狂わせる人は少ないけど、ラーメンで人生を狂わせるせる人は多いだろう。中途半端な思いでラーメンの森に入り込めば、迷って出てこれなくなる。現代の迷宮ラビリンスだ。


 それにラーメンの超人は有名だけど、うどんの超人ってあまり聞かない。自分のアンパンで出来た顔を食べさせるテレビにうどんマンは出ていたけどマイナーだしね。うどん県に行けばゆるキャラくらいはいるかもしれないが。


 月読様がスープを一口飲む。


「こ、これは、さっぱりしているのになんという旨味と深み」


 食レポみたいなことを言った後は、一言も発せず黙々と食べ、スープも飲み干し完食。そして俺を見てニコリと笑い、


「もう一杯、用意してたもれ♪」


 二杯目ですか? まあ、材料は十分にあるから作れるけどね。その細い体のどこに入っているのだろう。お菓子も絶え間なく食べてるのに。


 醤油ラーメンは気に入ってくれたようだから、、次は味噌ラーメンにしてみよう。


 野菜炒めをうさぎ師匠に作ってもらっている間に味噌タレ作り、仙台味噌をベースにみりん、豆板醤、すりごまなどで作る。


 麺は太麺のストレート。もちもちで食べ応えがある。スープに入れ、うさぎ師匠が作った野菜炒めをのせれば完成。二杯目としてはちょっとヘビーかも。


 それでも、月読様はペロっと完食。


「これも美味よのう~。満足、満足」


 じゃあ、俺は塩ラーメンで行こう。昆布で少量出汁をつくる。それに藻塩と酒、砂糖を加え、胡椒など味を調える。使う麺は 細麺のちぢれ麺。スープがよく絡むようにね。具材は醤油ラーメンと同じ。


 座卓に持っていくと箸を持って待ち構えている月読様がいる……満足したって言ってましたよね?


「さっぱりな味なのに、なんとも言えぬ奥深さ。これも捨てがたい」


 三杯目もスープまで完食。俺のラーメンが……もうスープがありません。


 うさぎ師匠が肩をぽんぽんと叩き、皿を渡してくる。焼きお握りだ。醤油と味噌の二つがある。うさぎ師匠~!


 うさぎ師匠はこうなることがわかっていたようだ。さすが、うさぎ師匠。うさぎ師匠が作った焼きおにぎりにはチャーシューが具として入っていた。わかってらっしゃる!


 うさぎ師匠とならラーメン屋を開けると思う。必ず、有名店になるだろう。味だけでなく、そのプリチーなお姿でも。小太郎との二枚看板なら尚だ。


 お昼寝が終わり、組み手をするのかなと思ったら、予想外のかくれんぼ。最初はうさぎ師匠が鬼で俺が隠れる。始めてみれば瞬殺……。


「聖臣。ただ遊んでおるわけでわないぞ。己の気配を消して、周りと同化せねば、うさぎにすぐに見つかるぞえ」


 なるほど、そういう意図でしたか。気配を殺し、闇に紛れて敵を討つ。忍者みたいで格好いいじゃないか。俄然、やる気が出てきた。


 息を殺し、物陰に隠れ身を潜める。なのに、すぐに見つかる。なぜ?


「気配が断てておらぬうえ氣も消せぬとは、聖臣は駄目駄目よのう。それではいつまでたってもうさぎの完勝よ」


 気配はわかるけど、氣を消す? 今は氣を纏っていないけど?


「万物に氣は宿る。そこに生えておる草木にでさえ、大なり小なり宿っておる。しかし、命の無きものには宿らぬ。なれば、氣を断てることができれば、それは生あるものではない。わかったかえ? 聖臣からは駄々洩れよ」


 氣と気配はそもそも同じもの? その氣を断つことができないと、すぐに居場所がばれる。気配を断つということは氣を断つことなのか。別ものと思っていた。


 でも、どうやって氣を断つんだ? 俺自身、氣を出しているつもりはないのだが……。


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