60.義兄弟
大学での昼休み、沙羅に状況を説明すると、
「面白そ~う~! 私も行きた~い~!」
と言う。
変われるものなら変わりたい。二日間、月読様への奉納が滞っていたので、プンプンとお怒りのお言葉が書かれた紙が束になってテーブルの上に載っていた……。
これからはそういう時は事前に奉納するか、場所は関係ないのでちゃんと奉納するように書かれており、滞っていた二日分+αを奉納することで許してもらえた。なぜか、うさぎ師匠の乾燥フードも奉納させられることに……。うさぎ師匠、気に入ったのか?
そして、また金曜の夕方に新幹線で移動し大宮駐屯地に到着。着いたら着いたで、台湾四人組に捕ま……もとい、飲みに付き合わされた。
翌朝、改めてフランス組のみなさんと自己紹介を交わす。みなさん本当に流暢な日本語で変な訛りもない。マンモスさんは挨拶した時以外は一言も喋らないけど……。
ニッキーさんは大きなサバイバルナイフ。ローラさんは大ハンマー!? トニーさんはカイトシールドとブロードソード。エレーヌさんはサーベル。マンモスさんはククリ刀二本だ。グルカナイフとも言うな。それにしてもマンモスさん似合いすぎ……。
自衛隊組は今回は紗耶香さんと藤林一等特曹だけ。俺の付き添い兼護衛なんだそうだ。
前回同様、やり方を見せて武器を奪う。その後、やらせてみる。やはり四苦八苦。だけど、フランス組はアメリカ組と違って二日目にいろいろと工夫を凝らしてきた。
アメリカ組は頑なに個人でやることに拘っていたけど、フランス組は数人での協力プレイで挑戦している。
武器を落とさせる役、武器を拾うまでけん制する役、武器を拾って攻撃する役などに分かれている。それでも質のいい武器が出ないので悩んでいる。
やっていればいつか気づくと思うが、一言アドバイス。武器を拾った者が与えたダメージで質が変わることと、何度も攻撃するより一撃で終わらせるほうがいいと教える。
この中ではやはり体が大きく、ククリ刀を使い慣れているマンモスさんが一日の長があるようだ。
俺が帰る時間ぎりぎりまで粘り、やっと工業刀クラスの武器が出せるようになった。みんな満足してくれて嬉しい。じゃないと、俺帰れない……。
帰りはやはり紗耶香さんの車で帰る。もちろん運転手。
「だから、ペーパードライバーなんですって!」
「大丈夫。ちゃんと保険には入っているわ」
「にゃ~」
そういう問題ではないと思うが……。
週の半ば大学から帰ろうと校門に向かうと、見知った四人組がうちの大学の生徒に囲まれて、キャーキャー言われている姿がある。
違う道から帰ろうか……。
「にゃ~」
「どうかしたの?」
沙羅も帰りの時間のようだ。よく見れば人ごみの後ろに沙羅を迎えに来た車がある。
「いや、どうしようかと……」
「アキ!」
あぁ、見つかってしまった……。
「知り合い?」
「飲み仲間兼義兄弟?」
そう、彼らに気に入られて、いつの間にか酔っぱらっていた間に義兄弟になっていた。もちろん、年齢的に一番下の義弟となる。
「哥哥」
「おっ、ちゃんと覚えているじゃないか」
哥哥とは兄さんという意味だ。ジミーたちに頭をわしゃわしゃされる。俺には兄弟がいないのでちょっと嬉しい。
ジンチェンは日本でも俳優として活躍しているので、俺たちを女性陣が取り囲んでいる。誰よ、あいつなどと飛び交っているので、妬みを買う前に場所を移したい。
「場所を変えたいんだけどいいかな?」
「車で来てるから構わないぞ」
運転はジンチェンのようだ。沙羅のお迎えの車に付いて来てとお願いして場所を変える。
沙羅の行きつけの喫茶店に来た。とても落ち着いた感じのいいお店だ。オーナーさんは女性で蝶ネクタイのスーツ姿にジレが良く似合っている。
飲みものを注文して落ち着くと、
「そちらの女性を紹介してくれないのか?」
とジミーに言われたので、
「パートナーだよ」
「パ、パートナー!?」
なぜそこで沙羅が驚く?
「沙羅は天水沙三等特尉の妹さんだよ」
「姉がお世話になっていましゅ……す」
噛んだな。
「あの怖い自衛隊さんの妹!?」
「「「似てねぇ!」」」
いやいや、似てるでしょう。紗耶香さんはちょっとキツメだけど。
「それで、ここまで来た理由は?」
「
「「「おう」」」
「本音は?」
「「「「旨いものが食いたい!」」」」
四人ともハモったな。理由はいたって簡単。せっかく日本に来たのに、自衛隊の食堂だけで飯を食いたくない! だそうだ。
ジンチェンことジンは日本のハーフだし、日本で仕事してるんだからそういうお店を知っているんじゃないの?
「そっちの仕事で来ているんじゃないから、マスコミにはバレたくない」
なら、変装くらいしてこいよ! うちの大学でバレバレだったじゃないか!
「女に会いに行くならまだしも、
さいですか。
じゃあ、どこかに食べに行きますか。
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