66.氣
食事の準備も整い食事を始めると、女性陣は小太郎にチヤホヤ。いつもはその場所は以蔵くんの場所なのだろうが、今日は小太郎が独占。以蔵くんはどうしていいかわからずウロウロ。幽斎師匠の所に行くが、幽斎師匠は酒を飲んで気にした様子もない。
結局、以蔵くんはクーンっと鳴き俺に寄って来る。責任取れよってことだろうか? 仕方ないのでモフモフしながら、たまにご飯をあげた。
客間で寝たが、なぜか小太郎の代わりに以蔵くんが布団の横で寝ている。寝場所も奪われたようだ。
翌朝、以蔵くんに頭を叩かれ起こされた。時間を確認すると六時。以蔵くんは賢いようだ。着替えて顔を洗い、以蔵くんと居間に行くと朝食の用意がされていた。
お妾さん二人は日中は鎌倉市内で仕事をしているそうなので、朝食をとるとご出勤。小太郎と離れるのが名残惜しいのか、ぎりぎりまで小太郎をモフモフ、チュッチュしていた。以蔵くんはそれを見てちょっとスネた感じだ。
朝食後、俺は幽斎師匠から縁側で氣についての講義を受ける。
氣とは誰でも持っているもの。元気、病気、気配全て氣からくる意味がある。
氣は気の旧字だが意味が違ってくるので注意。本来は米を使ったものが正しい。米は八方広がりを示すのに対して、〆は氣を抑えることになる。
氣は内に秘めたエネルギーで、使い方によって様々な効果を発揮する。病気という言葉を見ても病の氣が体の中にあり、氣を使いこなせばその病の氣すら体の外に出すことができるようになる
氣は誰でも持つ反面、自在に使いこなせるようになるには、たゆまない努力と修練が必要。
例えて言うなら萎んだ口の閉まった風船。まず、口を開け氣道を作ることから始める。氣道ができると風船の中にある氣を使えるようになる。その氣の使い方を学び、氣を増やす修練も必要になる。最初は萎んだ風船も修練を重ねることにより氣が増え膨らんでいく。
それを死ぬまで続けることにより、氣を自在に操れるようになるという。
「氣を覚えれば武器に氣を載せられる、氣の載った武器は性能が格段に上がる。氣を鍛えれば普通斬れないものでも斬れるようになる。何より己の身体能力が上がる」
ほかにも、一瞬氣を高めることにより、
「どうやって覚えるのですか? 瞑想はやっていますが全然です」
「氣だけに気合いだ!」
なるほど、気合か……んなわけあるかぁー!
「まあ、冗談だ。一番いいのは直に見て感じるのがいい。レギオンの連中はほとんどの者が氣を身に付けているから、お前も見たことがあるかもしれないがな。明日、儂自ら見せてやろう」
午後は修行かと思っていたら、奥様と鎌倉観光。以蔵くんにリードを付けて小太郎は以蔵くんの背に乗っている。
ハイヤーで鎌倉駅に移動して小町通りでショッピングをしながら、老舗のパン屋で昼食。
由比ヶ浜に移動して、浜辺を奥様に腕を組まれてのお散歩。
「うちの子たちはこんな風に腕を組んで歩いてくれないのよ。寂しいわ……」
小太郎も以蔵くんも走り回って満足したので、最後の目的地鎌倉大仏を見てから、近くの喫茶店でお茶を飲み終了。観光できて嬉しかったが、江ノ電にも乗ってみたかったな。
その日の夜、小太郎とお風呂に入っていたら、お妾さん二人が風呂場に乱入しようとして奥様に首根っこを掴まれ退場していったこと以外は、何事もなく夜が明けた。
朝食をとった後、幽斎師匠と鶴岡八幡宮に移動。研修道場と呼ばれる建物から地下に降りるとギルドだった。
「珍しいですね。幽斎さんが人を連れて来るなんて。お弟子さんですか?」
スーツを着こなしたキャリアウーマンが話しかけてきた。
「弟子は取らねぇて言ったろ。余興だ。余興」
取りあえず、
「そんなもん必要ねぇ。さっさと行ってさっさと終わらすぞ」
苦笑いしている女性にぺこりとお辞儀をして、幽斎師匠の後を追っかける。
さらに地下に降りてロッカールームで着替え、幽斎師匠とゲートをくぐる。
ゲートから少し離れた場所で立ち止まる。幽斎師匠はいつもの作務衣姿。違うところは刀を持っていることくらい。
「この辺の
遠くに見える
餓鬼と邪鬼の攻撃範囲に入った幽斎師匠に鋭い爪が襲い掛かる。普通なら大怪我だ。餓鬼と邪鬼が何度も動かない幽斎師匠を攻撃するが、幽斎師匠はビクともしない。
一瞬、幽斎師匠が大きく見えた感じがした後、餓鬼と邪鬼の動きが止まった。なんだ、今のは? 幻覚か?
動きの止まった餓鬼と邪鬼にを一刀を振るっただけで首が跳ねる。
「氣を全身に張ればこんなもんだ。氣はな、なんにでも張ったり載せたりできる。だから、俺くらいになれば、この薄っぺら服でさえ鋼鉄のような硬さになるってわけだ」
幽斎師匠の言うとおり、作務衣にほつれ一つない。
「まずは十六夜の氣道を開ける。本来なら、時間をかけて修練して開けるもんだが、時間がないからな、少しばかり強引にいくぞ」
ゲートの近くまで戻り、座禅を組んで瞑想する。後ろに幽斎師匠が座り、俺の背中に両手を添える。だんだん、背中が温かくなってきたかと思ったら、体の中に何かが無理やり入り込んでくる感覚に襲われ、意識が暗転した……。
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