61.拉致そして侠客
「何食べたい?」
「寿司」
「天ぷら」
「すき焼き」
「焼肉」
みんな、バラバラやん……。さてどうする?
「お店、紹介する? 全部は無理でも、たいていは注文を聞いてくれるお店を知ってるよ」
「お、お願いしていいかな?」
「うん。聞いてみるね」
天水祖母がよく使っているお店らしく、天水祖母からお店に予約をいれてくれることになった。
五人での予約をしようとしたが、ジミーたちが男だけで食べるより女性がいたほうがいいと駄々をこね、結局食事代はジミーたちが持つということで沙羅も一緒に行くことになった。
お店の前に立っている。お店には違いないが、ここってどう見ても料亭だよね。こんなラフな格好で入っていいのか?
ジミーたちは大騒ぎ。どうやらこの料亭、本来なら
というか、それ以前に小太郎はいいのか? 横を見れば沙羅がさも当然とばかりに小太郎を抱っこしている。そして、そのまま部屋に案内された。
席について注文。お品書きなんてない。さっき言っていた料理を沙羅がお願いする。さすがに焼肉は無理のようで、代わりに和牛の石焼になった。値段を聞くのが怖い……。
「コタちゃんはお刺身ね」
「にゃ~」
小太郎専用のお刺身盛り合わせも注文される。小太郎もお客様の一人のようだ。これで、今後は小太郎だけでもご飯を食べに来れるな。
そうこうしてるとビールと先付が運ばれ、年長者のジミーの音頭で乾杯。沙羅も乾杯したが、一口くちをつけただけで飲む気はないようだ。ジミーたちもいつものバカ騒ぎせず、食事を楽しみながら飲んでいる。
コースを頼んだわけじゃないけど、いろいろな料理が運ばれてくる。日本人の俺でさえ、どんな材料が使われているかわからない料理が出てくる。ジミーたちは臆することなく箸を進めているが、逆に俺は戦々恐々となりながら、今まで食べたことのない料理を食べ進める。
美味しいんだけどね。どうしても値段のことが頭を横切ってしまう。貧乏人の性だな……。
沙羅は美しい正座でこれまた美しく食事をしている。美人は何をしても様になる。小太郎は沙羅から料理をもらってご満悦。小太郎専用のお刺身の船盛が用意されている。ちゃんと小太郎が食べやすい大きさに切られている心使い。おそらく、元々ペット同伴が許可されているのかもしれない。
それにしても、ペットにふぐ刺しってありなのか? 俺でさえ食べたことがないのに……。
お寿司と天ぷらは各自に一人分ずつ用意され、すき焼きはアレックの前にだけ用意された。すき焼きは和牛の石焼と共に料理人の方が来て作ってくれた。
和牛の石焼、まじ旨かった……。口に入れると噛まずとも溶ける感じ。塩で食べたのも旨かったが、わさびと醤油で食べたのが俺には合っていたな。
ジミーたちはビールから日本酒に移っている。それも、ひれ酒にハマっている様子。火をつけるのが楽しいようだ。俺は大吟醸を花冷えで楽しむ。滅多に飲めないいい酒だからな。
みんな満足で店を出た。俺は沙羅のお迎えの車で送ってもらう。ジミーたちは、夜の街に繰り出すらしい。明日は休みにしたそうだ。羽目を外しすぎないようにな。
「じゃあ、金曜の夜に」
「「「「おう!」」」」
「にゃ~」
「楽しい人たちだったね」
「ああ、いい
なんて、思っていたのは短い時間。次の日も夕方大学の校門に現れ拉致される。さすがに沙羅は苦笑いしながら手を振って拒否。結局、金曜日も現れ土曜の朝に二日酔いで一緒に大宮駐屯地に行く羽目になった。
「昨日はお楽しみだったようね」
変なことはしてません。でも、昨日どころか一昨日、一昨々日もです……。
「ハァ……まあいいわ。みんなちゃんと動けるのよね?」
「「「「「イエス、マム!」」」」」
「ちょっとやめてよ! 私、あなたたちとほとんど歳は変わらないでしょう!」
ほとんど? ……すみません。いえ、はい、変わらないです。それにそういう意味で言ったわけじゃないんですけど。
「さあ、行くわよ!」
「「「「「おう!」」」」」
今日、一緒の風間曹長がこのノリについてこれてない。真面目な人みたいだな。
目的のエリアまではジミーたちが
さすがに、空を飛ぶようなことはないけど、繰り出す剣技は目を見張る動き。正直、見ていて格好いいと思ってしまう。侍が静とすると侠客は動だな。
四人は入れ替わり立ち替わり、演武のように立ち回る。どうやら、動きを俺に見せているようだ。武術を習いたいと言ったからかな。
「どうだ。俺たちの動きは」
「凄いの一言だね」
「学んでみたいか?」
「学びたい」
「よし。いい師匠を紹介してやる」
日本に住んでいるカンフーマスターを紹介してもらえることになった。実戦的な戦いを習うチャンスだ。
うさぎ師匠から教わった格闘技は基礎の基礎。時間があればその先も教えてもらえたと思うけど、時間的に基礎を学ぶので精一杯だったからな。機会があればまた行きたいな。
「にゃ~」
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