72.修行目標

「聖臣。怪異モンスターが見逃してくれるとでも思っているのかえ? 怪異モンスター戦うが本能。ありえぬ」


 確かにそのとおりだ。逃げ出した怪異モンスターを見たことがない。たまに、命乞いをしてくる怪異モンスターもいるらしいが、それすらまだ見たことがない。


「よいか、聖臣。怪異モンスターと出会えば、戦うしかない。確実に出会わない術を持つか、出会っても確実に逃げられる術を持つか、あるいはたとえ瀕死になれど必殺の技を放てるようになるしかない。まあ、話のできる知性の持った怪異モンスターもいなくはないが、それは稀よ」


 敵わないほどの強敵に確実に出会わない術、出会っても確実に逃げられる術、瀕死になるけど必殺の技を放つ。前の二つは是非とも覚えたいけど、最後のは嫌だなぁ。瀕死にならないならいいんだけどね。


「ゆえに! 聖臣にはこの三つのどれかを、今回の修行で身につけてもらうゆえ、覚悟せよ!」


 うさぎ師匠が腕をブンブン振ってやる気を見せている。覚えるのは俺なんですけど? 教える側としてやる気を見せているってことですか?


 サムズアップしてみせるうさぎ師匠。お手柔らかにお願いします……。


 修行の続きと思ったら、うさぎ師匠に風呂に入れのゼスチャー。夕食の支度の時間だね……。


 食材を確認していると、なぜか中華麺がある。残念ながらスープの素は無い。鶏ガラは……無いな。でも、俺が買ってきていた調味料の中に鶏がらスープの素がある。今日は無理なので、明日のお昼にラーメンを作ろう。


 今日は……餃子でいこう。材料の下準備はうさぎ師匠に任せて、皮を自前で作る。こんな時、料理本が役に立つ。米粉もあるので蒸し餃子にも挑戦しよう。


 前菜は棒棒鶏バンバンジーサラダ。デザートは杏仁豆腐といきたいところだけど、材料がないので牛乳寒天。ミカンの缶詰を見つけたので入れよう。


 餃子にはビールだな。地ビールを数本冷やしておく。


 材料の準備も整い後は包むだけ。本に書いてあるとおり皮を伸ばして具を包めば、意外と上出来。うさぎ師匠も同じように餃子を作っていくが、職人技顔負けのスピードと出来栄え。うさぎ師匠、万能すぎ……。


 俺は、蒸し餃子の海鮮餃子作り。海老と蟹、高級食材のフカヒレや松茸をふんだんに使った贅沢餃子だ。


 明日のラーメンのためにチャーシューも作っておく。味をしみ込ませるため、寝かせておく時間も必要だ。寝かせる時に茹で卵も入れておこう。煮玉子は正義だ!


 屋台で使うような大きな鉄板を見つけたので、それで一気に餃子を焼く。隣では蒸篭で蒸し餃子を蒸している。


 座卓に前菜の棒棒鶏と地ビール。月読様はあれからワインとチーズにはまったようで、今日もワインとチーズを用意している。俺は好きではないがメロンと生ハムも用意してみた。


 焼き餃子、蒸し餃子両方美味しそうにできたので皿に盛って持っていく。


 既に一本ワインを開けた月読様が、生ハムメロンに挑戦していた。本来は甘すぎないメロンを使うのだが、最高級のメロンしかないので超が付く甘いメロン。合うのだろうか?


「しょっぱさが、甘みによって中和され、ちょうどよい味よ。これはなかなかにワインと合う!」


 そ、そうなんだ……俺は別々に食べたほうが美味しいと思うけどな。


 さて、餃子は熱いうちに食べるのがいい。地ビールを開け、醤油、酢、ラー油の準備もよし! カリッと焼けた餃子をタレにつけ、かぶりつく。熱々でハフハフしなっがら食べ、地ビールで流し込む。旨い!


 海鮮蒸し餃子も海老、蟹の旨味が出て最高。フカヒレと松茸は……貧乏人のせいか、はるさめとシイタケとの区別がつかない。いや、美味しいよ?


 熱い餃子はビールと合うが、少し冷めた餃子はご飯とベストマッチ。タレをつけてオンザライス! 口に放り込めばご飯と餃子の肉汁とタレが見事なマリアージュ。おめでとうございます! 最高の相性です!


 月読様も満足そうに食べてくれているが、餃子はワインと合うのだろうか? まあ、満足してもらえればそれでいいか。



 夕食後、露天風呂に入って体の疲れを癒やす。一緒に風呂に入っている猫やうさぎと戯れると精神も癒やされる。ここはいい所だ。


 風呂を上がり部屋に戻ればうさぎ師匠がやってくる。今日からはマッサージの前に、瞑想での氣の鍛錬をするそうだ。


 座布団の上で座禅を組んで瞑想。自分の中の氣を感じ、体全体に極力薄く氣を纏う修練らしい。


 瞑想して、氣を全体に纏うが、ポカポカとうさぎ師匠に頭を叩かれる。どうやら、もっと薄くしろということらしい。


 手本を見せてもらうと、相当注意しないとわからないくらいの氣を纏っている。常時、この状態でいられるようになれれば上出来らしい。今回はそこまで望んでいないようで、取りあえず、この状態になれるようになることが課題のようだ。


 残念ながら本日は合格をもらえなかった。その罰ゲームなのか、強烈な足つぼマッサージをされ、のたうち回わされ、せっかく風呂に入ったのに、汗だくにされた。もう一度、風呂に入ってから寝よう……。

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