71.うさぎ師匠の本気
風呂から上がる。待遇が変わったのではなく、昼食を作るので体を清めろ、ということだったらしい。ですよねー。
うさぎ師匠にお子様用の料理本を渡す。文字より絵で描かれているのでわかりやすいだろうと思って買ってきたものだ。
その本を見ながらハンバーグ作り。本では牛肉と豚肉半々での分量になっているが。ここは百パーセントA5和牛でいく。たんに俺の欲望重視だ。
添えものにポテト、ニンジン、ブロッコリー、コーンを用意し、フライパンで火を通しておく。ついでにマセドアンサラダも作った。
和牛ハンバーグを焼き、残った肉汁で玉ねぎ醤油ベースのソースを作り完成。
俺はハンバーグは少しでいいので、このほかにうさぎ師匠に刺身の盛合せも用意してもらう。魚を捌くのは、うさぎ師匠のほうが上手だからだ。
「おおぉー。愛しのハンバーグではないかぇ~。聖臣。言いたいことはいろいろあれど、今までのこと看過するゆえ感謝いたせ」
「ははぁー。ありがたき幸せ」
うさぎ師匠が白い目で見てるけど気にしない、月読様のご機嫌を取るには食べ物で釣るのが一番だ。
アツアツのハンバーグを冷める前に頂く。俺のは一口サイズ。月読様のハンバーグはビックサイズ。箸でハンバーグを割ると肉汁が溢れ出す。料理番組で見る光景だ。家ではこうはいかない。肉を捏ねるときに水を入れるとなるらしいが。
ソースを付けず一口。ハ、ハンバーグなのになんという口溶け!。溶けるハンバーグ初めて食べた。旨すぎる! ハンバ~グッ! って叫びたくなった。やらないけど。
残りの一口分はソースを絡め口に放り込む。食べ終わって後悔。なぜ、オンザライスしなかったんだ! もう、ないじゃないか……。
月読様を見ると目線を逸らし、ハンバーグの載った皿を隠すように移動する。しょうがない、また作ればいいや。
さあ、お刺身天国に突貫だ。
昼食後のお昼寝をしてるとうさぎ師匠に起こされる。修行の時間だ。そう、俺は遊びに来たわけじゃない……ないんだからな!
うさぎ師匠が可愛い手で指を立て、ちょいちょいとジェスチャー。かかってきなさいってことだな。
いいでしょう。お見せしましょう。ネオ聖臣の力を!
最初は氣も宵月も使わず、本来の地力のみで立ち合う。うさぎ師匠、強い。強いというよりやりにくい! そうだった、うさぎ師匠は背が低いんだった……。
一瞬隙をつかれ、投げられる。空は青いなぁ。ではなく黒いな。青いのは水をたたえた地球だ。
まあ、こんなもんだろう。一つギアを上げよう。宵月!
一気にうさぎ師匠との間を詰める。一瞬、ぴくっとしたうさぎ師匠だけど、何事もないように反応してくる。さすが、うさぎ師匠。
先ほどより動きがよくなり、攻撃に力も乗っている。なのにうさぎ師匠は意に介した様子はない。くっ、やはりこの程度では、まだまだか……蒼い地球は綺麗だな。
さすが裏ボス。半端ない。ならば、こちらも本気を出そうではないか。まだ、全然使いこなせていないが、膨大な氣の量に頼った、力任せの身体強化だ!
体の奥にある氣を引っ張り出す。氣を使えば減る。自然に回復もするが、瞑想などをして氣を練ると回復が早い。
風老師が授けてくれたのは氣もそうだけど、氣を溜めておく器のほうが重要な気がする。元の俺の氣を保有できる量を水たまりとすると、今の氣を保有できる量は湖だ。雲泥の差だ。
洗練された使い方じゃないけど、そんなのは追々覚えればいい。今はうさぎ師匠に一矢報いることが大事。
行きますよ。うさぎ師匠!
宵月と氣による身体強化の併用で、およそ七割五分増しの強化になってるはず。さっきまでの俺とは違うぞ!
なんて思っていた時が一瞬ありました。俺が使えるならうさぎ師匠だって使えると、なぜ考えてなかったのだろう?
うさぎ師匠に突っ込むとうさぎ師匠に異変が起こる。一瞬動きを止めてしまうほどの威圧が、うさぎ師匠から発せられる。ちっさいうさぎ師匠が途轍もなく大きく感じ、これは乗り越えることができない壁だと理解してしまった……。
情けないが、腰が抜けたようにその場にペタンと座り込んでしまった。完全に戦意喪失だ。あんなのに勝てるわけがない……。
「聖臣。この月読の子孫であろうに、なんと不甲斐ない。死中求活、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあるというに……敵の前で戦意をなくすとは何事か。心も鍛えねばならぬな」
き、厳しくないでしょうか? どう見ても、うさぎ師匠は風老師でさえ比較にならないほどの強者。風老師にでさえ手も足も出ないのにどうしろと? それにうさぎ師匠も大人気ないのでは?
「甘い、甘いのう~、聖臣。このチョコ菓子よりも甘い考えよ」
ぱくぱくとチョコ菓子を口に放り込みながら言われてしまった。うさぎ師匠も腕を組んでうんうん頷いている。
「この世にうさぎくらいの強さのものなどごまんとおるわ。人に限らず
正直、その場にならないとわからない……。ここまでの実力が違うと逃げることも難しいと思う。戦う意思なしと気配を殺してじっとしているのが一番のような気がしないでもない……。
「甘い、甘いのう~、聖臣。まさか、このアイスよりも甘いとは」
いつの間にか高級アイスを食べている月読様に、また言われてしまった。
それより、さっきチョコ菓子食べてましたよね? もう食べ終わって今度はアイスですか!?
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