54.人工ダンジョン
周りは太陽が見えないのに景色は夕焼け空。不思議な光景だ。時間も夕方五時を過ぎている。持って来ていた魂石の一つが満タンになっている。
俺、頑張った……。
その日の夜は爆睡だった。
翌日も早朝に叩き起こされ、昨日と同じ特訓メニューを繰り返す。終了の合図が出るまでに二度レベルアップをし、宵月 攻撃力アップを覚えた。興亜一心刀も一本手に入ったのはラッキーだった。
俺と花音さんは今日までで奉仕活動は終わり。残りの
あと、何気に小太郎がいたおかげで、みんな癒されたと言っていた。夜は酒を飲むかテレビを見るくらいしかできないから、小太郎は格好の遊び相手兼癒しだったのだろう。
そんな俺たちが
刀の買取額が下がるそうだ、大量生産で作られるこちらの世界の刀より性能が劣るので需要がない。最初は研究調査用に買取額が高かったが、もう必要ないとのこと。(ToT)
手に入れた工業刀と興亜一心刀は、今のところ売る気はない。
代わりに柳葉刀と直剣を少し高く買い取ってくれるらしい。日本ではほとんど使われない柳葉刀と直剣だが台湾、中国ではメジャーな武器なので、向こうで売れるそうだ。
そういえば華流ドラマに出てくる山賊は、必ずといっていいほど柳葉刀を持っている。反対に英雄や道士は直剣を持っていたな。
こん棒は奪う価値なし。槍は元々買取額が低かったのでわざわざ奪うことはしないことにする。柳葉刀と直剣は買取用として集め、刀は俺の練習用にすることになるな。
満タンになった濃い紫色になった魂石の買取もしてもらった。十万円になるそうだ。凄い……・
次の土曜日、沙羅は家族と葉山の別荘に行くそうなのでお休み。俺にとっての別荘は月読様の所かな。
一人、ゲートをくぐる。まずは人工ダンジョンにリヤカーを隠してから、狩りに出かけるとしよう。
入口近くに作った鉱石の置いてある保管部屋で、リヤカーに鉱石を積んでから置いておく。外に出ようとすると、
「にゃ~」
小太郎が人工ダンジョンの下のほうに、何かの気配を感じるそうだ。
歩いていると向こうから、餓鬼と邪鬼が歩いてくる。まじで住みついたのだろうか? はにわくんと倒すと
DCで価値ありと出たので鑑定すると、
仙人草 煎じて飲むと怪我が治る(微)
間違いない、ドロップアイテムだ。小太郎はまだ奥に
おかしい。今歩いている通路に見覚えがない。小太郎が掘ったのは、もっと単純な通路だ。そして、気づく明かりがなくても明るいことに気づく。前はリヤカーに付いていたライトを照らして作業していたのに、今は普通に明るい。大宮駐屯地の地下もこんな感じだったような?
迷わないように手帳にマッピングしながら進む。やはり、かなり拡がっている。
そして、前にはなかった更に地下に進む道を見つけた。興味はあるが今日はこれ以上進むのはやめておこう。
人工ダンジョンを出るまでに五回
やはり、この人工ダンジョンは本物のダンジョンになったようだ。ダンジョンを探すつもりがダンジョンを造ってしまった……。
どうする? 報告するか? 面倒ごとに巻き込まれるだけだな。黙っていよう。沙羅には教えてあげよう。パートナーだからな。
ドロップした仙人草は鉱石の置いてある保管部屋に置いて行く。間違っても見せられない。
翌日の日曜日は武器集めと宵月の検証。
宵月を使うと体感比で五割増しくらいだろうか。効果時間は三分と短いが、これはすごい。
はにわくんに使ってみると、はにわくんがブンブン丸にクラスチェンジした。三分後に元に戻ると、再度宵月をかけろとすごい威圧で催促される。
はにわくんに宵月が使えたのだから、使っている刀にも使えるのでは?
使えた。斬れ味が格段によくなった。自分と刀に宵月を使うと、餓鬼と邪鬼、天邪鬼なら全て会心の一撃。意識して出すことができないでいる会心の一撃が、なにも意識しなくても出る。この感覚を覚えるにはいい訓練になるかも。
月曜の大学で、昼食時に沙羅に人工ダンジョンのことを聞かせる。
「コタちゃんはダンジョンまで造れるんだぁ」
「にゃ~」
小太郎を抱き上げ、ナデナデ、チュッチュッしている。いや、確かに小太郎が穴を掘ったのだけれど、造ったっていうのは言い過ぎでは? 小太郎もなぜドヤ顔をしている! 実は意図して作ったのか!?
「ダンジョン……もちろん、探検だぁ!」
「にゃ~」
ですよねー。沙羅ならそう言うと思ったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます